「ブギウギ」対談に子供を同席させるスズ子、いろんなことがありえない理由<第99回>
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2023年10月2日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「ブギウギ」。
「東京ブギウギ」や「買物ブギー」で知られる昭和の大スター歌手・笠置シヅ子をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。歌って踊るのが大好きで、戦後の日本を照らす“ブギの女王”となっていく主人公・福来スズ子を趣里が演じる。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第99回を紐解いていく。
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スズ子VSりつ子
「続けるしかない。邪魔されようが誤解されようが芸で伝えるしかない。生き方でわかってもらうしかないんだよ。歌手も役者も」(タナケン)
第98回に続いて今日もタナケン(生瀬勝久)が名言ぽいことを言いました。
「真相婦人」の記者・鮫島(みのすけ)の策略で、スズ子(趣里)は茨田りつ子(菊地凛子)と対談をしましたが、逆に喧嘩のようになってしまいました。
歌一本で頑張っているりつ子には、スズ子が歌、映画、育児とあれもこれもやっていることが理解できないようです。対立するふたりをさらに煽ろうと、鮫島が余計なことを言うものだから、スズ子は思わず声を大きくし、つられて愛子(小野美音)が泣き出し、対談は途中で終わってしまいました。
たぶん、見ている人の誰もが思うことでしょうけれど、対談の場に、子供を同席させないでしょう。和気あいあい、子育て、私生活を語る対談だったらまだしも、スズ子はりつ子の誤解を解きたいと思って対談をすることにしたわけで。
しかも、子供を実家に預け、仕事一筋にしているりつ子のことを思えば、対等に話す対談に子供は同席させないという配慮もあるべきではないのかなとも思います。
ただ、「ブギウギ」の場合、「リアリティライン」を低めに設定してあると認識できれば、対談に2歳の幼児を同席させることも許容できるのです。「リアリティライン」とは文字通り、リアリティ、あるいは説得力のハードルの高さです。例えば、ファンタジー要素多めなら低く、なんでもありとなり、高めなら、ファンタジーぽい要素は排除されて、いかにリアルかが問われます。
「ブギウギ」は実在したモデルがいて、一部、史実も取り入れているため、リアリティラインが高いように錯覚しがちですが、そうではありません。そのことは、実は前半でしっかり宣言されていたのです。え、ほんとに? いつ? と思ったみなさん、思い出してください、「桃」を。
前半、スズ子が病気になって寝込んでしまったとき、季節外れの桃をねだりました。そのとき、奇跡的に手に入った桃は、ツヤ(水川あさみ)が危篤のときにも登場し、一瞬ツヤが元気になりました。
ファンタジックなエピソードによって、「ブギウギ」はリアリティラインの高い物語ではなく、ファンタジー寄りになっていたことが、おそらく、ほとんどの視聴者には伝わっていない。それがこのドラマの残念なところです。
たいていの人が現実的な物語だと思って見ているため、6歳の子役が2歳の役を演じていることの不自然さ、その子をやたらと仕事に同行させて、周囲に迷惑をかけるもやもや、スズ子が歌にたいしてどの程度、思い入れがあり鍛錬を行っているか本気度の曖昧さが気になってしまう。が、魔法の桃が出てくる物語だと思えば、すべてが淡く描かれていても問題ないのです。
さて、ドラマの話しに戻します。
対談は途中で終わってしまいましたが、記事はスズ子とりつ子が大バトルしたような内容に創作されて
雑誌が発売されてしまいます。
いまは、原稿チェックさせないのは権威ある新聞くらいですが、この時代はどこもチェックのない時代だったのでしょう。
りつ子にブギはもう終わり、と言われたスズ子は、新曲もブギで勝負しようと奮起します。はたして、スズ子は、歌を、ブギを、まだまだ続けていけるのでしょうか!
(文:木俣冬)
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