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2021年12月26日

「前科者」最終話レビュー:佳代(有村架純)とみどり(石橋静河)の不思議な友情が提示した理想の社会(※ストーリーネタバレあり)

「前科者」最終話レビュー:佳代(有村架純)とみどり(石橋静河)の不思議な友情が提示した理想の社会(※ストーリーネタバレあり)



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有村架純主演のWOWOWオリジナルドラマ「前科者 -新米保護司・阿川佳代-」が2021年11月20日にスタートした。

「ビッグコミックオリジナル」(小学館)で連載中の「前科者」(原作:香川まさひと、作画:月島冬ニ)を映像化した本作は、罪を犯した“前科者”たちの更生を目指して、保護司・阿川佳代(有村架純)が奮闘していくヒューマンストーリー。連続ドラマと映画の2つの形での映像化となり、劇場版は2022年1月に公開される。

本記事では、第6話(最終回)をcinemas PLUSのドラマライターが紐解いていく。

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「前科者 -新米保護司・阿川佳代-」最終話レビュー

「保護司は、社会奉仕の精神をもって、犯罪をした者の改善及び更生を助けるとともに、犯罪の予防のため世論の啓発に努め、もって地域社会の浄化をはかり、個人及び公共の福祉に寄与することを、その使命とする。」

これは、保護司法第一条に記された“保護司”の使命だ。簡単に言えば、保護司は罪を犯した人や非行少年の社会復帰や更生をサポートするとともに、犯罪のない地域社会の実現を目指す。

多くの人は思うだろう。なぜ一切無給で、わざわざ誰もが「怖い」「近づきたくない」と思うような前科がある人たちの支援を行うのかと。色んな理由があるだろうが、「前科者」の主人公・阿川佳代(有村架純)が保護司になったのは居場所をなくした出所者に襲われ、自分を庇った人が目の前で殺されたからだ。

彼らが再び罪を犯してしまう背景には、“生きづらさ”があるという。前科者ということで安定した職に就くことが難しく、家族や友人からも見放され、社会から孤立するケースが多い。自業自得と言ってしまえば簡単だ。

しかし、そもそも「なぜ彼らは罪を犯してしまったのか」という点に目を向けると、社会全体の問題が浮かび上がってくる。「前科者」は全6話という短さながら、罪を犯さざるを得なかった人たちの孤独に真摯に向き合ったドラマだった。

恐喝・傷害で捕まったみどり(石橋静河)、幼い少女への恋心を咎められ兄を殺した二朗(大東駿介)、覚せい剤の売人である恋人に薬漬けにされた多実子(古川琴音)。生まれも育ちも違う3人は、共通して他者からの愛情に飢えている。誰かの期待に応えたいという純粋さゆえに暴走したり、騙されたり…。初めて佳代の家に来た彼らの表情は、どこか社会に対して絶望しているようだった。

佳代はそんな彼らが抱える傷に全力で寄り添ったが、社会復帰や更生はそんなに簡単なものじゃないことを本作は私たちに突きつける。特に薬物依存からの立ち直りは難しく、多実子は再び覚せい剤に手を出してしまった。

保護司は観察対象者の近親者でもなければ、恋人でも友人でもない。あくまでも法務大臣から委嘱された非常勤の国家公務員として、適度な距離から対象者を見守り、何か問題が発生した場合は即座に保護観察官へ報告する義務が生じる。

孤独を抱えがちな対象者に寄り添い、全力で立ち直りを支える必要がある一方で、個人的な感情から安易に深入りしてはいけないという非常に難しい課題を保護司は抱えているのだ。

新米保護司の佳代はその点でつまずき、多実子を救えなかったことから自責の念に駆られる。それでも再び歩み出すことができたのは、彼女が最初に担当したみどりの言葉だった。

「前科者は不安なんだよ。怖いんだよ、世間が。どこに行っても前科者のレッテルを貼られてさ、寂しくて悔しくてさ。佳代ちゃんはさ、そこにちゃんと言ってくれるじゃんか。くそ真面目で、独りよがりでさ、ちょっとうっとうしいけど、ちゃんと一緒にいてくれるじゃんか。失敗したら次の誰かをちゃんと助けてやんなよ。それでまた失敗したら次の誰かを助けなよ。どうにもなんなかったら、次はあたしがあんたを助けるから」

現代では誰かが正しいとされる道を踏み外した時、“自己責任”という言葉で片付けられることが多い。そこに足りないのは、相手と同じ立場になって考える力だ。

何が起きるかわからない社会で、ふとした拍子に自分や、自分の大切な人が今立つ場所から突き落とされてしまうかもしれない。そんな時、佳代がみどりの、みどりが佳代の手を取ったように、誰もが手を差し伸べられる社会であってほしいと願う。

「前科者 -新米保護司・阿川佳代-」最終話ストーリー

多実子の元恋人で、覚せい剤の売人でもある佐藤翔(富田健太郎)が多実子に接触を図ったことを知った佳代。多実子は辛うじて薬物の誘惑に打ち勝つことができたが、いつ再び翔が接触してくるとも知れない。多実子を全力で守る、と決意する佳代。しかしそんな佳代を待ち受けていたのは、保護司にとって、最大の試練ともいえる局面だった。保護司となって半年。 “前科者”を前に、佳代がたどり着いた答えとは……。


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(文:苫とり子)

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(C)香川まさひと・月島冬二/小学館(C)2021「WOWOW オリジナルドラマ 前科者 -新米保護司・阿川佳代-」製作委員会

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