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2023年08月09日

<ハヤブサ消防団>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

<ハヤブサ消防団>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

最終話ストーリー&レビュー

最終話のストーリー

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“随明寺”住職・江西佑空(麿赤兒)が“聖母アビゲイル教団”を受け入れたことにがく然とする、ミステリ作家・三馬太郎(中村倫也)。その矢先、太郎たち消防団は近々、教団が“聖母降臨”の儀式を行う予定だと知る。彼らは発足以来、江西の亡き妹である山原展子(小林涼子)を神格化し“聖母”として崇めてきたが、その後継者として新たな聖母を擁立する計画を企てているようだった。太郎は、その“新聖母”こそ、立木彩(川口春奈)だと直感。そして、儀式は皆既日食の日に開催されるに違いないと推理する。

ハヤブサ消防団は、儀式を阻止しようと一致団結。急きょ東京から駆けつけた中山田洋(山本耕史)はこれ以上踏み込むのは危険だと心配するが、太郎は「ハヤブサは僕らハヤブサ分団で守らなければなりません」と宣言。一同も大きくうなずく。

そして儀式当日――。太郎は作家である自分にしかできないある方法で、彩を止め儀式を制止しようとするが、はたして太郎の言葉は彩に届くのか…!?  このままハヤブサは教団に乗っ取られてしまうのか!? ついにハヤブサに襲いかかる陰謀のすべてが明らかに…!


最終話のレビュー

円の調和を乱す者にはシャクナゲを贈ることで警告を、改めぬ者には鉄槌を食らわす。アビゲイルの信者たちは教本に従い、都合の悪い存在を排除してきた。しかし、それは聖母・展子(小林涼子)の本意ではなかったことが「ハヤブサ消防団」最終話で明らかとなる。

展子はどのような人生を歩み、なぜアビゲイルを作ったのか。教本には書かれていない彼女の過去を知るのが、随明寺住職・江西(麿赤兒)とアビゲイルの信者である映子(村岡希美 )だ。江西は展子の異母兄妹、映子は展子とハヤブサで育った幼馴染だった。

展子は江西の父親とその愛人である母との間に生まれた子供。母が崖から飛び降り亡くなった後、彼女は父親に引き取られたが、毎日のように暴力を振るわれていたという。そんな展子に唯一優しくしていたのが、兄である江西。彼は展子のことを可愛がっていたが、彼女は1年半ほどで子供のいない遠い親戚の家の元へ出されたそうだ。

新しい家でも辛い目にあった展子は、ある日一人で元の家を訪ねてきた。きっと江西のことを心から信頼していたのだろう。だが、江西は父親が怖くて手を差し伸べられず……どうやら大人になってからも、万引きや売春などの犯罪に手を染め、幸せとは言い難い人生を送っていた展子への申し訳なさと後悔に今でも彼は苛まされている。

だが、太郎(中村倫也)の家に再び訪ねてきた映子の証言で明らかになるのは、何度もくじけそうになりながらも懸命に生きる展子の姿だ。映子が大人になり再会した頃の展子は病におかされ、入退院を繰り返していた。それでもなお、厳しい環境でも育つシャクナゲのように威厳を放つ展子に映子は尊敬の念を持ち、のちに彼女が身を置くアビゲイルの門を自ら叩いて熱心な信者となったのだ。

しかし、展子はただ教団に利用されたに過ぎない。彼女が余命僅かなのをいいことに、特別な力を持った聖母として崇めた当時の幹部たち。死してもなお、信仰の対象として利用され続けた彼女が病床で願っていたのがハヤブサへの帰還だ。江西は展子の遺骨を返してもらう代わりに、アビゲイルの乗っ取り計画に協力しただけで、太郎たちを裏切ったわけではなかった。教団の異様さに気づいてしまったことで監視下に置かれた映子もまた、心を閉ざしたふりをして、じっと崩壊の日を待ち続けてきたのである。

