映画コラム
2021年、cinemas PLUS編集長が選ぶ<映画満足度ランキング ベスト10>
2021年、cinemas PLUS編集長が選ぶ<映画満足度ランキング ベスト10>
cinemas PLUS編集長の柳下です。
2021年もあとわずか!今年も数多くの映画やドラマを楽しめまして、例年通り「個人的なお祭りとして」、映画満足度ランキングを僭越ながら発表させて頂きます!
>>>ドラマ部門はこちらの記事
もちろん、ここでピックアップする以外にも様々素晴らしい作品はたくさんございました。今回のランキングは「満足度ランキング」としている通りで作品の批評的なランキングではございません。私自身の感覚的な好みや境遇や歩みから琴線に触れた作品のランキングです。
「自分と同じ!」「えー!それが上位なの!?」なんて一喜一憂しながらお気軽にお楽しみください。
第10位:アナザーラウンド
ストーリー概要
冴えない高校教師マーティンとその同僚3人は、ノルウェー人哲学者の「血中アルコール濃度を一定に保つと仕事の効率が良くなり想像力がみなぎる」という理論を証明するため実験をすることに。朝から酒を飲み続け常に酔った状態を保つと、授業も楽しくなり、生き生きとする。だが、すべての行動には結果が伴うのだったー。本作の良かったところ
※第10位から第6位までは簡潔に一文で記します。第5位から第1位は詳細に記します。「酒は飲んでも呑まれるなを描きつつ、決して否定して終わりではない人間ドラマが示されていた。言葉で表現できない哀愁のような余韻があった」
第9位:ラストナイト・イン・ソーホー
ストーリー概要
ファッションデザイナーを夢見るエロイーズ(トーマシン・マッケンジー)は、ロンドンのソーホーにあるデザイン専門学校に入学する。しかし同級生たちとの寮生活に馴染めず、街の片隅で一人暮らしを始めることに。新居のアパートで眠りにつくと、夢の中で60年代のソーホーにいた。そこで歌手を夢見る魅惑的なサンディ(アニャ・テイラー=ジョイ)に出会うと、身体も感覚も彼女とシンクロしていく。夢の中の体験が現実にも影響を与え、充実した毎日を送れるようになったエロイーズは、タイムリープを繰り返すようになる。だがある日、夢の中でサンディが殺されるところを目撃してしまう。さらに現実では謎の亡霊が現れ、徐々に精神を蝕まれるエロイーズ。果たして、殺人鬼は一体誰なのか、そして亡霊の目的とは-!?本作の良かったところ
※第10位から第6位までは簡潔に一文で記します。第5位から第1位は詳細に記します。「一般的にはホラー映画に分類されるが、音楽と映像で魅せる映画であり、鑑賞したというより感じた映画。エドガー・ライト監督はセンスの塊だ」
第8位:ドライブ・マイ・カー
ストーリー概要
舞台俳優であり、演出家の家福悠介。彼は、脚本家の妻・音と満ち足りた日々を送っていた。しかし、妻はある秘密を残したまま突然この世からいなくなってしまう――。2年後、演劇祭で演出を任されることになった家福は、愛車のサーブで広島へと向かう。そこで出会ったのは、寡黙な専属ドライバーみさきだった。喪失感を抱えたまま生きる家福は、みさきと過ごすなか、それまで目を背けていたあることに気づかされていく…本作の良かったところ
※第10位から第6位までは簡潔に一文で記します。第5位から第1位は詳細に記します。「映像と音楽と演技の融合で世界へ挑む。自然と心に入り込む会話劇、3時間の体験を通して村上春樹の原作世界へ誘われる不思議な体験だった」
第7位:名探偵コナン 緋色の弾丸
ストーリー概要
世界最大のスポーツの祭典「WSG-ワールド・スポーツ・ゲームス-」の記念すべき東京開催を迎えようとしている日本。その開会式に併せて、日本の技術を総集結した、最高時速1,000kmを誇る世界初「真空超電導リニア」が新名古屋駅と東京に新設される芝浜駅間に開発することが発表された。世界の注目を集める中、名だたる大会スポンサーが集うパーティー会場で突如事件が発生し、企業のトップが相次いで拉致されてしまう異常事態に。その裏には事件を監視する赤井秀一の姿、そして赤井からの指令を待つFBIの姿があった。コナンの推理により、15年前にアメリカのボストンで起きた忌まわしきWSG連続拉致事件との関連性が浮かび上がり、当時の事件もFBIの管轄だったことが判明する。果たしてこれは偶然なのか? 世界中から大勢の人々が集まる日本で、いったい何が起ころうとしているのか? “日本を貫く弾丸(ジャパニーズブレット)”真空超電導リニアが起動する時危険すぎる一家が引き合わされ、いま共鳴し始める―――!本作の良かったところ
※第10位から第6位までは簡潔に一文で記します。第5位から第1位は詳細に記します。「私はコナンが大好きだ。コロナで丸2年待った新作映画。赤井秀一がカッコいい、コナンくんは相変わらずの身体能力。それだけで十分だ」
