続・朝ドライフ

SPECIAL

2024年03月04日

「ブギウギ」スズ子、アメリカ行ったり引っ越ししたりする<第107回>

「ブギウギ」スズ子、アメリカ行ったり引っ越ししたりする<第107回>


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2023年10月2日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「ブギウギ」。

「東京ブギウギ」や「買物ブギー」で知られる昭和の大スター歌手・笠置シヅ子をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。歌って踊るのが大好きで、戦後の日本を照らす“ブギの女王”となっていく主人公・福来スズ子を趣里が演じる。

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第107回を紐解いていく。

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”うるさいおばさん”

柴本タケシ(三浦獠太)がマネージャーになってから2ヶ月、花田家は、スズ子(趣里)、愛子(小野美音)、大野(木野花)、タケシの4人になりました。

第23週「マミーのマミーや」(脚本:足立紳)の時代は1950年です。

働き者でやさしいおばあちゃん、稼ぎ頭のお母さん、体力あるお兄ちゃん、すくすく育つ子供という感じで、にぎやかです。

タケシが若くて元気なので、子供を遊ばせてあげられるのがいい。お父さんがいない家なので、山下(近藤芳正)がタケシに代わったのは、こう見るといい判断だったように思えます。スズ子はタケシを「ター坊」と呼ぶようになっていました。

愛子のために、もっと広い家に引っ越すことにスズ子が決め、準備をはじめた頃、羽鳥(草彅剛)がアメリカ行きの話を持ってきます。

4ヶ月、アメリカで、巡業。歌手としては腕試しの絶好のチャンス。ですが、問題があります。愛子を連れていくことができないのです。

当然ながら、愛子はスズ子が自分を置いてアメリカに行くことを認めません。
いつも頼りになる大野さんもこればかりは、容易に自分にまかせて「いってらっしゃい」とは言えません。

大野と愛子がどんなにうまくやっていても、愛子の母はスズ子しかいない。それでもアメリカに行くべきか、悩んでいるうちに、タケシからアメリカ行きの話を聞いてしまった愛子は激しく泣きじゃくります。この回、愛子のぐずる演技が迫真でした。

アメリカで歌手として成長したい欲望と、歌手である前にふつうの母でありたいという思いの間で葛藤するスズ子。

そんなとき、麻里(市川実和子)が、
「あなたは母であると同時に、歌手福来スズ子なんだから」と背中を押してくれました。

そう言ったあと、「ごめんなさいね、うるさいおばさんで」と断る麻里。

スズ子がアメリカ行きを決心したことを聞いた大野は、愛子をちゃんと説得するように言ったとき、「うるせえおばさんでごめんだ」と断ります。

どちらも助言したあと「うるさいおばさん」と自嘲気味に断りを入れる。
これにはふたつの効能があります。

ひとつは、麻里と大野の気遣いがわかること。
ひとつは、話しの流れがややご都合主義というか誰かが次の展開をセリフで
案内している機械的な印象になりがちなところを、和らげます。

こういう工夫があるかないかで、感じ方はだいぶ変わります。

実のところ、この回、うるさいのは、麻里でも大野でもなく、羽鳥だと思います。
羽鳥は自分がアメリカに行くことに夢中で、スズ子に決心をせっつきます。
彼は、家庭より、音楽を優先しているので、スズ子の迷いを理解して寄り添うことはしません。
草彅さんの話し方と羽鳥のキャラづくりに配慮があるので、決してやな感じに聞こえないのがさすがであります。

麻里と大野は、やさしくて、ちっともうるさくないのに、「うるさくてごめん」と言う。お断りすることなんてない、ほんとにやさしい、思いやりにあふれた人たちに囲まれてスズ子は幸せ者です。

ところで、羽鳥家の食卓にあったドーナッツは、先日、スズ子が茨田(菊地凛子)の楽屋でごちそうになったドーナッツと同じものでしょうか。同じときに撮影したのか。この時代はドーナッツが流行っていたのか。

(文:木俣冬)

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