「らんまん」根津から渋谷は徒歩でどれくらい?<第124回>


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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。

「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。

ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第124回を紐解いていく。

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花はまた咲く

「この先の世に 残すもんじゃ!」
(万太郎)

関東大震災が起きて、長屋が崩壊、ありったけの標本を背負子で運び出し、避難する槙野家。寿恵子(浜辺美波)の提案で、渋谷に向かいます。

途中で警官に背負子を捨てろと言われますが、万太郎(神木隆之介)は手放しません。「この世に残すもんじゃ」と主張します。

根津から渋谷まで歩くと、現在だとグーグルマップで検索すると2時間強です。大正時代だとまだ道路が整備されてないかもしれないですが、歩けない距離ではなさそうです。

渋谷の一帯は被害が少なく、ほっとする万太郎たち。谷底で水の被害がよくあるが地盤は固い。

息子たちも合流します。これはどうやって連絡をとったのでしょうか。息子たちも、渋谷!と思いついたのでしょう。

万太郎は長屋に残した標本が心配で、ひとり、根津に戻ります。

「私もいつじゃち同じ気持ちですから」と「いつじゃち」と高知の言葉を使って想いを伝える寿恵子。

40年暮らした十徳長屋は火災で燃えていました。壊れた石板が悲しい。印刷機も焼け出されていて……。印刷機は鉄だから燃えてはいないんですよね。

虎鉄(濵田龍臣)が戻ってきて、神田は和泉町と佐久間町は住民の力で焼け残ったと報告します。これには実話があることは、123回のレビューでご紹介しました。

「らんまん」関東大震災で神田が焼け残った奇跡の実話があった<第123回>

大畑(奥田瑛二)という架空のキャラクターによって、和泉町と佐久間町の実話が語り継がれました。こういうのが、朝ドラの良いところです。

標本はこの先の世に残すものですが、「らんまん」はこういう実話もこの先の世に残すのです。

関東大震災によって、完全に旧時代の価値観が破壊されます。浅草や本所など下町のほうの江戸時代に発達していたところが破壊され、ど田舎とされていた渋谷は被害が少なかったからこそ、その後、発展していきます。そのなかで、神田の一帯が燃え残った話は印象的です。

江戸時代からずっと焼け残ってきた神田を、江戸時代の火消しの生き残りが中心になって守ったのです。これから、新しい価値観が生まれ、新しい土地が発展していくとはいえ、旧時代の価値がまったくなくなったわけではない。生き残り続けるものもあるのです。

万太郎は長屋の庭に咲いている生命力旺盛のムラサキカタバミに気づきます。
こんなに灰色にけぶった世界で、鮮やかな紫色の花。
一株あれば、すぐに子株を増やせる。復興のシンボルのように思えます。

「生きて根をはっちゅう限り 花はまた咲く」と万太郎。
まったく植物というものは人間の人生をことごとく象徴しています。

たまたまですが、BSプレミアムで再放送中の「あまちゃん」は東日本大震災から1年経過し、まだまだ復興しない地元を主人公たちが建て直していくエピソードでした。「らんまん」も「あまちゃん」も復興。

りん(安藤玉恵)ほか、長屋の住人だった人たちはご無事でしょうか。


(文:木俣冬)

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