土屋太鳳・佐久間大介インタビュー|作品からは想像がつかない? 明るい現場のチグハグ感
内田英治が監督・脚本を務める同作。タイトルの通り、キーとなるのはマッチングアプリだ。
恋愛に奥手ながら、同僚に勧められて渋々アプリに登録した輪花(土屋太鳳)。しかし、そこでマッチングしたのはストーカーと化す永山吐夢(佐久間大介)だった。輪花はマッチングアプリの運営会社のプログラマー・影山剛(金子ノブアキ)に相談するようになる。
さらに同時期にアプリ婚をしたユーザーが殺される事件が連続して起こっており……。
二転三転するストーリー展開、どこかほの暗さが漂う世界観をどのように作り上げていったのか。今回、主演を務める土屋太鳳、共演の佐久間大介に話を聞いた。
愛の重さには役と通ずる部分がある?
――まず、本作のオファーがあったときのお気持ちを教えてください。
土屋太鳳(以下、土屋):『ミッドナイトスワン』を拝見していたので内田監督とはずっとご一緒したいと思っていました。
佐久間さんは18歳のときに「滝沢歌舞伎」を拝見して感動して以来、ご活躍を拝見してきたので、お話をいただいたときは「ぜひ!」とすぐお答えしました。
ただ内容的にはすごく難しいなと。マッチングアプリを開発したり利用したりしている方々は誠実に向き合っていらっしゃるので、マッチングアプリのどのような面に焦点を当ててサスペンスにするのかをきちんと理解して演じないと、偏った内容になってしまう気がしたんです。丁寧に内容を解釈しないと、と思いました。
佐久間大介(以下、佐久間):映画の話が来ていると知ったときに、「どうして僕に?」って聞いたんです。そうしたら、「キャスティングしてくれた方が、バラエティーや歌番組での佐久間くんを観ていて、こんなに明るくて、元気なイメージの人が深い陰の部分を表現してるのが観たい」ということだったので、すごく嬉しかったですね。
さらに、内田監督だと聞いてこれは絶対面白い! 主演は土屋太鳳さん、絶対に面白い、すごい楽しみ! と思いました。
土屋:嬉しいなあ。
――土屋さんは佐久間さんの「滝沢歌舞伎」をご覧になって、とのことですが。
土屋:そうなんです。本当に実力でやってきた方々なのだな、ということを感じていたので、まさか10年越しに共演させていただけるとは思っていなかったです。
暗い役なのに、佐久間さんも金子さんも、現場の雰囲気を明るくしてくださって。その明るさでスタートがかかった途端暗くなれるのがすごいなと思っていました。私もお二人に引っ張ってもらってて。
金子さんが「ドラムっていうのは力を入れたら叩けないんだ、力を入れるのは、叩くときだけ。あとはもう全部抜く、それはお芝居にも通ずることなんだよね」とおっしゃってたのが印象的です。
佐久間:へえ~!
土屋:佐久間さんの役作りの仕方はわからないけれど、ライブでの本番の気合の入れ方や抜き方で培われてきたものが活きているのかなと個人的に解釈をしていました。
佐久間:あら(笑)。嬉しいでございます。
――佐久間さんはメンバーからの反響はいかがでしたか?
佐久間:すごく楽しみだって言ってくれてます。あと、めっちゃ似合う役じゃんって言われました。吐夢は愛が重い人だと思っているんですけど、確かに尊敬する先輩に対しての愛が重いところはあるので。
土屋:どなたですか?
佐久間:宮田俊哉くんっていうんですけど。
土屋:宮田さん!
佐久間:あの人なりの考えと動きをされていて、常に尊敬があるんですよね。
土屋:素敵!
