映画『CUBE 一度入ったら、最後』:"Wマサキ"による演技合戦から目が離せない



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1997年に公開されたヴィンチェンゾ・ナタリ監督作品『CUBE』がリメイクされた。しかも初めての監督公認リメイク、さらには主演の菅田将暉を筆頭に、指折りの俳優陣が顔を揃えたことでも話題だ。

年齢も性別も職業も、何の接点もつながりもない男女6人が場所も理由も分からぬまま、謎の立方体(CUBE)の中にただただ閉じ込められる『CUBE 一度入ったら、最後』。

“劇薬系密室エンターテインメント”の異名をとる本作は、全く状況が分からない中で、次第にそれぞれの人間性が浮き彫りになっていく。時に繊細に、時に感情的に演じる俳優陣の競演に注目したい。

菅田将暉と岡田将生による“Wマサキ”の演技合戦

個人的に印象に残ったのは、菅田将暉と岡田将生の“Wマサキ”による演技合戦だ。作中ずっと不穏な空気が流れる中で、特に黒い闇を抱えた人物を見事に演じ切っていた。



菅田演じるエンジニアの後藤は、最初こそCUBEに閉じ込められたことに動揺していたものの、周囲と最低限のコミュニケーションをとりながら、冷静に事態を理解しようと努める。また、明晰な頭脳を生かし、CUBEの構造を解き明かすヒントとなりそうな痕跡を見つけていく。ぱっと見の印象はやや心許ないが、この状況下においては頼りがいがある。

頼りになるお兄ちゃんかと思いきや、だんだん事情は変化。6人の中で最年少の千陽を気遣ううちに、自身が抱えるトラウマが徐々に浮き彫りになっていく。



ただでさえCUBEという窮地に追い込まれている彼を、さらに追い詰めるほどのトラウマとは何なのか。

これまで様々な難役を演じてきた菅田。

「これ(CUBE)は何かの罰なの?」という言葉を皮切りとした、彼の過去のある出来事が襲ってくる場面で見せた罪悪感に苦悶する様は圧巻だった。菅田将暉という役者の、また新たな一面を垣間見られるはずだ。



対照的に、岡田が演じたフリーターの越智は、同世代のはずの後藤よりもずっと頼りない。どこかから監視されていると考えたのだろう、「僕ら何もやってないですよ~」と声を上げ、自信なげにオドオドしている。そして、年長者であることと自身の社会的地位を振りかざし高圧的な態度をとる安東(吉田鋼太郎)へストレスを募らせ、次第に歪な表情を浮かべていく。神経質で、厄介。このあたりから、越智の闇が浮き彫りになってくる。

岡田と言えば、筆者にとっては2007年に放送されたドラマ「花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~」をはじめ、好感度の高いイケメン俳優というイメージが強い。だが、30代になった頃から、グンと役の幅が広がった。3枚目の役も、ちょっと面倒だがどこか憎めない役も、気持ちの悪い役も、器用に演じる技巧派に仲間入りを果たしたと言えるだろう。



今回演じる越智も、とにかく気持ちが悪い(褒めてる)。物語の重要なカギのひとつとなっていく彼の狂気に満ちた気持ち悪さを、ぜひ堪能してみて欲しい。

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(C)2021「CUBE」製作委員会

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