(C)諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会
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アニメ

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2022年06月18日

【WIT STUDIO×荒木哲郎監督】アニメ業界に旋風を巻き起こした“10年”の歩み

【WIT STUDIO×荒木哲郎監督】アニメ業界に旋風を巻き起こした“10年”の歩み


2022年6月1日に創立から10周年を迎えたWIT STUDIO(以降「WIT」と表記)。今や日本を代表するアニメーション制作会社と言っても過言ではない。

10周年を記念して、スタジオ設立から2022年までに制作されたWIT作品のカットを繋げた「10周年記念PV」が作られた。


『WIT STUDIO 10th Aim Higher』 WIT STUDIO 10th Anniversary Special Video

これまでのWITの歩みがぎゅっと凝縮されていて、観ていて感慨深い。別作品のカット同士を繋げていても、どこかに「WITらしさ」がある。

だが、この「WITらしさ」は、すぐに誕生したわけではないだろう。10年の歴史の中で「らしさ」を育くみ、受け継がれてきたのだと思う。

数あるWIT作品の中でも印象的なのは、荒木哲郎監督との共作だ。これまで、WITを代表する数作品を一緒に作りあげている。

本記事では、WITと荒木監督がタッグを組んだ作品を紹介しつつ、WITの歴史を振り返っていきたい。

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「進撃の巨人」大人気コミックの見事なアニメーション化


(C)諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会

WIT×荒木監督の歩みは、「進撃の巨人」(2013)から始まる。そもそも、WITが設立してから初めて手掛けた作品が「進撃の巨人」である。WITの代表取締役社長・和田丈嗣、取締役・中武哲也、浅野恭司の3人とも、転機となった作品で『進撃の巨人』を挙げている(※)。

当時「別冊少年マガジン」で連載中だった大人気コミック・「進撃の巨人」(諫山創)。不可解な巨人の恐ろしさや立体機動装置で自由に駆け回る様子を、アニメではどう描かれるのか?と誰もが注目していた。


(C)諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会

2013年4月から放送スタートしたアニメ「進撃の巨人」では、漫画では表現しきれない些細なニュアンスまで見事に映像に落とし込んでいた。人類と巨人の圧倒的な力の差を見せつけられ、人類の弱さや命の脆さを実感した。だが「いつか巨人に勝てるかもしれない」人類の強さや覚悟もしっかりと描かれていたため、絶望と同時に、希望も垣間見えた作品である。

WITが手掛けた「進撃の巨人」は、アニメーション業界に新しい風をもたらしたと言っても過言ではないだろう。不気味でおぞましい巨人、人々の日常を守る巨大な壁、そして、人類の飛躍を可能にした立体機動装置……。


(C)諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会

全てが斬新で、衝撃的なアニメーションだった。とくに人類が巨人に食べられる描写は、トラウマになるほど。だが、目を背けたくなるような残酷なシーンが存在することによって、人類が巨人を倒すシーンが引き立つ。

巨人を相手に、立体機動装置を駆使して次々と駆逐していく描写は、観ていて胸がすっとした。何よりも、立体機動装置で空を飛ぶ人類は、巨人や壁の抑圧から解放され、生き生きとした姿を見せていた。WITが描く繊細な人間描写は、いつも心を揺さぶってくるのだ。



「進撃の巨人」のWITの功績は、「進撃の巨人 The Final Season」以降、「呪術廻戦」「ユーリ!!! on ICE」などを手掛けるアニメーションスタジオ「MAPPA」に引き継がれた。

MAPPAが手掛ける「進撃の巨人」からも随所にWITの面影を感じる。とくに「進撃の巨人 The Final Season」第81話「氷解」の、104期生が立体機動装置を使って巨人に向かう場面が印象的だった。

キャラクターたちの躍動感やカメラワーク、そして挿入歌に澤野弘之の「Barricades」が使われていた点からWITへのリスペクト精神を感じられた。



手掛けている会社が異なるからこそ、技術や想いが引き継がれていると感じるカットにグッとくる。

これからもWITの技術や魂は、アニメーションを通して後世に受け継がれていくだろう。

>>>作画会社がWITからMAPPAに引き継がれた際のコメント

「甲鉄城のカバネリ」大人気オリジナル作品


(C)カバネリ製作委員会

「甲鉄城のカバネリ」(2016)は、「進撃の巨人」の次に作られたオリジナル作品だ。

舞台は、噛みついた人間をウイルス感染させ、同族に変える不気味な怪物・「カバネ」が蔓延る世界。カバネに噛まれた青年・生駒が半分カバネ、半分人間の「カバネリ」となって装甲蒸気機関車に乗車する人々とともにカバネと戦っていく物語である。

「カバネ」という絶対的な人類の敵がいながらも、恐怖からカバネに噛まれたと思わしき人物に銃口を向け、時に殺してしまう人間の愚かさや弱さを描いていた。「銃口を向ける相手を間違っている」生駒が何度も叫ぶこの発言は、まさに人間の弱さを批判している。


