<らんまん・関東大震災・練馬編>25週~最終週までの解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第127回のレビュー
引き続き、昭和33年、紀子(宮崎あおい:さきはたつさき)と千鶴(松坂慶子)のターン。千鶴の親子丼ーーだしの味は母・寿恵子(浜辺美波)の味。紀子は万太郎(神木隆之介)の標本から、彼の行動を解き明かしていきます。
標本をはさんだ新聞から、採集場所を探り当てる紀子。
「名探偵・明智小五郎ね」と千鶴が感嘆します。
「ひとりの人間の行動を追いかける。それが調査の基本ですから」という紀子。きっと脚本家の長田育恵さんも、そういうふうにして、モデルの牧野富太郎を知って、槙野万太郎を作りあげたのかもしれないとふと思いました。
万太郎の書斎が本がうず高く積まれている真ん中に、標本を描くためでしょうか、ガラスの箱があって、そこに花瓶が置かれている。美術館のようで、とても美しく感じました。
紀子と千鶴の会話劇は、松坂慶子さんがにこにことかわいいリアクションをして、ほっこりします。
万太郎が亡くなって1年、何もできなかった喪失感もあったからこそ、誰かとおしゃべりするーーそれも父親の思い出をーーそれが楽しいことが伝わってきます。
立派なかただったのですね、と紀子は言いますが
「だめなお父ちゃん」「まわりを振り回して」と千鶴。
「お父ちゃんはただ一生涯、植物を愛しただけなの」と。
本来、これがラストシーンなのでしょうけれど、これまでがんばってきた万太郎と寿恵子がいないラストシーンでは締まりません。
そして、ときは遡り、昭和2年ーー。
植物いっぱいの広いお屋敷でのんびり暮らしている万太郎と寿恵子。
近所の子どもたちにも万太郎は有名になっています。
でも、少し、心配ごとが……。
寿恵子の体調が良くないようで、子供たちにお茶を入れようとして急須を
落としてしまいます。
せっかく遊びに来た子供たちが不穏な気分になって……と、ひっそり台所で身内だけが気づく、というのではなく、あえて子供たちの前での寿恵子の失態を描くところがなかなか酷であります。それだけ、寿恵子の異変が大きなことという気がして心穏やかでいられません。
そんなある日、万太郎を訪ねて、帝国学士院会員になった波多野(前原滉)と、静岡から来た藤丸(前原瑞樹)が現れます。
波多野は万太郎に、理学博士にならない?と持ちかけます。
紀子の場面で、万太郎が理学博士であることが語られていたので、大学も出ず、学歴差別に合っていた万太郎がどうして理学博士になったのか、それが明日語られるのでしょう。
藤丸のモデルらしき人物のことを知ると、それこそ不穏な人生で心配していましたが、ここはモデルの人生をなぞらないようで、安堵しました。
万太郎、寿恵子、波多野、藤丸、4人が集うと、青春の日が蘇ります。
終盤、老いた彼らの物語が長く続くと、さすがに若い俳優たちなので、不自然な印象がありますから、自然な紀子と千鶴のエピソードをはさむことは、その意味でも正解だと感じます。
※この記事は「らんまん」の各話を1つにまとめたものです。
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