映画『CUBE 一度入ったら、最後』:"Wマサキ"による演技合戦から目が離せない


繊細で、感情的に演じる俳優陣の競演にも注目

もちろん他の登場人物も見応え十分だ。



何としてもCUBEから出なければならない“理由”がある整備士の井手(斎藤工)は、周りと馴れ合わず、部屋から部屋へ淡々と移動していく。1歩間違えれば死んでしまうようなトラップが仕掛けられており、しかも、移動することが正しいという確証もない中で。無骨な雰囲気をまとった井手を演じた斎藤からは、普段とは趣の異なる色気が漂っていた。



井手同様に冷静なのが杏演じる団体職員の甲斐だ。登場から「あなたたち、何者ですか?」と落ち着いた様子で聞く姿は、混乱が支配するCUBEの中で少し異質な感じがする。甲斐を演じた杏の整った顔立ちも相まって、彼女の醸し出す無機質な空気はある意味恐怖を感じる。

一方で、こんな状況になってもなお自身が年長者で社会的地位があったことを振りかざす安東(吉田鋼太郎)のような人物もいる。みんなが協力しながら活路を見出そうとしても「ガキの言うことなんかアテにならないだろ」と一蹴する。吉田の腹から響くよく通る声が、安東の過剰な自信、そして身勝手さを体現していた。



そんな傍若無人な大人たちを見て怯えているのが弱冠13歳の田代輝演じる宇野だ。箱の隅で小さくなっている彼は、「大人はキライだ」と呟く。思春期特有の繊細さと神経質さを見事に演じており、幾度となく視線を奪われた。田代輝、今後の出演作が楽しみな俳優が、また1人増えた。

もう一つ、ぜひとも筆者がお伝えしておきたいのが、本作に関してはホラー作品が苦手でも鑑賞は可能だったということだ。もしも怖さを理由に鑑賞を迷っている人がいるのなら、大丈夫だよとお伝えしたい。途中、スクリーンから目をそらす場面はあったものの、概ね落ち着いて見ることができた。(もちろん個人差はあると思うが…)

もしかしたら自分も劇場というCUBEの中にいるのかも、と境界を失っていくような独特の感覚を、ぜひ体感してみて欲しい。

(文・あまのさき)

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