タイカ・ワイティティの魅力とは?無邪気な天才&奇才な人物像

タイカ・ワイティティ監督作品:長編

ここからは、タイカ・ワイティティ監督が手がけた長編7作品と、短編(CMも含む)・ドラマ・今後の待機作を紹介する。


■イーグル VS シャーク(2007)



監督の長編デビュー作『イーグル VS シャーク』は、変わり者の男女によるロマンティックコメディだ。

ファストフード店で働くリリーと常連客・ジャロッドとの不器用な恋愛模様を中心に、おかしくも愛おしい人々の物語が描かれている。


ジャロッドの家族とリリーの交流や、ジャロッドといじめっ子の因縁の戦い。意外な事実が明らかになるクライマックス以降は、人生のほろ苦さも感じられる。

時折挟まれるストップモーションアニメや某有名アーケードゲームのパロディ映像など、遊び心の溢れる映像も並び、監督のセンスが光る名作となっている。

■ボーイ(2010)



『ボーイ』は監督の短編『夜の車/トゥー・カーズ、ワン・ナイト』(後述)を基にした長編映画だ。

祖母の家で暮らす少年・ボーイが出所した父・アラメインとの交流を通して成長する物語。

主人公が自己紹介をする冒頭や手書きアニメーションなど、前作に引き続き、監督の才気溢れる演出は健在だ。

理想の父親と現実のギャップに直面するボーイ。その姿は、まさしく『ジョジョ・ラビット』の主人公・ジョジョの原型とも言える。両作ともに主人公の手本となる大人(今回は父親)を監督本人が演じているのも共通だ。

また、物語には監督自身の父への思いが感じられる。マオリ文化や主人公と父との関係性などは彼のルーツそのものであり、自伝的な一作とも言えるのだ。

マーベル映画ファンにとっては、『ソー:ラブ&サンダー』を彷彿とさせるヤギや町の看板にも注目してほしい一作だ。

■シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア(2014)




『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』は、監督によるヴァンパイア映画のパロディ短編『What We Do In the Shadows: Interviews with some Vampires』を基にした長編映画だ。

ニュージーランドの首都・ウェリントンでシェアハウス生活をするヴァンパイアたち。彼らによるユルいブラックユーモアが見所のフェイクドキュメンタリーとなっている。

コメディタッチの本作では、ダークな展開にこそ監督のカラーが光る。

生き残るためには容赦なく人間を犠牲にするヴァンパイアたちや無残な最期を迎える登場人物、さらに、クライマックスには予想外のシリアス展開が待ち受けている。

全編を通してライトな作風ではあるが、どことなく切なさを感じさせるバランスが絶妙な一作だ。

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■ハント・フォー・ザ・ワイルダーピープル(2016)




『ハント・フォー・ザ・ワイルダーピープル』は、孤児・リッキーと里親・ヘクターが思わぬ出来事により、警察に追われることになるロードムービーだ。

過去作に続いて、個性的なキャラクターたちの魅力はもちろん、ニュージーランドの大自然を活かした豊かなロケーションには圧倒される。

ヒューマンドラマからサバイバルもの、ロードムービーや逃走劇といった複数のジャンルを横断しつつ、10章構成にまとまった脚本に惹きこまれる一作だ。

ぶつかりあいながらも信頼関係を築くリッキーとヘクターのコンビは、『マイティ・ソー バトルロイヤル』におけるソーとロキの関係性にも通じている。

■マイティ・ソー バトルロイヤル(2017)




『マイティ・ソー バトルロイヤル』は、監督の出世作となった記念すべき一本だ。

過去にマーベルアニメを多数手がけた脚本家・クレイグ・カイルとクリストファー・ヨストによるシナリオに、コメディやアドリブ演出を得意とするタイカ・ワイティティの作家性が見事に融合。

ファンにはたまらないサプライズ要素や、シリーズのキャラクターたちに待ち受けるドラマティックな展開が印象深い一作となった。

特に主人公のソーには壮絶な運命が待ち受けており、このダークさにこそ、タイカ・ワイティティ作品の真骨頂が感じられるのではないだろうか。

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■ジョジョ・ラビット(2019)




『ジョジョ・ラビット』はアカデミー賞6部門にノミネートされ、脚色賞を受賞したタイカ・ワイティティ監督の代表作である。

ヒトラーそっくりのイマジナリーフレンド(空想上の友達)がいる気弱な少年・ジョジョを主人公に、第二次世界大戦に翻弄される人々や親子愛を描いた感動のヒューマンドラマとなっている。

「父と子」を描いた『ボーイ』とは対になる「母と子」をテーマにした本作で、監督は自身の思いを反映させた。

実は本作の元ネタである小説「Caging Skies」(原題)は、監督がユダヤ系ロシア人の母から与えられたもの。

過去のインタビューで「(幼少期には)まるでピエロのように世界を明るくしてくれた」と母への感謝も述べており、普遍的な戦争ドラマでありながら、監督自身のドラマにもなっているのだ。

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■ソー:ラブ&サンダー(2022)


『ソー:ラブ&サンダー』は前作に引き続き、タイカ・ワイティティがメガホンをとった「マイティ・ソー」シリーズの第4弾。

第3作と異なり、脚本も担当することになった本作では、よりタイカ・ワイティティ節が炸裂する内容となった。

他のマーベル作品と繋がるサプライズは控えめに、あくまで雷神“ソー”の物語にフォーカスした物語では、シリーズの人気キャラクターも復活。

特に過去2作のヒロイン“ジェーン・フォスター”が、新ヒーロー“マイティ・ソー”として登場したことは多くのファンを驚かせた。

子供たちの描写や切なさが残る結末には監督作に共通するテーマも浮き彫りになっており、シリーズ史上最もパーソナルな魅力が感じられる一作となっている。

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