全ての真相を知り、「ハヤブサは僕らで守らなければ」と立ち上がるハヤブサ分団。タイトルバックに太郎、勘介(満島真之介)、賢作(生瀬勝久)、郁夫(橋本じゅん)、森野(梶原善)の5人が横一列に並ぶ場面は映画『アルマゲドン』のワンシーンを彷彿とさせた。彼らはまさに、ハヤブサのヒーローだ。

本作がスタートした直後は、閉鎖空間である田舎ならではのジメッとした人間関係、そしてその結果として起こる不可解な事件が描かれると思っていた。実際にハヤブサのような山間部を舞台にした作品は、そういう田舎の負の部分を見せるものが多い。だが、このドラマは違う。過疎が進み、住民が減り、観光客がほとんど訪れない場所にも希望はあると教えてくれた。ハヤブサの希望は、不便を補うように支え合い、ともに生きる人々。その一人である勘介の「みんなと楽しく過ごせたら満足」というささやかな願いを壊す権利は誰にもない。

省吾(岡部たかし)が勘介のようには思えず、承認欲求を満たすために自ら本来あった幸せを壊すに至ったことは残念で仕方がない。だけど、心に隙が生まれる瞬間は誰にだってある。そこに付け入る人がいることが問題なのだ。杉森(浜田信也)は省吾をはじめ、競争社会からあぶれた人たちに仲間と役目を与えてきた。それ自体は決して間違ったことではないが、杉森にとって信者たちは恩に報いろうと、何でも言うことを聞く都合の良い駒でしかない。だからこそ、平気で排除できてしまうのであって、「みんな家族」という彼の言葉は詭弁だ。

「作家人生をかけて断言します。あなたに人々を救う気はない。あなたにあるのは歪んだ支配力だけです」

杉森と対峙し、そう断言する太郎。演じる中村倫也の力強い眼差し、聞き取りやすい低音、落ち着きのセリフ運びが一つに集約され、言葉一つひとつに説得力をもたらした。一方で、新聖母として擁立されようとしている彩(川口春奈)を救おうと、「山原展子の生涯」という一夜にして書き上げた脚本とともに彼女を説得する太郎からは感情が溢れ出す。作家としての知的で理路整然とした一面と、ハヤブサで出会った大切な人たちとのやりとりの中で彩り豊かな感情が溢れる人間味。対極とも言えるその2つを両立しながら、中村倫也が作り上げた三馬太郎という主人公はこの上なく魅力的だった。

そしてそんな太郎が、いつしかアビゲイルと同じくらい大切な存在になっていたという彩。「彩さんも展子さんと同じただの一人の人間」「弱くたっていいじゃないですか」「僕と一緒にいてください」という太郎の愛情あふれる言葉、そしてハヤブサという場所を守りたいという展子の執念が生み出したとも言える彼女の霊が、彩の心を変える。聖母降臨の儀式が行われる皆既日食の日、彩は防災無線を通じて「ハヤブサ地区で連続して起きた火事はユートピアを作るために私たちアビゲイルが起こした放火です」と教団の罪を告発した。

その後、暴走する真鍋(古川雄大)から彩を守り、猟銃で撃たれる太郎だったが、消防団の仲間に救い出される。「ハヤブサは僕が守る」という子供の頃の決意を太郎は果たしたのだ。

警察に連行される直前、居酒屋「サンカク」で悠々と鶏ちゃん焼きを味わう杉本の姿や、怪しい怪しいと言われていた中山田(山本耕史)が少し様子がおかしいただの善良な編集者だったこと。さらに事件から数年後、アビゲイルの残党により擁立された新たな聖母としてカメオ出演した“ちゃんみな”など、言及したい点はたくさんあるが、何よりハヤブサにかつての平穏が戻ってきたことが喜ばしい。

池井戸潤の小説に脚色を加え、事件の真相に迫っていくドキドキだけじゃなく、ハヤブサ分団をはじめ、登場人物たちのやりとりで私たちを和ませてくれた本作。個性あふれる、愛おしい登場人物たちを演じてくれたキャストたちにも大きな拍手を送りたい。またどこかでハヤブサの彼らに会いたいものである。

※この記事は「ハヤブサ消防団」の各話を1つにまとめたものです。

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