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映画コラム

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2021年06月28日

『あの夏のルカ』傑作ジュブナイル映画になった「5つ」の理由を全力解説

『あの夏のルカ』傑作ジュブナイル映画になった「5つ」の理由を全力解説


3:宮崎駿監督およびスタジオジブリ作品からの影響もたくさん!



『あの夏のルカ』のエンリコ・カサローザ監督が、宮崎駿監督およびスタジオジブリ作品の大ファンであり、本編でそのオマージュがあることにも触れなければならないでしょう。わかりやすいところで言えば、 舞台である北イタリアの港町の「ポルトロッソ」は、『紅の豚』(92)の主人公の名前(および英題)の「PORCO ROSSO」から取られています。ジュリアが赤白のボーダーのシャツを着て、しかも自転車に乗っているのは、おそらく『魔女の宅急便』(89)のトンボのオマージュなのではないでしょうか。

さらにエンリコ監督は3DCGアニメである本作で「キャラたちがどう動くか」「もっと楽しくするにはどうしたらいいのか」を考えた結果、2Dアニメのスタイルを取り組んでおり、その動きのタイミングなどは『未来少年コナン』にインスパイアされているのだそうです。キャラたちがコロコロと表情を変え、その一挙手一投足がとにかく可愛らしいのも、宮崎駿作品を参考にしたおかげなのでしょう。

さらに、エンリコ監督はアルベルトがルカにジャンプをやって見せて、ルカはもまた挑戦するシーンにおいて、細田守監督の『おおかみこどもの雨と雪』(12)における、雪の中を母と2人のおおかみこどもが走るシーンを思い出したのだそうです。このシーンはドラマ上は必要でないためカットの危機もあったそうですが、エンリコ監督は素晴らしいシーンなのだと断固として主張していたのだとか。確かに、言われてみればシー・モンスターがしょっちゅう人間の姿になったり、また戻ったりするのは『おおかみこどもの雨と雪』を思い出させますね。

そんなエンリコ監督は、いつか宮崎駿に会う日を夢見て描いたイラストをTwitterに投稿しています。そして、実際に2人は短編作品『月と少年』(11)の上映時に会っていたのです。
さらにエンリコ監督は、宮崎駿監督が『崖の上のポニョ』の絵コンテを水彩画で描いたことを知り、自身も『月と少年』(11)の絵コンテを水彩画で制作して、やはり「3Dアニメにあえて2Dの要素を入れる」試みをしていたのだとか。エンリコ監督はとことん、日本のアニメ映画および宮崎駿作品をリスペクトしている作家と言っていいでしょう。

ちなみに、その『月と少年』は、小舟で出かけていたり、親が子どもの教育方針をめぐってケンカするなど、『あの夏のルカ』との共通点がとても多い作品でしたので、合わせて観るとより楽しめるでしょう。ジュリアのお父さんと、ほぼ見た目が変わらないキャラも出てきますよ。

さらに、ジュブナイル映画の金字塔である『スタンド・バイ・ミー』(86)や、自転車レースに挑む若者たちの友情を描いた『ヤング・ゼネレーション』(79)もインスピレーションを与えていたのだそう。アニメでありながら、実写映画のジュブナイルもののエッセンスも多分に込められているのです。

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