土屋太鳳の魅力と手数の多さを知る“3作品”|『マッチング』公開記念
この世には「262の法則」と呼ばれるものがある。自分を見知った人間のうち、2割は自分のことが好きで、6割はどうでもいいと思っており、残りの2割が嫌っている、とするもの。この法則にしたがうと、どんな人間にも2割の「快く思わない人間」がいると考えるのが一般的だ。
しかし、女優・土屋太鳳に関しては、「262の法則」を覆している。彼女の表現力や可愛らしさはもちろん、SNSから窺える、作品や役柄に対する真摯な姿勢を知れば、人類全員がファンでいてもおかしくない。
2月23日(金)より公開中のサイコスリラー映画『マッチング』公開に合わせ、彼女の手数の多さを知れる作品を3選ご紹介。
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1:『哀愁しんでれら』
■4度目のオファーで決断した役
『哀愁しんでれら』の福浦小春役でオファーを受けたとき、土屋太鳳は3度断り、4度目で決断したという。このエピソードは、2021年の公開当時も話題となった。
それはひとえに、気軽な気持ちで受けてはならない役だと彼女にはわかっていたから。かつ、なぜ小春という役が自分の元へやってきたのか、理由を知りたい一心だったと想像できる。
一晩ですべてを失った女性、小春。祖父が倒れ、病院に向かう途中で父の飲酒運転がわかり、連行されてしまう。戻ってきたら自宅は全焼。頼りにしていた恋人の元へ訪れたら、小春の職場先の先輩と彼が浮気をしている現場に遭遇してしまう。
一挙に不幸が押し寄せてきて、生きる気力さえ失われた。そんな心境の小春がたまたま知り合ったのが、開業医の泉澤大悟(田中圭)だった。
天国から地獄ならぬ、地獄から天国へ、とはこのことだろう。大悟と結婚したことで、倒れた祖父は最高の環境で治療を受けられ、父は新しい仕事に就き、小春の妹は当初の志望以上の大学に進学できる目処が立った。
小春自身も幸せの絶頂。大悟の亡くなった元妻の子どもであるヒカリ(COCO)とも良好な関係で、このまま理想の家庭を築けると思っていた。しかし少しの違和感から、楽園のような生活はみるみる堕落していく。
タイトルも含め、まさにダークなおとぎ話といった空気が漂う本作で、土屋太鳳は見事に小春を演じ切ってみせた。
彼女はごく普通の女性で、度重なる不幸に対して絶望はしつつも、持ち前の胆力で乗り切ってみせたに違いない。大悟と出会ったことで、まさに「人生の歯車」が噛み合わないまま狂っていった、その大きな波に抗えないままならなさを、微細な声色と表情でスクリーンに映し出している。
大悟と出会って、束の間の幸せに心をときめかせる様も、ちょっとした違和感に戸惑いつつ、せっかく掴んだ幸せをみすみす逃していいのか逡巡する心の動きも、彼女でなければ表現し得ないものだった。
▶︎『哀愁しんでれら』を観る
2:「今際の国のアリス」シリーズ
■土屋太鳳が信頼できる理由がわかる
「デスゲームもの」と呼ばれるジャンルがある。国内なら『バトル・ロワイアル』シリーズ、『カイジ』シリーズ、2021年に韓国で制作されたドラマ「イカゲーム」も有名だろう。
2020年にシーズン1が放送され、人気を受けた2022年にはシーズン2が、そしてすでにシーズン3の制作も発表されているNetflixドラマシリーズ「今際の国のアリス」も、いわゆるデスゲームものに分類される。
2020年に配信されるや、否応なしにデスゲームへ強制参加させられた登場人物たちの苦悩、生に対する執着、そして容赦なしに人間関係をぶち壊す“ゲーム”の凄惨さに話題が広がった。
本作で、デスゲームのプレイヤー・宇佐木柚葉を演じているのが土屋太鳳。淡々としたクールな言動と軽い身のこなし、なんとしても生き残るために強靭なメンタルでデスゲームに挑んでいく姿は、主人公・有栖良平(山﨑賢人)とは対照的に映る。
アリスと出会ったころのウサギは、暗い過去を隠して頑なになっている様子をあらわにしている。しかし、ともにデスゲームを生き抜くため協力し合ううち、シーズン1からシーズン2にかけては仲間内の確固たる信頼関係が築かれているのがわかる。
土屋太鳳が演じる人物には、自ずと「信頼性」が宿るように感じられる。作品や、そのなかで彼女が演じる役柄の立ち位置とは別のところで発生する、「どうしてもこの人物を疑えない」と思わせる強い信頼。
日頃から、彼女が一つひとつの作品や役柄に、どういった姿勢で向き合っているかがSNSやファンコミュニティから知れる。だからこそ、観る者にとって「土屋太鳳が演じる」というファクトは、それだけで作品そのものをまるっと信頼するに足る根拠となり得る。
▶︎「今際の国のアリス」を観る
3:『PとJK』
■恋に猪突猛進な女子高生
公開中の『マッチング』や、これまでに挙げた『哀愁しんでれら』「今際の国のアリス」シリーズと比べると、2017年に公開された映画『PとJK』は趣を異にする。漫画家・三次マキによる少女漫画「PとJK」を、亀梨和也&土屋太鳳のW主演で実写映画化した。
土屋太鳳演じる女子高生・本谷歌子が、年齢を偽って参加した人数合わせの飲み会にて、亀梨和也演じる警察官・佐賀野功太と出会う。
本来なら公務員と女子高生の恋愛は倫理に反する。しかし、運命的に出会った二人は電撃的な恋に落ちた。「夫婦になれば未成年との交際は法的に問題なくなる」といった理由から、二人は結婚することに。
公開当時の2017年、歌子を演じた土屋太鳳は22歳だった。今と変わらない容姿に、爛漫さと愛嬌があることから、女子高生役を演じても違和感がない。
(C)2017「PとJK」製作委員会
功太からもらった婚約指輪を、学校にもつけていけるようにネックレスにした、とウキウキで報告する歌子の姿は、当時の土屋太鳳だからこそ発揮できる「恋に猪突猛進な女子高生」だった。
一生懸命で、まっすぐで、人を好きになった気持ちを最優先に突っ走る。まずは自分の気持ちをハッキリさせたうえで、納得したならもう迷わない。そんな歌子の性格が、土屋太鳳のパブリックイメージにも通じるように思える。
それは周りの人の状況にも配慮をしつつ、しっかり自分の心とも向き合っている誠実さだ。彼女の真摯さは、周りにはもちろん、自分に対しても向かっていることが窺い知れる。
王道の青春恋愛ものから、ホラーやサスペンスまでジャンルに境目を設けず活動を続けている土屋太鳳。彼女は間違いなく、全人類をファンにする、この先もずっと追い続けていたい女優の一人だ。
▶︎『PとJK」を観る
(文:北村有)
『マッチング』作品情報
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『マッチング』
2024年2月23日(金・祝)全国公開
配給:KADOKAWA
©2024『マッチング』製作委員会
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