第6位:アイの歌声を聴かせて
ストーリー概要
景部高等学校に転入してきた謎の美少女、シオン(cv 土屋太鳳)は抜群の運動神経と天真爛漫な性格で学校の人気者になるが…実は試験中の【AI】だった!シオンはクラスでいつもひとりぼっちのサトミ(cv 福原遥)の前で突然歌い出し、思いもよらない方法でサトミの“幸せ”を叶えようとする。彼女がAIであることを知ってしまったサトミと、幼馴染で機械マニアのトウマ(cv 工藤阿須加)、人気NO.1イケメンのゴッちゃん(cv 興津和幸)、気の強いアヤ(cv 小松未可子)、柔道部員のサンダー(cv 日野聡)たちは、シオンに振り回されながらも、ひたむきな姿とその歌声に心動かされていく。しかしシオンがサトミのためにとったある行動をきっかけに、大騒動に巻き込まれてしまう――。ちょっぴりポンコツなAIとクラスメイトが織りなす、ハートフルエンターテイメント!本作の良かったところ
※第10位から第6位までは簡潔に一文で記します。第5位から第1位は詳細に記します。「世間がざわついてからの鑑賞。これほどまでに悔やんだことはなかった。もっと早くなぜ観なかったのか。なぜ何度も観る機会を逸してしまったのか。永遠に悔やみ続けるほどの素晴らしい作品だった」
第5位:ノマドランド
ストーリー概要
リーマンショック後、企業の倒産とともに、長年住み慣れたネバダ州の企業城下町の住処を失った60代女性ファーン(フランシス・マクドーマンド)。彼女の選択は、キャンピングカーに全ての思い出を詰め込んで、車上生活者、“現代のノマド(遊牧民)”として、過酷な季節労働の現場を渡り歩くことだった。その日その日を懸命に乗り越えながら、往く先々で出会うノマドたちとの心の交流とともに、誇りを持った彼女の自由な旅は続いていく。大きな反響を生んだ原作ノンフィクションをもとに、そこで描かれる実在のノマドたちとともに見つめる今を生きる希望を、広大な西部の自然の中で探し求めるロードムービー。本作の良かったところ
第93回アカデミー賞で作品賞を受賞した本作。ホームレス、ではなくハウスレスのノマド女性を追いながら現代社会の一端を見事に描いていた。コロナ禍を通して世界各国の課題が世界へより可視化されるように。本作はあくまでも一個人のノマド女性を描くが、その延長にはアメリカという国があり、そして世界・社会がある。その世界・社会に私たちは住んでおり、繋がっている。
そう考えると一アメリカの広大な内陸の物語と他人事には思えず、未来を想像した時に何が正解なのかがわからなくなる怖さも感じた。
本作で描かれる人々は決して豊かではない。しかしその豊かでない中に小さな幸せを感じもしている。逆に、豊かに生きる人々は小さな幸せを見落としてしまっているのでは。
私自身は豊かというわけではないが、情報に溢れながら生きている。しかし情報に溢れることは豊かではない。そう思い始め絶望感すら感じた。
しかしそれは悪いことではない。人生や世界を広く見直すきっかけとなったからだ。
第4位:キングスマン:ファースト・エージェント
ストーリー概要
国家に属さない秘密結社の最初の任務は、世界大戦を終わらせることだった…!――1914年。世界大戦を密かに操る闇の狂団に、英国貴族のオックスフォード公と息子コンラッドが立ち向かう。人類破滅へのタイムリミットが迫る中、彼らは仲間たちと共に闇の狂団を倒し、戦争を止めることができるのか?本作の良かったところ
私は『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』が大好きだ。なのでこの映画が好きな理由は鑑賞者ならわかるはずだ。どちらもマシュー・ボーン監督作品であり、「世界史の中に◯◯が存在していたら」を描く。だからこそ世界史を人並みに学び、好きだからこそ今日まで知識をあまり忘れずにいる人間のツボを刺激する。
今までの『キングスマン』シリーズと主役が異なり、キングスマンの始まりを描く。だからこそ「どうなるのだろう」という不安もあったが杞憂だった。
アクションもさすが『キングスマン』シリーズ、そしてマシュー・ボーン監督だ。テンション上がりまくりのお祭りアクションに「いいぞ!もっとやれ!」と思わずスクリーンに叫びたくなる。
高カロリーの料理を出されるも、そこには大好物しか存在しない。そんな映画だ。つまるところ、「これぞ映画だ!最高だ!」ということだ。
第3位:007 ノータイム・トゥ・ダイ
ストーリー概要
ボンドは現役を退きジャマイカで穏やかな生活を満喫していた。しかし、CIA出身の旧友フェリックス・ライターが助けを求めてきたことで平穏な生活は突如終わってしまう。 誘拐された科学者を救出するという任務は、想像以上に危険なもので、やがて、それは脅威をもたらす最新の技術を保有する黒幕を追うことになるが――本作の良かったところ
