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<本音で語る>実写・アニメ『マリオの映画』の魅力
<本音で語る>実写・アニメ『マリオの映画』の魅力
テレッ テ テレッ テ テン♪
\ビャビャウ/テレ テ テテテ テンテンテン♪
この文字列を見ただけで「スーパーマリオブラザーズ」のテーマ曲が頭の中に響いた人は、なかなかの強者だろう。下段は「『スーパーマリオブラザーズ』のファーストステージど初っ端、クリボーを踏むのに失敗していきなりゲームオーバーになるマリオ」のサウンドだ。
いや、語りたいのはそんなことではない。日本だけでなく世界中で大人気のゲーム「マリオ」シリーズ。実際にプレイしてキッズ時代を過ごした人は多いはずだし、いまも遊んでいるという大きなお友達がいてもおかしくはない。そんな人気ゲームが昨年アニメ映画化され、特大ヒットをかっ飛ばしたこともまだ記憶に新しい。
──だが、しかし。昨年もう1本のマリオ映画が公開されたことを覚えているだろうか。
そう、実写マリオこと『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』4Kレストア版である。先ごろ本作(通常版)の配信が始まったので、今回は実写映画・アニメ映画双方についてじっくり語っていきたい。
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実写映画化は失敗だったのか
■そもそもマリオの世界観を実写化するには無理がある
いきなりインパクトのある見出しで恐縮だが、『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』(1993)は公開当時、そして後年もまるで腫れ物に触るような勢いで酷評を浴び続けてきた。
その理由を振り返ってみると、やはり原作ゲーム「スーパーマリオブラザーズ」(ファミリーコンピュータ/1985年発売)とはほど遠い世界観が挙げられるのではないか。
原作ゲームはクッパによって滅ぼされてしまったキノコ王国を復活させるべく、配管工のマリオブラザーズ(マリオ&ルイージ兄弟)が活躍するという設定。一方実写映画は現代のニューヨークから物語が始まり、配管工のマリオブラザーズという設定こそ踏襲されていれど、舞台は独自の進化を遂げていた「恐竜人」が住む地下帝国へと移る。
地下帝国はマンハッタンをさらに猥雑にしたイメージで、原作ゲームの舞台とは似ても似つかない。しかしこれは実写化にあたって「仕方がない」といえるところで、そもそも原作の世界観を真面目に実写化する方が難しく、観客が納得するような「リアルとファンタジーのバランス」を上手く取ることは土台無理な話だろう。
■それでもなんとかしてほしかったキャラクターデザイン
とはいえ、舞台設定以上に拒否感を与えた可能性が高いのがクッパをはじめとした恐竜人のキャラクターデザインだ。恐竜の生き残りという設定からもわかるとおり原作のカメ要素はなくなり、クッパのビジュアルに至っては9割9分が演じるデニス・ホッパーのままである。
そしてクッパの手下といえばクリボーやノコノコといったキャラだが、本作では図体がやたらデカくて頭は小さい(不気味な爬虫類顔の)グンバ軍団に変更されている。
ちなみにクリーチャーデザインを手がけたパトリック・タトポロスは、のちに手がけたローランド・エメリッヒ版ゴジラのデザインでも総スカンを食らってしまった。(本音を言うと『魔界帝国』のキャラデザの方がよっぽど受け付けないのだが……)
実写映画版にだって魅力はある
■異世界アクションアドベンチャーとしての魅力
©1993 Allied Filmmakers N.V. © 1993 Nintendoクリーチャーデザインこそニガテではあれ、筆者の評価として本作が「好き」か「嫌い」かでいえば「好き」の部類に入る。
1993年公開の本作は、まさに90年代のハリウッド映画特有の(少々奇妙な、ともいえる)エネルギーが詰まった作品。マリオブラザーズが地下帝国で走り、隠れ、戦い、敵地を攻略していく姿はなんだかんだ見ていてワクワクしてしまう。
アクションシーンも小気味よく、横軸のカーチェイスからジャンプブーツを使った縦軸のアクションまで魅せるところはきっちりと魅せている。また『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズなど勢いに乗るアラン・シルヴェストリの「ザ・活劇」な劇伴も、しっかり映像をサポートしているのがポイントだ。
■ビタハマりのマリオブラザーズ
