「あなたがしてくれなくても」第9話:自分本位に生きられない人たちの不倫物語の末路
ハルノ晴による同名コミック(双葉社刊)を原作とする本作は、セックスレスをテーマにした大人の恋愛ドラマ。奈緒と永山瑛太、岩田剛典と田中みな実が演じる2組の夫婦の関係が複雑にもつれていく様を描く。
本記事では、第9話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。
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「あなたがしてくれなくても」第9話レビュー
パートナーの身体を受け入れることができなかったみち(奈緒)と誠(岩田剛典)。陽一(永山瑛太)と楓(田中みな実)もさぞショックを受けただろうが、みちと誠もショックだっただろう。
“拒否されていた側”のセックスレスで悩んでいた当事者が、いつの間にか”拒否する側”に回ってしまっていたのだから。
この仕打ちに対する反撃方法に、人となりが濃くにじみ出る。
まずは、陽一。
オーナーの高坂(宇野祥平)、2度目の浮気がバレた模様。前回は家を買うことで償ったらしい。
…いやいや、浮気の代償が家って、えぐいな。
高坂曰く、それは「高いラブレター」とのこと。なるほど。浮気された側に許す気があるのであれば、もしくは許さざるを得ないのであれば、されたこと以上の付加価値はあるのかもしれない。
この話を聞いた陽一は、マンションの更新をするタイミングということに乗っかって「家を買わないか」と提案する。
…いやいや、どう考えても安直すぎる。物を盾にして外堀から埋めて一体どうする?そんなことをしたって、夫婦関係はきっと変わらない。
三島(さとうほなみ)と寝た後もそうだったが、陽一の単細胞的思考にはただただ呆れる。
そして、楓。
セックスを拒否された翌日から、ホテルに泊まることを決意。
「しばらくホテルに泊まります。」と送ったLINEは既読がついたまま、誠からの返信はない。
構ってほしいとき、人は思っていることと逆の行動をとる。
だがしかし、相手の気持ちがこちら側に向いていない時にそのようなことをしても逆効果なだけだ。相手はほっとして、自身はまた傷つく。
さらには、探偵を雇い陽一の職場までも突き止める。怖い。怖いよ楓。
高坂からの絡みも華麗にスルーし、核心には触れずにじわじわと距離を詰め寄る楓。
だが、陽一のみちへの思いにただただ打ちひしがれるだけであった。
…余談だが、宇野祥平がリリー・フランキー的な立ち位置にいることが違和感なく、絶妙にハマり役である。
「物にも人にも思い出を添付しちゃ駄目ですよ。捨てづらくなるだけ。それ、愛着じゃなくて執着ですからね〜」
「自分の心を壊してまで一緒にいることに、何の意味があるのかな」
「ほどけそうになった紐は、ちゃんと結び直すの」
第三者視点の言葉が傷口に染み入る。
そう、「あなたがしてくれなくても」の登場人物は、みんな真面目すぎる。強いて言うならわがままなのは陽一くらいか。もっと自分本位に生きてもいいのに、全員。
「楓とセックスできなかったのは、男としての愛情が戻らなかったからなんだ」
「(子供は欲しくないって)言ったら俺から離れていくだろ。俺はみちと一緒にいたくて結婚したんだよ」
飛び出る、心が死ぬ言葉たち。
誠はまだしも、陽一は確信犯である。
最悪のタイミングで、ついに誠が退職。
心の拠り所がなくなりつつある今、”職場が同じ”という絶好のシチュエーションまでもが終焉を迎えてしまう。
そんな中、華(武田玲奈)の粋な計らいで、ラーメン屋で居合わせるみちと誠。
もう、どう見ても未練タラタラなんですよね、お互いに。
感情を押し殺して会話するも、ただただ苦しそうなだけ。
それでも、最後の最後に溢れ出してしまうのが性。
みちの手を取り、走り出す誠。
どこに向かって走っているのかは、本人たちもきっとわからない。
やっぱり真面目な二人は、駆け落ち行きのバスには乗車せずに事を終えた。
道理には反しなかったものの、ようやく自身の気持ちに整理がついたみちと誠は、"離婚"というキーワードを口に出す。
…もうこれは、単なる不倫物語じゃない。純粋な恋愛物語なのである。
(文:桐本 絵梨花)
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