「ちむどんどん」第83回:「うちは絶対諦めない」とお弁当を重子に作り続ける暢子をなぜか応援できない
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2022年4月11日より放映スタートしたNHK朝ドラ「ちむどんどん」。
沖縄の本土復帰50年に合わせて放映される本作は、復帰前の沖縄を舞台に、沖縄料理に夢をかける主人公と支え合う兄妹たちの絆を描くストーリー。「やんばる地域」で生まれ育ち、ふるさとの「食」に自分らしい生き方を見出していくヒロイン・比嘉暢子を黒島結菜が演じる。
本記事では、その第83回をライター・木俣冬が紐解いていく。
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店への嫌がらせ、重子への嫌がらせ弁当
昨日、あんなこと(柄の悪い人の来店)があったからお母さんを刺激しないほうがいいと和彦(宮沢氷魚)に止められても、お弁当を重子(鈴木保奈美)に作ることをやめない暢子(黒島結菜)。今日はエビチリに青菜? 中華弁当?おいしいものを食べれば気持ちが変わると信じて疑わないようです。和彦はやや重子の気持ちに寄り添おうという気になってきたようですが、暢子は重子の気持ちに立たず、自分の好意を信じて邁進します。
「うちは絶対あきらめない」
本来、主人公が立ちはだかる障害に向かって頑張るとき、健気に感じて、応援したくなるものですが、どうしてだか、応援する気になれない視聴者も少なくないのではないでしょうか。
「うちは絶対諦めない」が響いてこない理由を考えてみます。
その1:あえて主人公を未熟に描いている。現時点での「うちは絶対諦めない」というセリフには中身はないと考えている。
その2:主人公の生真面目さ、純粋さの積み重ねがない。そのため「うちは絶対諦めない」というセリフが響かない。
その3:とりあえず「今日も嫌がらせ弁当」のガワだけ取り入れてみちゃった感じにわじわじする。
和彦は暢子のことを心配して朝、重子のいる喫茶店に立ち寄ります。
「暢子は今朝も弁当を作ってた」宮沢さんの「暢子」という響きには特別なあたたかみがこもります。
「今日も弁当を作ってた」という素朴な言葉が切なさを募らせます。
和彦は、未熟なところは多々ありますが、幼い頃からの暢子への思慕は変わらず表現しているので、セリフが染みてくるのです。単にたどたどしいだけかもしれませんが。
重子はいやでしょう、自分より暢子が大事だと感じるから。
重子は、暢子の親戚・房子の闇市生活、県人会脱退などから垣間見えるものに自分とは違う世界を感じて、とにかく暢子の家関係と距離をとりたいと思っています。
諦めないのは、暢子だけではありません。権田のフォンターナに対する嫌がらせが毎日のように続きます。
高級レストランに柄の悪い人が次々訪れ、営業妨害しはじめます。可笑しかったのが、“まずい料理の店につれてこられて怒り出すコント”みたいな小芝居を行うふたり組です。かなり芝居がかっていました。
二ツ橋(高嶋政伸 たかははしごだか)が先に手を出し、逆に訴えられそうになります。
どうにもならず、しばらくお休みすることを決める房子。いろんなトラブルがあっても絶対休まなかった房子がついに休んでしまうのです。房子はついに諦めてしまうのか……。
老舗の高級レストランなのに、顧問弁護士も頼れないようで。イタリアの料理人やら沖縄の人にはあれほど魔法のようなコネがあったのに。「月島のスッポン」と呼ばれる権田に目をつけられてしまった運の悪さということでしょうか。
そもそも、矢作(井之脇海)の問題のとばっちりですよね。
警察には権利書盗まれたことから調べてもらえばいいのでは……と思いますが、矢作をかばっていることに意味があるのかなと思います。
一本筋の通った房子。相当参ってそうですが、性格上、困った顔を見せません。その意地っ張りの彼女の気持ちを暢子は慮って「今夜は飲みましょう」と誘います。重子への押し付け弁当は歓迎されませんが、飲みましょうは房子を喜ばせます。
この違いはなんでしょうか。
その1:房子には愛情があるから。
その2:そういう流れにしないと物語が進まないから。
(文:木俣冬)
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