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映画コラム

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2021年06月28日

『あの夏のルカ』傑作ジュブナイル映画になった「5つ」の理由を全力解説

『あの夏のルカ』傑作ジュブナイル映画になった「5つ」の理由を全力解説


4:パーソナルな物語を、普遍的な作品に



ピクサー作品では、11歳の娘の感情の変化からヒントを得た『インサイド・ヘッド』(15)を筆頭に「極めてパーソナルな経験から生まれた物語が、実は普遍的な作品になる」こともよくあります。

実はエンリコ・カサローザ監督もそのことを意識しており、自身の経験や思索が『あの夏のルカ』には反映されています。例えば、自分が過保護に育てられてシャイな性格であった一方、その頃の親友は情熱的でやりたいことを自由にやっていたことを周りに話すと、みんな「ああ、私にもそんな友だちがいた!」と返されたことを、監督は面白いと感じていたそう。しかも、「自分だけ違うんじゃないか?」という気持ちは、かつてオタクっぽかった自分に限らない、多くの子どもが感じがちな普遍的な気持ちだとも思ったのだとか。

そして、その物語を自伝的なものではなく、普遍的なものにするために、エンリコ監督は製作チームと話し合い、友だちからどんなことを学んだのか、新しいことにチャレンジするために、お互いにどのように励まし合ったのかといった話をたくさんしたのだそうです。その中で、エンリコ監督は「友情の中心にあるのは、1人であれば、やらないようなことに挑戦するきっかけを作ってくれること」だとも思い至ったのだとか。この思索が、『あの夏のルカ』のルカがアルベルトとジュリアと出会ったことで、さまざまなことに挑戦していく作劇につながっているのは、言うまでもありません。

さらに、前述した嫉妬の感情についても、エンリコ監督は「3人の友人がいると起きがちで、みんな経験したことがあると思うので入れ込みたかった部分、誰もが共感できることだと思っています」と語っています。『あの夏のルカ』は実際にはいないシー・モンスターも登場するファンタジーでありながら、実は「誰にでも共通する少年時代の出来事(特に友だちとの関係)」を、パーソナルな経験から描いている、だからこそ多くの人に響く内容となっているのです。

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