映画コラム

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2021年04月19日

『スプリー』レビュー:SNS時代の闇を撃つ、ブラックにも程がある狂気のコミカル・スリラー!

『スプリー』レビュー:SNS時代の闇を撃つ、ブラックにも程がある狂気のコミカル・スリラー!



■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

本作の内容を簡単に言ってしまうと、殺人をライヴ映像で配信していくというものですが、その理由が自身の映像配信のフォロワー数が全然増えないから、というところにSNS時代ならではの大きな闇の深さを痛感させられます。

ただしそんなことをすれば、すぐに警察に捕まってしまうだろうに……といったこちらの懸念は、主人公カート(ジョー・キーリー/怪演!)のノーテンキなまでの明るさがもたらす気持ち悪さによって、徐々に払拭されていきます。



そう、この青年、フォロワー数や「いいね」の数にさんざ振り回され悩んだ挙句、自分でも気づかないうちに完全闇落ちしちゃったのだなと、映画が始まって5分もすると大概の人は気づいてしまうことでしょう。

そして、もはや自分が捕まることなど考える由もなく、ひたすら「数字」に基づく人気取りの虜になって殺戮を繰り返していく彼の狂気も狂気なら、それらがまったくネット上で話題に上がらないのも、ある意味悲劇的すぎる!?
(そもそも配信を見た人たちも、誰も本物の殺人だと思っていない)

これまた彼のあまりの人気のなさを裏付けるものとして、笑ってはいけないと思いつつ、ついついクスッとなってしまうこちらもきっと、どこかでSNSの毒に侵されてはいるのでしょう。

このように本作はブラック・コメディ色を強調しながら、現代社会の闇を明るく楽しい狂気の発露をもってスリリングに描出していきます。



さすがにこのような極端なことまでは起こさないにしても、実際映像配信を含むSNSにはまっている人の大半は、フォロワー至上主義や「いいね」至上主義、ギフト至上主義などに振り回され、それゆえのトラブルを体験したこともあるかと思われます。
(余談ですが、以前ものすごく綺麗なおねえさんがライヴ映像配信中に「無料ギフトなんか邪魔だから、有料ギフトをどんどん私にちょうだーい!」などとシャウトしまくっているのをスマホの画面から目の当たりにして、すっかり心萎えるとともに、思わず『金色夜叉』の寛一お宮を思い出してしまったことがありました)

また後半は要所要所で意表を突いた展開にもなっていきますので、それらの創意工夫もお楽しみくださいませ。

『アイ・フィール・プリティ!』(18)などのサシーア・ザメイタや『スクリーム』シリーズ(96)などのデヴィッド・アークエットなどなかなか通好みのキャスティングが組まれている中、リチャード・アッテンボロー監督の遺作『あの日の指輪を待つきみへ』(07)ヒロインを務めたミーシャ・バートンが「えー、そんな役で!?」といった出演をしているのに心の衝撃を抑えつつ……(一時期かなりトラブルメーカーでもあったようですね。今は知らないけど)。

(文:増當竜也)

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