
©日テレ「恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜」
ドラマ「恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜」では盲学校に通う女の子・ユキコを演じ、2021年12月30日(木)公開予定の映画『99.9-刑事専門弁護士-THE MOVIE』にも出演する杉咲花。「恋です!」では、視覚障害者という難しい役どころを違和感なく演じ、キュンキュンする展開も合わせて注目を集めている。
本記事では、彼女の出演作品をいくつか挙げ、演技の魅力について語りたい。
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ドラマ「夜行観覧車」(2013)遠藤彩花役

©TBS「夜行観覧車」
2021年12月現在放送中の「最愛」をはじめ、「Nのために」「リバース」など多くの名作を生みだしたプロデューサー新井順子・演出塚原あゆ子・脚本奥寺佐渡子などをはじめとしたスタッフ陣が送る湊かなえ原作のドラマ。
分不相応だが憧れのひばりヶ丘に家を建てた一家が、周りの住人たちに「小さい家」「話が合わない」などときつく当たられる。引っ越して4年経ったある日、事件が起こる……というストーリー。
杉咲が演じたのは一人娘の彩花。素直で明るく優しい子だったが、中学受験に失敗。それでも前向きに公立中学での生活を楽しみにするが、もともとは友だちだった子から同じ男の子を好きになったきっかけにいじめられ、怒りの矛先をひばりヶ丘で暮らすことにこだわった母・真弓(鈴木京香)に向けるという役どころ。
この役のキレ演技がすごかった。もともとの子どもらしくかわいらしかった印象から、母親に対して「あんた」「~だろ」という口をきき、家じゅうのものを投げたり壊したりすることも。ここまでやれるのかと思うほどのつらさや苦しさが伝わってくる激しい演技に圧倒され、この子は只者ではないと思った。
向かいに住んでいる同い年の男の子・慎司を中川大志が、もともと彩花と仲が良かったが、慎司を好きになったことをきっかけに彼と仲のいい彩花を仲間外れにしていじめる志保を吉川愛(当時の芸名は吉田里琴)が演じている。杉咲を含め、3人とも主演を張る俳優に成長していてすごい。
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–{映画『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)幸野安澄役}–
映画『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)幸野安澄役

©「湯を沸かすほどの熱い愛」
父がふらっと出奔し、女手一つで娘を育てる双葉(宮沢りえ)はある日、がんで余命2か月という告知を受ける。杉咲はその娘・亜澄役。
杉咲の演技の繊細さを堪能できる作品だ。学校でいじめを受けて制服を隠され、行きたくないと言うが母・双葉に許してもらえず「立ち向かわなきゃと言われ、体操服を脱いで下着姿になり、震える声で「制服返してください」「今は体育の時間じゃないから」と言って嘔吐するシーン。
実は生みの母が別にいたと知り、会いに行くシーン。涙をこらえながら聴覚障害者の母に手話で挨拶し、なんで手話を? と聞かれて「お母ちゃんがいつか役に立つからって……」と聞いて泣いた生みの母を見て、自分も泣くシーン。この泣き方がまた、喉の奥から出た声という感じ。
双葉の枕元で、もう母が長くないと悟ったときの表情もたまらない。一度横を向いて泣いてから、笑顔で「お母ちゃんを一人に絶対しないから」と話すいじらしさに観ているほうが泣いた。彼女は「泣く」という演技だけで、どれだけのバリエーションを持っているのだろうか。
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–{映画『十二人の死にたい子どもたち』(2019)アンリ役}–
映画『十二人の死にたい子どもたち』(2019)アンリ役

(C)2019「十二人の死にたい子どもたち」製作委員会
集団自殺をするため、廃病院の一室に集まった初対面の12人の少年少女たちの物語。杉咲が演じているのはアンリという少女。強く印象に残っているのは、ビジュアルだ。おでこを出しているイメージがあったが、ぱっつん長め前髪の黒髪ロングで全身黒ずくめ。それまで子どもらしいイメージがあったため、全く異なるクールなビジュアルに驚いた。
杉咲花は無垢でかわいい声が魅力的だったが、この作品では無表情で話し方もトーンを押さえていて突き放すような話し方や意地悪な物言い、基本姿勢は腕組み。つらい過去を背負っており、後半に感情を吐露するシーンでは声を荒げるが、声を荒げながらも表情はあまり動かないのも印象的だった。
これからさらに、さまざまな彼女の姿を観られそうだという期待が高まった役柄だ。
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–{ドラマ「恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜」(2021)赤座ユキコ役}–
ドラマ「恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜」(2021)赤座ユキコ役

©日テレ「恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜」
視覚障害だけど完全に見えないわけではなく、顔を近づけると大きい文字は判別できたりする。その絶妙なニュアンスが難しそうに感じるが、杉咲は違和感なく演じている。たこ焼きを食べるときにまず口先にあてて熱さを確認するシーンは印象的だった。
またこの作品を通して発見だったのは、目に力のある役者さんだと思っていたが、目の動きが少ない役でも表現力がある人なのだとわかったことである。恋に出会ったよろこび、はじめてのアルバイトに奮闘するシーンなど、ユキコの気持ちが手に取るように伝わってきた。特に印象的だったのは第9話、森生のためにわざと別れを告げ、一人になって道端で泣き崩れるシーン。悲しみが伝わってきて、背中からも心情がわかる。全身でお芝居ができる人なのだ。
茶髪のボブヘアやファッションもかわいく、ビジュアル的にもいろんなスタイルが似合う人だなとあらためて感じた。
感情のバリエーション豊富、リミッターをどこまでも外せる人

©日テレ「恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜」
例えば同じ喜怒哀楽の中の「哀」でも、さまざまな表現ができる杉咲花。繊細で細やかな演技ができる一方、感情を爆発させる場面では何段階にもリミッターを解除できる。顔でも声でも身体のひとつひとつでも感情を表現できる。
これからの彼女が今度はどんな感情を見せてくれるのか、楽しみで仕方がない。
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(文:ぐみ)