「ブギウギ」スズ子の「ジャングル・ブギー」、史実では黒澤明が作詞した<第96回>
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2023年10月2日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「ブギウギ」。
「東京ブギウギ」や「買物ブギー」で知られる昭和の大スター歌手・笠置シヅ子をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。歌って踊るのが大好きで、戦後の日本を照らす“ブギの女王”となっていく主人公・福来スズ子を趣里が演じる。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第96回を紐解いていく。
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ジャングル・ブギー完成
「あんたのブギウギ言う歌が」とタイ子(藤間爽子)から「東京ブギウギ」を忌々しいもののように言われてしまったスズ子(趣里)。華やかなスポットライトを浴びているスズ子に比べ、自分が惨めで恥ずかしいという悲しむタイ子に「恥ずかしない」とスズ子は言い切ります。
ひとりで達彦(蒼昴)をこんなに立派に育てたのだからと。たしかに、達彦はとてもいい子。こんな荒んだ生活のなかで、母を助けて懸命に働いています。
スズ子が達彦に注目するのは、愛子の育児に悩んでいるからでしょう。日々、愛子を育てるのにいっぱいいっぱいになっているからこそ、タイ子の大変さがわかるし、尊敬もする。愛子も達彦みたいに育ってほしいと思ったでしょう。特殊な能力による職業ばかりが立派なのではなく、母や専業主婦だってすごく立派なのだという作り手の気配りを感じます。
「義理返させてねえな」とスズ子。少女の頃、義理と人情を大事にしないといけないと母ツヤ(水川あさみ)から習ったスズ子は、タイ子の初恋に協力しようとして余計なことをしてしまったのですが(第2話)、長い年月をかけて、ついに義理を返すことができたということです。初恋の人のなまえ(松岡)をスズ子はすっかり忘れていましたが(第95回)。
転校してきたとき、はじめに声をかけてくれたタイ子、歌や踊りを職業にすることを教えてくれたタイ子。おせっかいだけどそれが役に立つこともあるとスズ子の個性を認めてくれたタイ子。その恩を返すことができたのです。義理とは、恩返しするというような世の道理のことです。
この感動パートをアヴァンで描ききってしまう脚本家・櫻井剛さんの手際の良さに舌を巻きました。
診察の結果、病気は脚気。ものすごく悪い病気じゃなくてよかった。結核じゃなくてよかった。
全て丸く収まったのは、おミネ(田中麗奈)の助言があってこそ。おミネは施しを受けずに自力で生きていくための職業訓練高校をつくるのが夢だと語ります。スズ子がなにか協力したいというと、あんたのできることは歌だよと、おミネ。
史実では、スズ子のモデル・笠置シヅ子さんはおミネのモデルらしいお米さんの厚生施設づくりの夢に協力したそうです(砂古口早苗による評伝「ブギの女王・笠置シヅ子のズキズキワクワクああしんど」より)。
いろいろ問題が解決し、スズ子はやる気になって、羽鳥(草彅剛)の元へ。
話を聞いた羽鳥は「ジャングル・ブギー」を一気呵成に書き上げます。
映画監督からもらっていたぶっ飛んだ歌詞に曲をつけたのです。これは、史実では、巨匠・黒澤明監督で、映画は三船敏郎主演の「醉いどれ天使」です。笠置シヅ子はこの映画に出て、「ジャングル・ブギー」を歌っています。
「ジャングル・ブギー」は女性が猛獣のようになって大暴れするイメージの曲。女性のたくましさを歌ったものです。まさに魂の叫び、野生の解放という感じで、血湧き肉躍ります。趣里さんは、獣というよりは、魔女のような雰囲気の衣裳とメイクで妖艶に歌い踊りました。
会場には、おミネやパンパンたち、タイ子と達彦も来ていて、楽しみます。おミネたちはノリノリで立ち上がって踊りだすほどですが、タイ子や達彦はびっくりしたのでは……。いや、タイ子も芸者だったから、ときには羽目を外して踊ることにも躊躇はないかも。
【朝ドラ辞典2.0 ロングパス(ろんぐぱす)】ネット用語で、伏線を回収するまでに、長い期間をかけること。最終回の頃に、初期(子供時代など)のすっかり忘れていた出来事が出てきて物語に重要な役割を果たすと大いに盛り上がる。
【朝ドラ辞典2.0 倉庫(そうこ)】一部で使用されているネット用語で、登場人物が役割を終えて出てこなくなることを「倉庫に入った」という。しばらくしてまた必要になると「倉庫から出す」という。都合よく出入りすることを揶揄した用語。再び登板する人物はいいが、倉庫に入ったきりの人物も少なくない。
(文:木俣冬)
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