<らんまん・関東大震災・練馬編>25週~最終週までの解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第125回のレビュー
関東大震災のあと、がぜん渋谷が活況に。住む場所を失った人たちが渋谷に移って来たのです。
相島(森岡龍)は、早くから渋谷に目をつけていたことを勝ち誇り、
「旧幕時代の江戸を一新し、世界の一等国として生まれかわるんです」と喜びます。
でも、寿恵子(浜辺美波)は一緒に喜ぶ気になれず……。
次男の大喜(木村風太)は震災の混乱のさなか、無政府主義者・大杉栄とパートナーの伊藤野枝と6歳の甥が憲兵隊の甘粕大尉に殺害されるという酷い事件が置きたことを報道しなければ、と息巻きます。
旧幕府の名残はたまたま起きた地震によって刷新された、ここぞとばかり、政府に対抗してくる者を消し去る。この頃、混乱で、異国の人を排除する行動に出たりする者もいました。
立ち止まらず、新しく進化していくことは大事なことですが、古いものや邪魔なものを排除していくことははたしていいことなのか。
そんななか、万太郎(神木隆之介)だけは変わらないと、「明るいほうを向き続けている」万太郎を寿恵子は愛おしく思います。
せっかく準備した植物図鑑のための原稿も、長年、集めた標本も、かなり失ってしまったにもかかわらず、万太郎は、たくましい植物に力をもらってやる気に満ちています。
盲目になっても「南総里見八犬伝」を書き続けた敬愛する滝沢馬琴を特別の才能があるからと思っていた寿恵子ですが、万太郎については「あなたは特別だから書けて当たり前ってそう思いたくないんです」と告げると、万太郎は頭のなかの八犬士の活躍を、誰かに「渡したかっただけ」かもしれないと想像します。彼自身が、植物を見た嬉しさを誰かに伝えたいだけなのだと。
40年かけたものを、これから10年ほどで取り戻そうとへこたれない万太郎。
寿恵子は、まだまだこれから発展する渋谷をポン!と5万円で売り、
さらに東京の内側ーー練馬に広い土地を買うのです。
震災前、大正10年の銀座の一等地(三愛のあたり)は一坪・千円でした(週刊朝日編「値段史年表」より)。50坪だと5万円です。銀座の一等地50坪分と思うとなかなか高価です。もともと120円で416倍ですし。寿恵子、強運の持ち主であります。遡れば、叔母・みえ(宮澤エマ)が目利きだったということですが。そういえば、新橋のみえの店は震災でどうなったのでしょうか気になります。
渋谷という土地の価値を捨て、広くて穏やかでのどかな土地・練馬で、万太郎の植物研究を深める。まさに貨幣価値だとかステイタスというものに左右されない生き方です。
ちょうど、関東大震災から100年経った今、渋谷は再開発され、新たな層が流入し、一時期の渋谷とはまた違う顔になりはじめています。ますます発展する都会もいいけれど、そのステイタスにしがみつかなくても、自分にとって何が大切か、考えてみるのもよさそうです。
「この土地、私が買いました」「あなたとあなたの標本を守るために」
という寿恵子、かっこ良すぎる。そして、その原動力は「愛」なのです。寿恵子と万太郎が寄り添う姿を描くことで、ふたりの愛が道を切り開いていることを強烈に物語ります。
※この記事は「らんまん」の各話を1つにまとめたものです。
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