「らんまん」タキ(松坂慶子)の命は桜と共に散りゆくのか<第61回>
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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。
「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。
ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第61回を紐解いていく。
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「わしのマルバ、取られとうなかった」
第13週「ヤマザクラ」(演出:渡邊良雄)「らんまん」の良さは、何が伝えたいか明瞭にわかるところです。第13週は、タキ(松坂慶子)の寿命を病にかかった桜の木と重ね、2つの命について描くであろうことは、おそらく老若男女、学歴問わず、誰が見てもわかるでしょう。
あらかじめ、何が書かれるか、わかっているとストレスがありません。
元気に万太郎(神木隆之介)を迎えたタキだったが、容態が悪くなってまた寝込んでしまいます。きっと無理していたのでしょう。でもまたしゃきっとして、婚礼の着物を呉服屋・仙石屋に依頼します。寝室から客間に向かう時、寿恵子(浜辺美波)がタキを支えます。
浜村義兵衛(三山ひろし)に、仙石屋の桜を見たいと話すと、桜が病気にかかっていて切り倒そうかと思っていると言う。この病気にかかると治しようがなく、ほかの木にも移ってしまうので、切り倒すしかない。高知出身の演歌歌手の三山ひろしが、いい声で語ります。
タキの寿命と桜を重ねているのは明白です。ただ、タキの病は移るものではないですが。それでもタキも桜もどうなるの?と心配になります。
義兵衛の先代がひ孫を抱いてると言って、タキは「ええのう」とほほえみますが、内心、羨ましさもあるでしょう。さりげにこういうセリフを入れているのも隙がありません。
その頃、万太郎は、波多野(前原滉)と藤丸(前原瑞樹)の手紙を読みながら妄想に耽っています。
波多野と藤丸が語りかける場面は、天井の照明はぐらぐら揺れていて、ふたりがぐるぐる回ります。俳優たちがいいと、こういう場面にも生き生きします。
演出の渡邊さんは「まんぷく」のチーフも担当されたベテランの方ですが、こんな遊び心のある演出もされるのですね。脚本もいいし、俳優もいいから、乗っていらっしゃるのかもしれません。
画はいい感じですが、万太郎はマルバマンネングサの命名を外国の学者にとられてしまったのです。自分の名前をつけてもらいはしたけれど……。
藤丸「吸い上げられたって相手神様だし」
万太郎「わしのマルバ、取られとうなかった」
第60回ではあんなに喜んでいたのに、いまや、悔しさが勝っています。
そんな万太郎が、桜の病に植物学者として挑むーー
タキに頼まれた万太郎は、桜に会いに行く。
「草の道を歩かせてもろうだがじゃ 救えんでどうする」と病に挑むお医者様のように闘志を燃やします。
手代役は小野大輔。声優なのでこれまたいい声で、桜について語ります。
桜に託した命に関する大事なセリフを、いい声の人たちが情感をこめて伝えてくれます。こういうのもすごく大事なことです。
万太郎は桜を治すことができるのか、そして、タキの病はどうなるのか。
気になる週のはじまりです。
さらに気になるのは、綾(佐久間由衣)と竹雄(志尊淳)の仲。綾があでやかな着物を着て、竹雄を伴ってでかけていくところを目撃した市蔵(小松利昌)は、「ないない」と言いつつ、息子が身分違いの恋をしているかもしれないことに動揺しています。
綾が、ただの華やかなおしゃれ着ではなく、礼を尽くし、誠意と真心を伝え、信頼してもらえそうな色柄の着物を選び、同業者に組合を作ろうと話に行くのです。洒落た洋装の竹雄と、きりっとした着物の綾。ふたりの会話には甘さはなく、これからの酒蔵をどうするべきかということについて知性的な会話を交わします。竹雄が東京から持ち帰った考え方や身なりが、綾にいい影響を与えたようです。
新しい世代の経営者として、ふたりが活躍しそうな予感。
(文:木俣冬)
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