佐久間:そこは確かに似てるかなと思います(笑)。
監督との対話の中でそれぞれが作り上げたキャラクター
――役を作り上げていく中で、監督とはどのようなお話をされましたか。
土屋:演じる上で、「台本にはこう書いてあるけれど、輪花の気持ちに寄り添えない」というときに監督にお話をしたんですけど、それに対して監督も無理をおっしゃることはなく、試行錯誤してくださいました。
人との距離感を意識して場所やトーンを変えて演出してくださって。そうやって変更を重ねることでしっくりくる感覚がありましたね。
佐久間:吐夢はストーカーでもあるんですけど、どんな人なのか知れば知るほど、普通からは逸脱していくので、どう背景を作るか、ということは自分なりに考え抜きましたね。
答え合わせをしたいなと思って監督に時間を作っていただいて、リモートなんですけど、お話をさせてもらいました。僕なりに考えた吐夢についてお話したら、監督も頷いてくれるところがあったり。お互いに深く深く考えた上で、出来上がりました。
台本での演技プランだったらこうやってやるだろうな、でも吐夢だったらもっとこうするんじゃないかな、というところで、監督が僕の意見を聞いてくださったりとか。吐夢についてお互いに深く考えたことが楽しかったですね。
――現場に入る前までにかなりすり合わせをされたんですね。
佐久間:そうですね。僕は映像での演技の経験があまりないということと、それを抜きにしてお芝居をする上で吐夢をもっと知らなきゃな、と思って。でも生み出したのは監督なので、まず、正解を自分の中で見いだしつつ、さらに広げていけたらいいなと思っていました。
――お互いの役に対してはどういう印象を抱かれましたか。
佐久間:輪花は等身大だな、って思いました。ちゃんと嫌なことは嫌って言ったり、態度に出たりとか。
どちらかというとどんどん巻き込まれていくので、奥のほうにあった強い感情がどんどん湧き上がってくる女性だな、というイメージですね。
――土屋さんは吐夢に対してはいかがですか?
土屋:声が小さかったですよね(笑)。
佐久間:はははっ! ね! とってもね!
土屋:本当に、吐夢は最初、よくわからなくて。輪花が怖がる理由は分かるな、と思いながらも何か目が離せないんですよね。
でも、繋がっていたいと思う強い深層心理的な……抗えないものは感じていたのかな、と思います。本当に切っても切れない、離れられない何かがあるみたいな。
また、暗い中にある嘘のない優しさにも、輪花は惹かれたのかな、と思います。
作品と打って変わって「明るい現場だった」
――終盤には金子さんも含めた3人のアクションシーンもあります。
土屋:どうやって感情を作っていこうか考えていたときに、本当に2人がすごく楽しそうに話していたことしか思い出せなくて。
佐久間:ワイワイしててね(笑)。
土屋:作品の役柄とのチグハグ感が印象的なんですよね。集中できないとかではなくて、なんて少年のような2人なんだろう、って。
佐久間:そのシーンは監督がすごくこだわっていて。何回かやったんですけど、それでもうまくいかなくて、7回目ぐらいかな。もう1回やろうとなったときに、太鳳ちゃんが「もう!」って言ってから始めたんですよ。太鳳ちゃんの中で、いろいろ考えている中で「もう!」に気持ちが全て込められていたのかな。そのあとは、ちょっとすっきりとした顔をしていて。
土屋:何回もやったのは憶えています。何か溜まっていったんでしょうね(笑)。
佐久間:溜めているものを吐き出すシーンでもあるしね。
――佐久間さんは金子さんと楽しそうにお話をされていたということですが、これまで共演はないですよね。
佐久間:ないですし、金子さんとの撮影はその日1日だけなんです。
土屋:えっ!? 本当ですか?
佐久間:あそこで初めましてで、もうそこから会えてなくて。
土屋:もうマブダチかのようだったから(笑)。
佐久間:あっはっはっ!
土屋:小学校からの話もしていて……。
佐久間:そう、子どもの頃の話もふたりでしていましたね。
あとSnow Manがめっちゃハマった作品に金子さんが出てらした印象があったので、金子さんとアクションシーンがあるって分かった瞬間にメンバーに自慢した、という話をしたり。
気さくな方ですし、僕も金子さんもおしゃべりだったのですごく意気投合しました。
――いろいろな感想を抱く作品かなと思うのですが、観終わった後にどういった余韻を抱いてほしいと思われますか。
佐久間:僕が感じたのは「何か……変なの!」って。
観た人が、なんか分からないけど、すげえものを観たな、と思ってくれたらいいですね。それぐらい単純に受け取ってもらいたいですね。
土屋:人の本質を見てほしいとか、人間関係をちゃんと繋いで欲しいなとか、そういうことが伝わって欲しいです。
マッチングアプリが良いとか悪いとかではなくて、いかに人の心をちゃんと思いやれるかっていうことが伝わればいいな、と思います。
(取材・文=ふくだりょうこ)
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