©1993 Allied Filmmakers N.V. © 1993 Nintendoそして原作ゲームからの実写化で申し分ないのが、マリオとルイージに扮したボブ・ホスキンスとジョン・レグイザモの起用だ。若い世代の映画ファンにはあまり馴染みがないかもしれないが、ホスキンスは1970年代から活躍し、『ロジャー・ラビット』などで主演を務めた名優。マリオ役で披露した赤いキャップに赤と青のつなぎ、チョビ髭を生やした丸顔の愛嬌ある姿は、まるでゲームから飛び出してきたようだった。
残念ながらホスキンスは2014年にこの世を去ってしまったが、ルイージ役のレグイザモは『バイオレント・ナイト』の悪役や『ザ・メニュー』の落ち目の映画スター役など、現在に至るまで第一線で活躍中。ホスキンスとは対照的なスラっとした体型で、そのバランスも原作のマリオとルイージのイメージと合致する。
©1993 Allied Filmmakers N.V. © 1993 Nintendo
本作の魅力として、サマンサ・マシス演じるデイジーも欠かせないだろう。ある理由からクッパに囚われてしまうが、ただ助けを待つだけのプリンセスではない快活さがある。本作のラストも、そんなデイジーの性格がはっきり現れているのではないか。
▶︎『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』を観る
アニメ映画がまさかの特大ヒット
■アニメーションだからこそ再現できたマリオの世界観
ゲーム原作の映画化というトピックにおいて、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の記録的ヒットはもはや“事件”だった。確かに「原作の絶大な知名度」「任天堂とアニメスタジオ・イルミネーションのタッグ」「豪華声優陣」というお膳立てはある。それでも、まさかまさかのアニメ映画世界歴代興収第2位に滑りこむなど誰が予想できただろう。
(C) 2023 Nintendo and Universal Studios
マリオ映画の面目躍如というわけではないが、やはりイルミネーション謹製のマリオワールドは圧巻のビジュアル。原作と多少の設定の差はあれど、豊穣なイマジネーションに溢れる色彩豊かなキノコ王国の絵面は、それだけでアニメ映画化された意味があるというもの。一方で、クッパが支配するダークランドの禍々しさが際立つ世界観の構築もさすがといえる。
■マリオシリーズファン歓喜のネタの数々
(C) 2023 Nintendo and Universal Studios本作はマリオシリーズファンにとってご褒美映画の側面もあり、マリオのアドベンチャーをただ描くだけではなく、ドンキーコングの参戦や「マリオカート」を模したカーチェイスシーンなどとにかく観ていて飽きさせない工夫が多い。
「ルイージマンション」もホラー演出として回収するなど、マリオ関連のゲームをやりこんでいればいるほど思わずニヤリとしてしまうに違いない。(ちなみに他の名作ゲーム関連の小ネタも満載)
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■豪華声優陣とクッパの「歌声」にも注目
日本では宮野真守&畠中祐を筆頭にした吹替版の上映も行われたが、オリジナル版キャストにもぜひ注目してほしい。マリオには『レゴ ムービー』でも主演声優を務めたクリス・プラット、ルイージにチャーリー・デイ、戦うヒロイン・ピーチ姫にアニャ・テイラー=ジョイ、クッパにジャック・ブラックが起用されている。
とりわけ本作随一の異色パートと呼べるのが、ピーチ姫に捧げたクッパのラブ・バラード「Peaches(ピーチス)」の披露シーンだ。もはやクッパというよりゾーンに入ったジャック・ブラック入魂の一曲であり(ちなみにブラックは作詞・作曲にも参加している)、ゴールデングローブ賞をはじめ数々のアワードにノミネートされるなど、すこぶる評価が高い。
本作サウンドトラックにも収められているので、ぜひ魂を揺さぶるクッパの歌声に耳を傾けてみてほしい。
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▶︎『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』を観る
まとめ
評価こそ散々だが味わいのある実写映画(近年評価が見直されてきた気もする)と、稀に見る大成功を収めたアニメ映画。どちらが良い・悪いという話ではなく、どちらもそれぞれの魅力があるマリオ映画として鑑賞したい作品だ。
劇場にせよ配信にせよ、映画鑑賞後に久しぶりにマリオをプレイしたくなった人は多いはず。もちろん、ゲームをプレイしてから映画を楽しむも良し。ゲーム画面の中でも映画の中でも、マリオたちがあなたの来訪と冒険の始まりを待っている。
(文:葦見川和哉)
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