賛否あるようだが、私はダニエル・クレイグになってからの硬派でシリアスな007が大好きだ。特に『スカイフォール』『スペクター』が大好きであり、ダニエル・クレイグ版ボンドの最後はどうなるものかと今作への期待は最上に達していた。その期待に本作は応えてくれたのはもちろん、まさか涙を流すとは思わなかった。
予想外の結末を知ってから物語を改めて思い返すと、結末へ向かう(今で言う)「エモい」伏線が複数張られていた。2度目はその伏線に気付く度に涙腺がゆるみ、「ありがとう、ボンド」と心の中で何度も思った。
「昔、こんなジェームズ・ボンドがいてね」なんて何年経っても語ることになるだろう。マドレーヌ・スワンのように。
第2位:花束みたいな恋をした
ストーリー概要
東京・京王線の明大前駅で終電を逃したことから偶然に出会った大学生の山音麦<やまねむぎ>(菅田将暉)と八谷絹<はちやきぬ>(有村架純)。 好きな音楽や映画がほとんど同じで、あっという間に恋に落ちた麦と絹は、大学を卒業してフリーターをしながら同棲を始める。拾った猫に二人で名前をつけて、渋谷パルコが閉店してもスマスマが最終回を迎えても、日々の現状維持を目標に二人は就職活動を続けるが──。本作の良かったところ
ドラマ部門の記事で「大豆田とわ子」を大絶賛しているが、この作品も同じく坂元裕二脚本だ。「大豆田とわ子」も本作も、決してドラマティックな事は起きない。難病に苦しむヒロインはいないし、大災害で引き裂かれる恋人たちもいない。そこにいるのは現実にいそうな人々であり、本作では若い男女だ。
2人の恋は至って普通だ。決して同じ体験をした事があるわけではないが、「同じような体験」はした。その「ような体験」を感じることができる=琴線に触れるということであり、エモい体験とはまさにこのこと。
逆に、そう感じないと本作は「何か普通の男女の話で何も起きなかった」で終わってしまうだろう。何も感じないか、席から立てなくなる体験となるか。そこは人それぞれだろう。
私は後者であり、もうそうなったら「もう一回観ると心がエグラれそう。でも、もう一回観たい」という情緒不安定になってしまうのだ。
ディスってるように感じるかもだが、全面的に褒めてる。だって2位なのだから。
第1位:ドント・ルック・アップ
ストーリー概要
天文学専攻のランドール・ミンディ博士(演:レオナルド・ディカプリオ)は、落ちこぼれ気味の天文学者。ある日、教え子の大学院生ケイト(演:ジェニファー・ローレンス)とともに地球衝突の恐れがある巨大彗星の存在を発見し、世界中の人々に迫りくる危機を知らせるべく奔走することに。仲間の協力も得て、オーリアン大統領(演:メリル・ストリープ)と、彼女の息子であり補佐官のジェイソン(演:ジョナ・ヒル)と対面したり、陽気な司会者ブリー(演:ケイト・ブランシェット)によるテレビ番組出演のチャンスにも恵まれ、熱心に訴えかけますが、相手にしてもらえないばかりか、事態は思わぬ方向へー。果たして2人は手遅れになる前に彗星衝突の危機から地球を救うことが出来るのでしょうか!?本作の良かったところ
「彗星が地球に衝突しそう!でも学者の話を誰も信じない!」まるで世界中でコロナが流行る前のようなシチュエーションで、ガチで彗星が衝突するのがこの映画だ。
監督の名前はアダム・マッケイ。知ってる人からすると「なるほど」と映画のテイストを想像することはできるだろう。
コメディ作品『俺たちニュースキャスター』を始めとした『俺たち〜』シリーズで名を高めると、その後『マネー・ショート 華麗なる大逆転』と『バイス』ではアカデミー賞作品賞にノミネートもされた。
『マネー・ショート 華麗なる大逆転』ではリーマンショック、『バイス』ではチェイニー元副大統領という硬派な題材を扱ったが、どちらもブラック・コメディだ。硬派な題材で縦横無尽に遊びまくる。それがアダム・マッケイ監督の真髄なのだ。
本作は現実に起きたことを題材とはしていないが、「現実を見ようとしない上流階級や政治家」への風刺なのは間違いない。コロナ禍前からの企画かどうかは定かではないが、コロナ禍を経験した我々は「フィクションだけど現実じゃん」となるのだ。
これを説教臭く描かれるとプロパガンダ的な意味合いでも嫌気がさすが、エンタメに落とし込んでいるのでたまらない。
特に私は、アダム・マッケイ監督も『マネー・ショート 華麗なる大逆転』も大好きだからこそ「またやってくれた!素晴らしい!」と拍手を送りたい。
文句なしで2021年のベスト映画だ。
最後にヤバい予告編を紹介して、このまま本記事を閉じとしたい。
(文:柳下修平)
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