「ヒロステ」4作目が開幕!喪失・成長・希望——集大成を感じさせるステージに
「週刊少年ジャンプ」に連載中の同名漫画が原作の本作。人口の8割が“個性”と呼ばれる能力をもっている世界を舞台に、田村心演じる無個性の主人公・緑谷出久(みどりや・いずく)が苦難や葛藤を乗り越えながら最高のヒーローを目指していく物語だ。
4作目となる今作は、デクこと緑谷出久や幼馴染でライバルの爆豪勝己(ばくごう・かつき)が所属する雄英高校1年A組の生徒たちを中心に、プロヒーローになるための一歩として仮免試験に挑む姿が描かれる。
「帰ってきたぜ、ヒーロー!」という言葉の偉大なパワー
オールマイトのヒーローとしての最期を描いた前作のラストから続くシーンに、まるでレクイエムのような荘厳な楽曲が重なり、幕が開く。家庭訪問など大事なエピソードを交えて、平和の象徴を失った悲しみや失意からヒーローの卵たちが立ち上がっていく姿を凝縮して描いた冒頭に、一気に作品の世界へ引き込まれる。▶︎本記事の画像を全て見る
シリーズで初めて1年A組のキャラクターが全員出演するということにも期待が高まっていた本作。
舞台に(キャストのいるキャラクターとしては)初登場となるクラスメイトたちも、これまでの物語の中にいて多くの危機に直面し、苦境を乗り越えてきたという背景を背負っている。新キャラクターという扱いではなく、A組揃ってのダンスシーンなどに初演から一緒にいた仲間であるような一体感があることにまず感動し、キャスト同士がいい関係を築いていることまで想像させられて、尊いとはこのことか…と天を仰ぐしかない気持ちになった。
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生徒たちが揃ったステージは力強いロックナンバーに切り替わり、狂言回しの役目も担うプレゼント・マイク(岡本悠紀)の「帰ってきたぜ、ヒーロー!」という言葉が響いて、体温が上がる。
公演の中止を余儀なくされたコロナ禍を経て、彼らが“帰ってくる”ことが当たり前ではないと痛感しているだけに、その言葉のパワーは偉大だ。その一声がステージと客席の境界線を破り、彼らの活躍を心から期待している観客たちを、物語を俯瞰する存在ではなくヒロステの世界の“市民”にしてくれる。こちらとしてはもう、「帰ってきてくれてありがとう!」の気持ちしかない。
実際、ヒロステは本編から離れた幕間で客席とのコミュニケーションがあったり、楽曲によっては手拍子を求められたり、ステージと客席の一体感が強いことも魅力のひとつだといえる。
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そして、原作ファンも期待していたであろうお部屋訪問の流れでは、本作で欠かせない生徒たちの“個性”の紹介を交えており「その手があった!」と舌を巻く。とにかく無駄がなく密度の濃い作品であることを再認識させられた。
また、キャラクターにあったバラエティ豊かなメロディに原作のセリフをのせた進行は、漫画のシーンをひとつひとつ思い出して楽しい気持ちにさせてくれる。ショックな出来事から立ち直ろうと奮闘する彼らの努力に、前作まで岩永洋昭が演じていた力強く、ユーモアあふれるオールマイト(マッスルフォーム)の不在に寂しさを感じていたこちら側まで元気になる。気づけば、すっかり感情移入しているのだ。
お部屋訪問では、サプライズと言っても過言ではない演出もあり(フォトギャラリーにネタバレあり)、会場を沸かせていた。
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