俳優・映画人コラム

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2022年06月30日

<やんごとなき一族>土屋太鳳が魅せる、誰もがハッとする透明感

<やんごとなき一族>土屋太鳳が魅せる、誰もがハッとする透明感


(C)2018映画「累」製作委員会 (C)松浦だるま/講談社

最終回を目前にして、怒涛の急展開に驚きを隠せない「やんごとなき一族」
主演を務めるのは、お芝居の絶大なる安定感に心奪われる土屋太鳳

彼女のあらゆる作品を享受する中で感じ取ることができる、どこまでもひたむきなまっすぐさ。

意志の強い視線、透き通った声が強烈な存在感を放ち、観る人すべてを魅了する。


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「やんごとなき一族」に囲われる”最もやんごとない”佐都


(C)Fuji Television Network, Inc.

大好きな彼からのプロポーズ、断るはずもなく受け入れる。
そう、彼が”やんごとなき一族”の一員ということなんて知らずにーー

400年以上続く由緒正しき名家である深山家の次男・健太(松下洸平)と結ばれた、大衆食堂・まんぷく屋を営む下町育ちの佐都(土屋太鳳)。

残酷過ぎるしがらみが多数立ちはだかる中で唯一、”さとけんた”なシーンにはほっこりさせられる。

実在していたら「うわ、とんでもないバカップル……」と感じてしまいそうなのに、さとけんたのイチャつきはまったくもって嫌味な感じがしない。ただただうらやましい。え、なにこの感情。

「はばかりながら申し上げます」

佐都のこの言葉に、何度救われたことか。

しかし、いくら気が強いとはいえ、由緒正しき一族に喧嘩腰で挑むだなんて、そう簡単にできることではない。
なんたって、自身が追放されてしまう可能性もあるのだから。
それでも、そのリスクをも乗り越えて、佐都と健太は、二人の愛を突き詰め、証明する。

だからこそ、最終回を目前にしたあの土壇場劇に驚愕せざるを得ない。

健太、まさかの記憶喪失。
愛する佐都のことさえ忘れてしまっているという、やるせないほどに苦しい事実。

衝撃の展開に、土屋太鳳の過去作『8年越しの花嫁 奇跡の実話』を思い出した人も多いはず。
記憶障害に陥るヒロイン・麻衣を演じていた土屋太鳳が、ここにきて逆の立場に立たされるなんて。なんとも複雑な感情、悪夢再び。

瞬く間に記憶が蘇るのなら、またすぐに楽しい日々を送れるのなら。
そんな期待も虚しく、佐都のことも、娘の凛のことも思い出す気配はない。

そんな健太に、佐都はこう言い放った。

「はばかりながら申し上げます」
「私はあなたの妻じゃありません。今のあなたは私の知っている健太じゃないですから」

……つらすぎる決断。
でも、佐都のためにも、凛のためにも、そして健太のためにも、最善の答えといえる。

とはいえ、そうわかっていても、普通であればこの決断を下すことはなかなかできない。
佐都だからこそできた、渾身の覚悟なのである。

最もやんごとないのは、深山家ではなく、佐都なのかもしれない。

そしてこれは、芯が強く、気丈なイメージの強い土屋太鳳だからこそ、やんごとなき世界に紛れ込む沙都を全うできているのである。


土屋太鳳の繊細かつ大胆な表現力に目を瞠る『累-かさね-』


(C)2018映画「累」製作委員会 (C)松浦だるま/講談社

2018年7月11日に公開された映画『累-かさね-』

塗った状態でキスをすると、相手の顔を奪い取ることができるという不思議な口紅。
天才的な演技力を持ちながら、容姿や顔の大きな傷にコンプレックスを抱える累(芳根京子)と、美貌を持ちながらも他人には言えない理由により花開かずにいる舞台女優・丹沢ニナ(土屋太鳳)は、一本の口紅を通してお互いの欲求を満たしていく。
が、そんな毎日も束の間、二人がともに恋に落ちた演出家・烏合(横山裕)をめぐってとてつもない亀裂が生まれていきーー

土屋太鳳の演技力が軍を抜いていることは、Netflixオリジナルドラマ「今際の国のアリス」や、映画『哀愁しんでれら』、坂元裕二 朗読劇2021「忘れえぬ 忘れえぬ」や「初恋」と「不倫」などで充分に理解しているつもりだった。

しかし、『累-かさね-』での彼女の繊細かつ大胆な表現力には、思わず唖然としてしまった。

累とニナ、対照的な二人を見事演じ分け、これまで比較的明朗快活な役柄を演じることが多かった土屋太鳳のイメージは一変。

とくに、劇中劇「サロメ」でのダンスシーンには痺れさせられた。

学生時代に創作ダンス部で全国大会にも出場したほどのスキルを持つ彼女のダンスパフォーマンスはもちろんのこと、妖艶な視線と眼力、全身から溢れ出るエネルギーに、観ている誰もが土屋太鳳の虜になったことに違いない。

「やんごとなき一族」の佐都とはまた違った魅力を放つ『累-かさね-』の累/ニナを、「やんごとなき一族」の余韻が残るうちにぜひ体感してほしい。


女優として邁進するに相応しい覚悟と運命


(C)2021「哀愁しんでれら」製作委員会

滑舌をよくするために舌の一部の除去手術をしたり、役作りのためにトレードマークだったロングヘアを40cm切るなど、土屋太鳳のストイックさは俳優界でも有名だそう。

また、彼女の姉弟も芸の才能にあふれており、姉の炎伽(ほのか)は2019年ミス・ジャパン東京大会グランプリ、弟の神葉(しんば)も声優として、華々しい活躍を魅せている。

太鳳、炎伽、神葉……あまりにも神々しい名前、全員本名だというのだから驚く。

これはもう、女優として邁進するに相応しい覚悟と運命を持って生まれてきたと言っても過言ではない。

今後も、感銘を受けるに値する素晴らしい表現を披露してくれることだろう。
そんな彼女のさらなる飛躍に期待しつつ、まずは「やんごとなき一族」が無事に終結することを祈るばかりだ。

(文:桐本 絵梨花)


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