インタビュー

2015年10月31日

原田監督が役所広司の奥深さを語った、映画『日本のいちばん長い日』トークイベント

原田監督が役所広司の奥深さを語った、映画『日本のいちばん長い日』トークイベント


「これが7丁目なら、まだ先がある」


最後に、後半に行われたQ&Aについて一部をご紹介します。

質問「海外での評価はいかがですか?」

原田監督「先日、シカゴ映画祭でやったんですが、ネット評論ですけど僕が知る限りでは2つの意見があって、どちらも絶賛してくれていました。一方は僕の作品を今まで観たことがなかったそうなんですけど、人物像がパーフェクトだと。もうひとつはかなり事情を分かっている人で、アメリカの場合は特に、ハーバート・ビックスの書いた「昭和天皇」という本があって、ジョン・ダワーもそうですけど、この二人が昭和天皇の戦争責任を追求するような本を書いてきて、特にハーバート・ビックスの本は間違いだらけなんですけど、そのイメージとは違うよ、と正当に作品を評価してくれているのがうれしいですね。来月はハワイ映画祭があるので、現地に行って肌で反応を感じてきたいと思います」

質問「戦争映画は難しいものになると、いたるところで字幕やナレーションの説明が入りますが、この映画は難しい内容にも関わらず、そういったものがなかったという理由をお聞かせいただきたいです」

原田監督「ナレーションはいれないように、特に人物の字幕は絶対にいれないと意識しましたね。入れたところで知っている人が少ないので邪魔になるだけなんです。なので入れる場合には、英語の会話のように相手の名前を言うかたちで誰か分かる、あるいはデスクにランキングの表示がおいてあるというかたちに心がけました。ただ、場所に関しては字幕を入れないとわからないだろうなというので、いくつか入れてます」

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質問「役所さんはこれまで、さまざまな軍人を演じていますが、今回陸軍大臣を演じるうえでの困難や難しい点はありましたか?」

役所「なんでも難しいんですけどね(笑)。三船敏郎さんという素晴らしい俳優さんがおやりになった、阿南惟幾と山本五十六というふたつの役を演じているので、しかも映画の上映もそんなに離れていなくて、それは俳優としては非常に怖かったです。でも原田監督は常に新しいものを作ってくださるので、新しい阿南像を作ってくれると信じてチャレンジしました」
原田監督「僕も役所さんは山本五十六とか他の軍人のイメージもあったので、どうだろうなというのはあったんですけど、やはり今回も俳優・役所広司という奥の深さがありました。役所さんとは7本目の作品でこれが7丁目なら、この先もまだあるなという感じがしてるんです(笑)。特に、撮影している時よりも、それが終わって編集しているときに実感しますね。最初から最後まで芝居がつながっていくことを演技のアーチというんですけど、アーチを監督以上に思い描いている。時系列通りではなく、いろんなシーンから撮る中で、アーチの作り方をどういう風にしてやっているのか、いつも不思議に思うんですけど、今回が一番深みも奥行きもありましたね」

「さまざまな編集法があるなかで、ジャンプカットなどのような編集をされた経緯や意味に興味があります」

「今の映画の文法に合ってるジャンプカットなんですね。今まで作られてきた日本の戦争映画のテンポではないところもあるんですけど。一番はっきりしているのは2時間15分という枠に収めないといけなかったことと、今回はとにかく落とせるだけ落として最初に編集してみよう、と。脚本通りにやれば2時間半だったものが2時間9分になったので、心残りのあったシーンを戻していったんです。それで他の映画違う印象があったんだと思います。3分くらい戻して、あとは何回も何回も編集するということはなかったです。日本人は脚本を1ページ1分で計算するんですね。英語でも1ページ1分だけど、英語の方が情報量が多いから、日本語にすると1ページあたりの情報が3分の2くらいしかないんです。だから、僕は1ページ45秒だと決めていて。たとえば1日で5ページ編集したとすると、5ページ×45秒でそこのプラスマイナスがどのくらいになっているかチェックしながら編集しました。これは今まで僕自身の作品ではやったことがないやり方なので、いつもよりページングが早くなっているかもしれませんが、素材はいろいろあるので組み合わせを変えることはできるんですね。今回それで効率が良かったので、上映時間の制限がある場合はこの方法でやったほうがいいかなと思ってます」

作品の内容から編集方法まで、海外の方からも多岐にわたる質問が飛び出し、国際映画祭ならではといったQ&Aでイベントは締めくくられました。
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映画『日本のいちばん長い日』は2016年1月6日(水)にDVD・Blu-rayが発売となります。

(文・写真:大谷和美)

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