「日曜の夜ぐらいは...」第9話:サチたちが作り上げた“小国”に見る理想の世界
主演に清野菜名、共演に岸井ゆきのと生見愛瑠が名を連ねる連続ドラマ「日曜の夜ぐらいは...」(ABCテレビ/テレビ朝日系)が2023年4月30日よりスタート。脚本家の岡田惠和が、あるラジオ番組がきっかけで出会った女性3人のハートフルな友情物語を紡ぐ。
本記事では、第9話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。
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「日曜の夜ぐらいは...」第9話レビュー
カフェ「サンデイズ」のオープンも目前。サチ(清野菜名)と邦子(和久井映見)が暮らす団地に翔子(岸井ゆきの)とみね(岡山天音)が引っ越してきて、ついに全員が一つの場所に集合した。
サチは4階で翔子と若葉(生見愛瑠)、みねは3階で一人、邦子は1階で富士子(宮本信子)と、それぞれ新しい生活を送る。とはいえ、階段一つで行き来できる距離にいる彼らはもはや大所帯の家族。あまりに楽しそうで「羨ましい……」と思わず声に出てしまった。
それに伴い、邦子はサチに「ごめんね」と言わなくなる。サチが高校生の頃に不慮の事故で車椅子生活になった邦子。博嗣(尾美としのり)は何もしてくれず、サチは学校を辞めて働く他に選択肢はなかった。
邦子は普段努めて明るく振舞ってはいるけれど、内心ではずっと娘の人生を奪ってしまったという罪悪感を抱えていたのだろう。なるべくサチの手を煩わせたくなくても一人で出来ないことも多くて、ついその一言が出てしまう。だけどサチ本人は犠牲になっているつもりなどないから悶々としてしまっていた。
邦子が「ごめんね」と言わなくなったのは、サチが以前とは違って楽しそうにしているからだけじゃない。自分にもできることがあると気づいたからだ。美味しいカレーを作る才能はカフェのメニュー開発に活かされ、その無著でお喋りな可愛らしい性格がみんなを癒してくれる。富士子もそう。二人がそこにいてくれるだけで、自分の家族と折り合いが悪い翔子やみねの心が満たされていく。
いつも感心させられるのは、サチの人を見る力だ。相手がどんな人で、何を思っていて、何が得意で何を苦手とするか。本人は無自覚かもしれないが、そういうのを見極めて役割を与えたり、自分の振る舞い方を決めるのに長けている。例えば、翔子がグループ内での疎外感に敏感なのを分かっているから、サプライズ一つとっても絶対に内緒話はしない。
彼女はいわば、“サンデイズ”という小国の長だ。長といってもかなり民主的で、全員が心地よく暮らせるようにみんなでルールを定める。みね独占禁止法はその分かりやすい例だろう。恋愛でのいざこざ、社会的な立場の違いによる対立やすれ違いを「まるで遠い国の出来事みたい」と語るサチ。彼女たちはそういうものから自由であろうとしている。
第9話はそんな自分たちの国と民を守るために、邦子とみねが立ち上がった回でもあった。博嗣がサチにお金をせびっていることを知った邦子は、彼に直接会って話をつける。「悪い方へ悪い方へ転がっていくんだ」と力なく呟く博嗣に、「自分の力でなんとかしなさい」と吐き捨てる邦子。博嗣には博嗣なりの事情があるのだろう。だけど、それは博嗣が自分で切り捨てたサチや邦子には全く関係のないことだ。
一方、みねは博嗣やまどか(矢田亜希子)の存在に怯えるサチと若葉にこう言う。
「どんな理由があっても大切な人を苦しめる人は敵とみなします。全ての人が守れるとは思えないので、大切な人だけ守ろうと思います」
世界人口約80億人。その全ての人と分かり合えるわけもなく、私たちは誰かを傷つけたり誰かに傷つけられたりしながら生きている。そんな中で、自分の味方しか存在しない小さな国(コミュニティ)を作り上げてきたサチたち。そこでは年齢や性別、障害の有無を問わず、誰もが安心して生き生きと暮らしている。
もしかしたら、私たちは今このドラマを通じてとても理想の世界を見ているのかもしれない。だとしたら、自分たちの国を守るために富士子が手に取ったスタンガン(=武器)は使われることなく、どうか平和的なラストを迎えてほしい。それはきっとここまで彼らを見届けてきた全員の願いだ。
(文:苫とり子)
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