映画コラム

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2022年11月22日

『すずめの戸締まり』新海誠が国民的作家であることを高らかに宣言した、記念碑的作品

『すずめの戸締まり』新海誠が国民的作家であることを高らかに宣言した、記念碑的作品


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新海誠監督の最新作『すずめの戸締まり』は、公開2週で興行収入41億円を突破するなど、盛り上がりを見せていた。

本記事では新海誠監督について、その作家性を振り返ってみたい。

※本記事では『すずめの戸締まり』および『天気の子』のネタバレを含みます。未鑑賞の方はご注意ください。

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“新海誠”という人間



新海誠は孤高のアニメーション作家である。

長野県南佐久郡小海町で生まれた彼は、いつも空を見上げているような、夢見がちな少年だったという。さして勉強ができる訳でもなく、絵が上手な訳でもなく、スポーツが得意な訳でもない。

しかも1973年生まれの新海監督は、ベビーブーマーの団塊ジュニア世代で、子供の頃から過酷な競争に晒されてきた。そんな自分が故郷から抜け出して、社会に適応できるのだろうか?そんな漠然とした不安を抱えながら、彼は学生時代を過ごしてきた。

大学を卒業後はゲーム会社に就職し、オープニング・ムービーの制作に励む。「毎朝満員電車に乗って、毎日終電で帰ってくる」という単調な日々。仕事に充実感は感じていたものの、「自分の作品を作りたい」という想いがムクムクと湧き上がってきた。

(C)Makoto Shinkai/CWF・彼女と彼女の猫EF 製作委員会

彼は一念発起し、半年をかけて『彼女と彼女の猫』という5分間の短編を制作。1枚1枚コツコツとPhotoshopで絵を描き、After Effectsで合成し、エフェクトを入れて、作品を仕上げていった。誰にも邪魔されることもなく、たった一人で自分だけの世界を創造したのである。

(C)Makoto Shinkai/CMMMY

本作は、第12回CGアニメコンテストでグランプリを受賞。自信をつけた彼は、25分の中編アニメ『ほしのこえ』(2002年)の着手を決意。制作に専念するため、このタイミングでゲーム会社も退職する。

ざっくり言うと、あらすじはこんな感じ。中学3年生の長峰ミカコと寺尾ノボルは、お互いのことを想い合っている仲。しかし、国連宇宙軍のメンバーに選出されたミカコは遥か宇宙の彼方に旅立ち、地球外知的生命体と対峙することになる。



2人の距離が遠ざかるほど、メールの着信にも時間を要するようになり、ミツコが8光年彼方の惑星にたどり着いた時には、ノボルにメールが届くには8年の時間を必要としていた。やがてノボルは彼女の帰りを待つことを諦めることを決意する……。

地球規模のクライシスの物語にもかかわらず、本作にはミカコとノボル以外の人物はほぼ登場しない。そして、離れ離れとなった二人の会話は、心の声=モノローグとして綴られる。高橋しんの漫画『最終兵器彼女』(1999年〜2001年)にも近接した、典型的なセカイ系の外殻を纏っているのである。

『ほしのこえ』(C)Makoto Shinkai/CMMMY

印象的なのは、ラスト近くでノボルが呟くこんなセリフだ。
「もっともっと、心を硬く冷たく強くすること。絶対に開かないと分かっている扉を、いつまでも叩いたりしないこと。俺は、一人でも大人になること」(『ほしのこえ』より抜粋)
大人になることとは、孤独と向き合い、孤独を受け入れ、孤独を愛すること。そして、大切な何かを諦めること。孤高のアニメーション作家・新海誠は、孤高の姿勢で物語を創造し、キャラクターたちにも孤高を求めたのである。

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©2022「すずめの戸締まり」製作委員会

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