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2023年04月23日

<かしましめし>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

<かしましめし>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】


©「かしましめし」製作委員会

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おかざき真里の同名漫画を原作としたテレビ東京のグルメドラマ「かしましめし」が放送スタート。前田敦子、成海璃子、塩野瑛久が演じる、人生につまずいたアラサー男女3人がどんな日も美味しく“かしましく”ご飯を食べる模様を映し出す。

CINEMAS+では毎話公式ライターが感想を記しているが、本記事ではそれらの記事を集約。1記事で全話の感想を読むことができる。

もくじ

・第1話ストーリー&レビュー

・第2話ストーリー&レビュー

・第3話ストーリー&レビュー

・第4話ストーリー&レビュー

・第5話ストーリー&レビュー

・第6話ストーリー&レビュー

・第7話ストーリー&レビュー

・最終話ストーリー&レビュー

・「かしましめし」作品情報

第1話ストーリー&レビュー

第1話のストーリー


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上司のパワハラで心が折れ、仕事を辞めた千春(前田敦子)。婚約破棄されたばかりのナカムラ(成海璃子)。恋人との関係がうまくいかないゲイの英治(塩野瑛久)。同級生の死をきっかけに再会したアラサーの3人は、それから定期的に集まっては一緒にご飯を食べるようになり…。仕事でやりきれないことがあっても、恋愛で挫けても、美味しいごはんをみんなで分け合えば救われる。そんな3人の、愛おしく“かしましい”日常生活。

第1話のレビュー

©「かしましめし」製作委員会

突然だが、おかざき真里の漫画が好きだ。

仕事、恋人、友達、副業、お酒……。そこにはいつも何かしらに心の拠り所を見つけ、生き延びようとする人々の姿がある。ここで大事なのは、それが「生きるために」という積極的目標ではなく、「生き延びるために」という消極的目標のための営みであるという点だ。

死に向かっていく自分を仕事をすることで、友達とお酒を飲みに行くことで、どうにかこの世に留まらせる。そう聞くと何やら後ろ向きに感じるかもしれないが、裏を返せば、それだけ人は弱い生き物ということだ。本来は誰しも生き延びるだけで精一杯。今日も生き延びた。それだけで十分だと、おかざき真里の漫画は教えてくれる。

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もちろん、中には生き延びることができない人もいる。おかざき真里の漫画「サプリ」には、水原という恋人の裏切りをきっかけに自ら死を選ぶ女性が登場する。初めて読んだときは衝撃だった。直近まで活き活きと仕事をしていた人が“恋人”という手綱を失った瞬間、濁流に巻き込まれていく姿があまりに生々しくて。

前置きが長くなってしまったが、この水原というキャラクターがあのままもし死なずに生きていたら?と思って描いたのが、今回ドラマ化された「かしましめし」の主人公・千春(前田敦子)だという。

上司からのパワハラにより心が折れ、憧れの会社を辞めたデザイナーの千春。退職後、とにかく何かをしなければという思いに駆られる彼女だが、それはきっと生存本能だろう。

何もしなければ、自分の存在を否定する声にいつか殺されてしまう。彼女もまた水原と同様に死へと向かっていくが、息をするのを忘れてしまうほど無心になれる料理に活路を見出したことにより、首の皮一枚でこの世界と繋がった。

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ただ、それだけでは不十分で、千春は栄養たっぷりのご飯を作れても自分一人でそれを食べるのは違う気がしてジャンクフードに手を出してしまう。自分を価値ある人間として大事にできないと、そうやって自分で罰を与えてしまうのだ。千春には料理ともう一つ、一緒にご飯を食べてくれる人たちが必要だった。

その人たちと千春が出会ったのも、自ら命を絶った元彼・トミオの葬儀会場である。同じ美大に通っていたナカムラ(成海璃子)と英治(塩野瑛久)に再会を果たす千春。不謹慎にも二人と会話して久しぶりに笑うことができた彼女は自分の家に彼らを招くことに。食事中、無理に笑顔を作って自分は仕事を辞めたから毎日が日曜日で楽しいのだと語るが、どうしても涙が溢れてしまう千春の姿が胸を打つ。

正直言って、千春役が前田敦子だと発表された当初は違和感があった。だけど、このシーンを見た時に千春役が前田敦子で良かったと思った。頭と心と身体がどれも帳尻合わないあの感じを見事にありのまま表現してくれる。

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物語中盤、ゲイで、トミオとも付き合っていたことがある英治がこんなことを言う。

「演じ続けなあかんねん。人生は楽しいって。そうせんとな、僕みたいな生き方は認めてもらえへんから。何があっても楽しそうに見過ごしたりやり過ごしたり、トミオもこんな風に思ってたんかな」

多分私たちは少なからず、英治と同じように楽しそうな自分を演じている節がある。特に大人はみんな自分の気持ちを隠す名役者だ。ナカムラが言うように最初から寂しいと言えたら楽なのに言えない。千春のように本当は苦しいのになぜか口では楽しいと言っちゃう。そうでなければ惨めだから。


©「かしましめし」製作委員会

だから、時々見逃してしまうのだ。急に閉店したお店のように気づいた時には跡形もなくその人は消えていて、もうその人が何を考えていて、どういう人だったのかも分からなくなる。

そんな怖いことが二度と起きないように、千春たちは共にご飯を食べる。無理に全てを分かち合う必要なんてない。ただ楽しい自分を演じることなく、栄養のあるご飯を一緒に美味しい、美味しいと言って食べる。一日の終わりにそんな時間が過ごせたら、人はそれだけで明日に進めるから。

泣きたくなるほどの優しさを携えたこのドラマもきっと、誰かが生き延びるための手綱となる。



※この記事は「かしましめし」の各話を1つにまとめたものです。

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