<ボクの殺意が恋をした>最終回まで全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第10話ストーリー&レビュー
第10話ストーリー
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鳴宮美月引退会見が行われる中、柊(中川大志)と葵(新木優子)は、詩織(水野美紀)に追い詰められて絶体絶命の危機に。2人を人質に取られた丈一郎(藤木直人)は、会見を止めるしかなかった。
詩織は、丈一郎が来るのを待っていた。みんなまとめて始末すると冷酷に告げる詩織。さらに彼女は、SOSのためには人も殺すと言い放つ。柊は、優しかった詩織が殺人を犯したことが信じられない。
あくまで正義のためにやったと言う詩織に、柊は「詩織さんにとっての正義って何だよ!?」と問いかける。詩織は、SOSを立ち上げるきっかけとなった自らの過去を明かす。
武尊(小池徹平)が殺された経緯を知った葵は、詩織に怒りをぶつける。「人を殺すことにも正義はある」と、詩織は邪悪な論理を主張。一方、柊は、復讐のために鳴宮美月を殺そうとした自分を思い出して何も言えなくなってしまう。
詩織が再び銃の引き金を引こうとしたその時、丈一郎が現れるが……!?
第10話レビュー
第10話にしてついに、詩織(水野美紀)が武尊(小池徹平)を殺してまで隠ぺいしたかった事実が明らかになった。
17年前、彼女は当時5歳だった息子の命を理不尽に奪われた。「人を殺してみたかった」というあまりにもふざけた動機による犯行だったが、犯人が16歳だったため、大きな裁きを受けることはなかった。そんな詩織の弱みにつけこんだ警視庁副総監の馬渕(中丸新将)が、詩織をSOSに誘い入れる。そして、詩織は自らの手で息子を殺した犯人・ミズモトを始末したが、ミズモトは詩織に殺されることを予感し、武尊に相談を持ち掛けていた。そのため、ミズモトが死ぬ間際の詩織との会話を収めた音声データを武尊が所持していたのだ。
SOSの大義名分は、「法で裁けない悪を処理すること」。たしかに現実にも、なぜこの事件がこんなにも軽い罪で許されてしまうのか?と感じることは少なくない。
でも、果たして息子を殺した犯人を、また、SOSの存在を公にすると言った武尊を殺すことは正義といえるだろうか? 答えは否であろう。少なくともミズモト殺害時の詩織は自身の感情が前面に出てしまっていたし、武尊の殺害に関しては完全に保身に走っている。
だからだろう、「復讐して楽になった?」、「悲しみは少しでも癒えた?」という柊(中川大志)の問いに答えることが出来なかった。葵(新木優子)が丈一郎(藤木直人)を殺したと思い込んだまま、苦悩の中で恨みに任せて殺そうとした経験がある柊には、詩織の感情の一端が理解できていたのだろう。あの時の柊の悲しみと慈愛に満ちた表情には、そう思わせる包容力が垣間見えた。
実はこの詩織の自白の前半部分、デス・プリンス(鈴木伸之)や莉奈(松本穂香)の協力のおかげで「鳴宮美月 引退会見」の会場に中継されていた。柊の思いも届き、詩織は自首をすることに。
一方、柊と葵は、お互いのためを思って「もう会うのは辞めよう」と結論を出す。回想シーンが流れたが、笑顔で別れるにはこの数か月間の思い出が濃密すぎた。思い合っている同士なのに、どうしてこんなことになってしまうのだろう…。
半年後。
柊は丈一郎とともに清掃の仕事を、葵は千景(田中みな実)のもとでアシスタントをする日常を送っていた。
このまま終わるなんて寂しすぎる…!
そんな視聴者の願いが届いたかのように、丈一郎がデス・プリンスを巻き込んで、柊の気持ちを焚きつけた。
その甲斐あって、何とか葵に思いを打ち明けられた柊。初恋からずっと両想いの2人が、悲しいすれ違いで離れ離れになることは避けられた。
よかった…本当によかった…と、祝福の気持ちに浸っているのも束の間、今度はデス・プリンス&莉奈と中継が繋がる。そして、デス・プリンスの仕掛けた爆弾が爆発…!? したかと思いきや、それは単なるくす玉で、2人を祝っていつもの面々が顔を揃えているのだった。
丈一郎のスーパープレイともいえるが、この人ってつくづく過保護だ。柊のことが、本当に大事でたまらないのだろうな。
爆弾の騒ぎに紛れて、葵とのキスがお預けになってしまった柊。葵に「ちゃんと告白するから…!」と宣言するも、逆に不意打ちでキスをされてしまう。この、キスからの笑顔を見せる新木優子が驚くほど可愛かった。柊もキュン死していたし、画面越しに恐らく何人もの視聴者が胸を押さえたことだろう。「ボクの殺意が恋をした」というタイトルながら、過去を除いて殺害された人は出ていない。最終回、最後の数秒にしてたくさんの(キュン)死者を出すという、なんとも最高の展開になった。
さて、たっぷりのコメディ要素とともにスタートしたものの、終わってみれば考えさせられる部分も多い作品であった。
何より、俳優陣の魅力が光った。千景役の田中みな実は、これまでのイメージや演じてきた役どころからも物語のスパイス的な役目を担っているものかと思いきや、思わぬ形でキーパーソンに。“フッ軽さん”なんて呼ばれてたこと、もはやちょっと忘れかけていた。そのくらい変化に違和感がなかった。
そして、筆者が最も印象的だったのは、やはり中川大志演じる柊のころころと変わる表情だ。最初こそ心配になるくらい頼りない表情が多かったのに、葵を守るために体を張る時には自信を漲らせ、信じていた人に裏切られた時には戸惑ったり苦悩したりと、回を重ねるごとに複雑になっていく心情を繊細に演じ切っていた。コメディとシリアスが突如として入り混じる本作でも視聴者を置き去りにすることがなかったのは、ひとえに中川の表現力と絶妙なバランス感覚があったからこそだと筆者は思う。
もちろん、ちょっと様子のおかしいデス・プリンスと莉奈を演じ切った鈴木伸之と松本穂香も、ずーっとどこか空気の読めない風岡がぴったりハマっていた中尾明慶も、みんなとてもよかった。 次の作品では、彼らはどんな表情を見せてくれるのだろう。今後への期待も感じさせてくれるドラマだった。
※この記事は「ボクの殺意が恋をした」の各話を1つにまとめたものです。
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(文:シネマズ編集部)
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