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Netflixで観られる雨をポジティブに感じられる映画5選
Netflixで観られる雨をポジティブに感じられる映画5選
1:『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』(2014)
「女の子と仲良くなりたい」や「親しい人を幸せにしたい」など、身近な目的のためにタイムトラベル能力を使う青年を追ったファンタジードラマだ。ごく限られた範囲でのタイムトラベルを描いているという点で、アニメ映画版『時をかける少女』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が好きな人にもおすすめできる。
雨が印象的なのは、結婚式のシーン。主人公は同僚が「離婚の事例」というダメなスピーチをした時には時間を巻き戻すものの、その後の雨が降りしきり、テントが破けて飛んでいくような大変な事態になっても、その「大切な時間」は巻き戻したりはしない。だからこその、こんなにも多幸感に溢れた画を作れたことに、感服せざるを得なかった。
明確な悪意を持つ者がほぼ登場しない優しさに満ちた作品であるが、同時に辛辣さも忘れてはいない。現実にはありえないタイムトラベルを描きながらも、同じ日々の繰り返しだと思い込んでいる、現実の人々にエールを送るメッセージも誠実だった。なお、G(全年齢)指定で許される程度の、軽めの性的なシーンがあるのでご注意を。
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2:『ショーシャンクの空に』(1994)
映画史に残る大傑作と評される有名作だが、意外に観たことがない方もいるだろう。主人公が刑務所に来るその日からの絶望的な空気、その中でも希望を見失わない気高さ、囚人たちとのバラエティ豊かなドラマ、ティム・ロビンスとモーガン・フリーマンの名演など、その魅力は枚挙にいとまがない。
雨が印象的なのは、ポスタービジュアルにもなっている「土砂降りの雨」のシーン。基本的に映画における雨は登場人物の涙、つまりは悲しい展開を指すことが多いにも関わらず、ここまでの激しい雨をポジティブに捉える様はとても珍しい。その直前に「想像したくないほどの辛い道」を進んでいたこその開放感も備わっているし、その土砂降りをも文字通りにポジティブに受け止める主人公の精神の気高さを讃えた名場面となっていた。
なお、フランク・ダラボン監督は後の2007年にホラー映画『ミスト』を手がけ、原作小説から変えたラストシーンが激しい賛否両論を呼んでいた。その登場人物をとことん追い込む、ドSな作家性が実は『ショーシャンクの空に』と一致していると思うので、合わせてご覧いただきたいところだ。
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3:『恋は雨上がりのように』(2018)
女子高生が中年男性に恋をする青春恋愛ドラマ。それだけを取り上げると男性にとって都合の良い内容に思われるかもしれないが、実際の本編ではしっかり“大人”として返事をする様が、コミカルなギャグを交えながらも誠実に描かれている。
雨が印象的なのは、ヒロインが中年男性であるファミレス店長へ、ついに思いを伝えるシーン。雨に濡れたままでも、どうしても伝えたかったという切実さと、その彼女に傘を刺してあげる店長の優しさが伝わる。それはとても苦しくつらい時間ではあったからこそ、その後の劇中の天気の移り変わりと共に、2人の心情もまた変化していくことも見所になっていた。
物語は恋愛に限っていない、「不器用な人」「無為な時間を過ごしてしまったと思い込んでいる人」に向けた優しいメッセージを備えている。原作マンガからの再構成が上手く、特に「映画館デート」のギャグには大笑いできたし、「焦げたサンドイッチ」の使い方も秀逸。原作はもちろんアニメ版とも異なる、タイトルさながら雨上がりのように爽やかなラストが待ち受けていた。青春を通った大人はもちろん、若い人にもぜひ観ていただきたいと願う。
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4:『映画大好きポンポさん』(2021)
製作アシスタントで映画ファンの青年が、伝説の俳優の復帰作の監督にいきなり指名される。合わせて、新人女優を起用しての撮影のドラマも描かれるアニメ映画だ。映画作りのためのノウハウや過程そのものが面白く、キャラクターそれぞれが生き生きとしていて可愛らしい。
雨が印象的なのは、キャラクターの「出会い」もしくは「始まり」のシーンにまさに雨が降っていること。ヒロインは雨の中で工事現場の仕事をしつつ夢を追い続けていた。監督となった青年と物語後半のキーパーソンが運命的なやり取りをした時も雨が降っていた。それらのシーンがフックとなり、撮影現場で雨が降ってしまった時のトラブル、その後の雨上がりの爽やかさもドラマに大きく寄与していたのだ。尋常ではない描き込みがされた、美しい背景の魅力もとても大きい。
映画ファンに向けた映画でありながらも、人の「縁」や普遍的な仕事にまつわる寓話としても読み取れるだろう。原作マンガを読み返してみると、「原作を尊重しながらも」「新たな作品の魅力を取り入れて」「見事に相乗効果の感動を打ち出した」作品であることにも感服させられた。
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5:『アイの歌声を聴かせて』(2021)
こちらはNetflixで2023年6月29日より配信開始になった。劇中の物語がまさに6月から7月にかけて展開しているので、梅雨の時期に観てこそのシンクロ具合も楽しめるだろう。その始まりは、転校生としてやってきた女子高生AIが、ひとりぼっちの女の子に「今、幸せ?」といきなり聞いてくる、すっとんきょうとも言えるもの。だが、それも含めて極めて計算されつくした作劇がされていることも、振り返ればわかるはずだ。
雨が印象的なのは、小雨が降る最中の、学校の屋上でのミュージカルシーン。ギクシャクしてしまった高校生カップルの気持ちを、その楽曲「Umbrella」の歌詞が(実際には傘をささないにも関わらず)表現してくれていた。
ここはディズニーアニメ映画『ノートルダムの鐘』の聖堂でヒロインが歌うシーンを参考に作られているので、見比べてみても面白いだろう。その後にも「ディズニーへのラブレター」と言える、そのオマージュに溢れた感涙のシーンも待ち受けている。
また、2023年7月2日に最終回の放送が迫るテレビアニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』でメインの脚本およびシリーズ構成を手がけた大河内一楼が共同脚本を手がけており、大人と子どもの対立や、キャラクターそれぞれの尊い関係性など、共通する魅力が多くある。そして『イヴの時間』などで人間とAI、はたまた『サカサマのパテマ』などで別世界の者同士がコミュニケーションをしていく様を描いてきた、吉浦康裕監督の作家性も最大限に発揮されたからこそ、奇跡のようなアニメ映画になったのだろう。
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(C)吉浦康裕・BNArts/アイ歌製作委員会