インタビュー

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2023年06月30日

内田英治監督も太鼓判!『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』で見せた、久保史緒里(乃木坂46)の女優適性

内田英治監督も太鼓判!『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』で見せた、久保史緒里(乃木坂46)の女優適性


客観視する世代=久保が見た“歌舞伎町”

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──映画には「時代を記録する」という側面もありますが、そういう意味で『探偵マリコ〜』は令和年間の歌舞伎町の空気感を後年に残す役割も果たしたように感じます。


内田:そうですね、片山慎三(監督)と僕とで「ライトタッチなノリ」でつくった映画ではあるんですけど、描いている事象は日本社会の縮図的な問題でもあって。問題提起を前面に押し出しているわけではないんですけど、映画を観ているうちに「なんで、今の日本でこんなことが起こってしまうんだ?」といったことを観ている人が感じてくれたらいいな、と考えている部分もあります。かつてはアメリカン・ニューシネマを観て、アメリカ社会の病巣的なものを垣間見たりしましたけど、『探偵マリコ〜』を観て、「そういう見方もできるのか、こういう考え方もあるのか」といったことに意識が向くと、作り手としてはうれしいですね。

久保:自分たちの世代、と一括りにするのは良くないのかもしれないですけど、いま起こっていることを客観視して他人事のように捉えてしまう傾向がある気がしなくもないんです。ニュースを見ていても、「自分とは無関係だから……」と思ってしまったり──。

それこそ、想いを寄せるホスト中心の生活をしている絢香のことも、「自分とは住む世界が違うから」っていう見方をしているところが私にもあったんですよね。でも、絢香の人生を生きてみて、そういう自分自身に対してある種の危機感を抱いたと言いますか……。そして試写を観て──背筋が伸びるじゃないですけど、決して他人事じゃないなという思いを新たにしました。絢香に限らず、映画に登場してくる歌舞伎町の人たち1人ひとりと自分も、いつどこで糸がつながったとしても不思議なことじゃないんだっていう考え方が、少しだけできるようになったような気がしています。

内田:聞いていて思ったんですけど、客観視する世代というのはSNS文化の功罪でもあるわけですよね。事件や問題が起こったときも、SNSを通じて情報として受け取り、SNS上でどう感じたかを共有し合って完結してしまうから、現実に起きているという実感がないのかもしれないな、と。でも、役づくりのためにマネージャーさんと実際に歌舞伎町へ足を踏み入れてみたら、SNS上では見えない部分や感じられない空気、温度といったものに触れられるわけじゃないですか。

久保:はい、本当におっしゃる通りでした。

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内田:絢香という役には元々シンパシーを感じる部分があったけれども、実際に皮膚感覚で歌舞伎町という街の空気を感じることで、よりリアリティーをもって捉えられるようになったのかなって。その経験は役者としてはもちろん、アイドルとしても1人の人間としてもプラスになったんじゃないかなと、勝手に思ったりしました。僕らの世代はあんまり客観視できないから、なおさら久保さんたちの感覚が興味深く思えるんですよ。若い頃にSNSがなかったから、情報が乏しくて。だから自分から何かしら行動を起こして、体験しに行かざるを得なくて。その分、実際に経験したときの感情の揺れ幅が大きかったけれども。

久保:情報として受け取った時点で、どこか分かったつもりになっているから、感情の動き方も小さくなっているのかもしれないなっていう怖さも、何となく自分の中にあるんです。便利な反面、そういう寂しさを感じていたりもしますね。だから、というわけじゃないですけど、歌舞伎町に実際に行ってみたときの衝撃は……想像以上に大きかったです。路地の角を曲がるたびに新しい光景が広がっていて、「わっ!」「おぉ〜!」って感情が動くっていう(笑)。それは自分の人生史における、ちょっとした事件でした。

内田:いい歳をした僕でさえ、歌舞伎町は行くたびに「ワッ!」と思ったりするからね(笑)。世界中を見ても、ちょっと特殊で異様な街だと思う。深夜になるほど輝きを増す街って、ちょっとほかにはないかな。

久保:なので、撮影で朝の歌舞伎町へ行ったとき、夜との違いに驚いて。そのギャップもふくめて、不思議な街だなと感じました。

内田組・片山組を経験して


──確かに。ちなみに、久保さんは片山慎三監督の演出したエピソードにも出ていらっしゃいますが、内田監督の座組ともども、率直にどのような感触を得ましたか?


久保:衣装合わせのときに片山監督ともお会いして、お話をさせていただいたんですけど……内田監督ともども、お二方の頭の中がどうなっているのかが、すごく興味深くて。そうですね……片山さんの演出されたエピソードで言うと、新宿歌舞伎町のバー「カールモール」でロケをしたんですけど、その日は竹野内豊さんもいらっしゃって。その場でどんどん片山さんが竹野内さんに忍者の要素を足されていったんですけど(※竹野内豊演じるMASAYAは、自称“伊賀麻績新陰服部流”の後継者)、「私は今、すごく貴重で面白い瞬間に立ち会っているのかもしれない!」と、妙にテンションが上がっていくのを感じました。

内田監督の現場と共通しているのは、今まで経験したことのない場に立てたことはもちろん、目にしたことのない光景を目の当たりにできたことですね。緊張で始まり、緊張したままクランクアップしてしまったという悔しさのような感情もあるんですけど、ほかの作品では得られなかったであろう貴重な経験の数々は、これからの自分の活動に必ず活きてくると思います。

内田:ただ、キャスティングしておいてアレですけど、役者を始めて間もない人が立つには濃すぎる座組ですよね。僕のところも片山のところも(笑)。いきなりハードコアな世界を経験しちゃったから、今後は楽になっていくかもしれない。もしくは物足りなく感じちゃうか(笑)。

久保:そうか、そういう捉え方もあるんですね(笑)。

内田:まだ詳しくは明かせないけど、新たに久保さんとご一緒したところでも僕が演じてほしいものを見事にやりきってくれて。これは情報解禁を楽しみにして待っていてほしいんですけど、何にしても“アイドルだから”みたいな前置きは取っ払って語るべきですよね、少なくとも久保史緒里という人に関しては。そもそもアイドルは感受性が豊かな人たちなので、チャレンジをしてもらったほうが想像を超えてくれる気がしていて。逆に役者としてのキャリアが長い人に、本来アイドルの方をキャスティングする役を演じてもらうのもチャレンジだと思いますし。そういった組み合わせが面白いのかなというのが、僕の見方です。でも、お世辞じゃなくて本当に久保さんの今後が楽しみ。手の届かないところに行ってしまいそうだけど。

久保:わ、わ、本当にありがとうございます……。

内田:乃木坂一の演技派の評判は伊達じゃなかったね(笑)。

久保:も〜、そのフレーズはやめてくださいっ(笑)。本当に恐れ多いので……。

(スタイリスト=林かよ/ヘアメイク=森柳伊知/撮影=Marco Perboni/取材・文=平田真人)

<衣装協力=ワンピース¥29,700(ジル スチュアート)>

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