(C)カバネリ製作委員会

本作品で印象的なのは、アクションシーンである。

とくに、2話の無名のバトルシーンは、これまで何度も人類がカバネに殺され、絶望的だった状況に光を与えた。アクション同士を繋げると一つの線になるかのように、無駄な動きを入れず、リズミカルに圧倒的な数のカバネを仕留めていく。軽やかに戦っている無名の様子は、劇中に流れている挿入歌、mpiの 『Warcry』も相まって、観ていて心地よかった。人類にも生きる希望はある、と思わせてくれるほど、圧巻なバトルシーンだった。


(C)カバネリ製作委員会

「進撃の巨人」と通じているのは、得体の知れない「敵」に、弱い立場の人類が立ち向かい、わずかな希望を持って挑み続ける描写である。主人公の生駒も無名も、家族や仲間をカバネリに奪われている。その悲しさや、自分は助けられなかった「後悔」が彼らの原動力であり、生きる目的でもあるのだ。

「強い者が生き残り、弱い者が死ぬ」という美馬の考えを強く批判し、「カバネを滅ぼして、田んぼも駅も全部取り戻す」という目標を抱く生駒を、いつの間にかみんなが応援している。絶望的な状況の中でも楽しみを見つけ、諦めない姿勢が、視聴者を含めて多くの人の心を揺さぶるのだ。

『バブル』全世界に向けて配信された新たな試み


(C)2022「バブル」製作委員会

『バブル』(2022)は、『甲鉄城のカバネリ 海門決戦』(2019)以来、3年ぶりとなるWITと荒木監督の共同作品。WIT創立10周年という節目に作られ、Netflixで全世界に先行配信後、300館以上の劇場で公開するという新しい試みに挑戦した作品である。

物語は、原因不明の降泡現象によって崩壊した東京を舞台に、若者たちが「パルクール」という競技で競い合い、生活物資獲得を懸けて競い合っているところから始まる。


(C)2022「バブル」製作委員会

『バブル』が「進撃の巨人」や「甲鉄城のカバネリ」と大きく異なるのは、人魚姫をモチーフにしたラブストーリーである点だ。登場人物たちはパルクールに命を懸けているが、死んだり、殺されたりすることはない。

崩壊した東京タワーから聴こえてくる「とあるハミング」の正体を探している最中に海に溺れた主人公・ヒビキを謎の少女・ウタが助け、物語は大きく動く。聴覚過敏のためヘッドホンが手放せず、仲間たちとも距離をとっているヒビキと、言葉を上手く話せないウタは、不器用ながらも徐々に心を通い合わせていくのだった。


(C)2022「バブル」製作委員会

“セリフをなるべく使わず、エモーションに訴えることを意識した”という荒木監督の言葉通り、うっとりするくらい美しい絵が何カットも登場した(※)。

そのひとつに、「メイクアップ」のカットが挙げられる。「メイクアップ」とは、動くキャラクターに対して美麗な効果を施す技法で、前述した『甲鉄城のカバネリ』から取り入れられている。「DEATH NOTE」や「バクマン。」などを手掛けた漫画家・小畑健が原案を務めた美しいキャラクターたちのビジュアルがアップで映ると、何度も心がトキめいた。


(C)2022「バブル」製作委員会

また、『バブル』の中で印象的だったのは、自由自在に飛び回るキャラクターたちの様子である。瓦礫やバブルに軸足を置き、思い思いに宙を舞う様子は、「進撃の巨人」の立体機動装置を身につけて巨人と戦うエレンたちに似ている。

そこに、WITの伝統を感じて、思わず胸がアツくなってしまった。

若者の葛藤と希望を描いてきたWIT×荒木監督作品


(C)2022「バブル」製作委員会

「進撃の巨人」と「甲鉄城のカバネリ」は、巨人やカバネなど、圧倒的な「敵」が存在する一方、『バブル』は、明確な敵が存在しない。だが、キャラクターたちが苦しそうという意味では、3作品とも共通している。

『バブル』では、ヒビキは聴覚過敏で、ヘッドフォン無しではまともな生活を送れない。また、パルクールの参加者は、みんな「孤児」であり、複雑な環境で育ってきた若者なのである。

WITと荒木監督が描く世界では、人類はいつも苦しそうな状況まで追い込まれている。だが、それでも彼らは必死に生きて、より良い未来を手に入れるためにもがき続ける。その姿が希望となり、筆者含めて多くの人の心を救っている。そこに、WITの魅力があるのだ。

10周年経っても、実写映画やストップモーションアニメなど、常に新しい絵作りに挑戦し続けているWIT。世界を驚かせるような作品が再び生まれる日は、そう遠くないだろう。

(文:きどみ)

※参考書籍:「月刊ニュータイプ2022年6月号」


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