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生見愛瑠(めるる)の「ラブコメの質を上げる演技」が堪能できる名作“5選”
生見愛瑠(めるる)の「ラブコメの質を上げる演技」が堪能できる名作“5選”
“めるる”の愛称で「ヒルナンデス!」や「スクール革命」などバラエティ番組で大活躍しているイメージの強い生見愛瑠。2024年現在「CanCam」の専属モデルを務めていることもあり、彼女の肩書きは「タレント」「モデル」とされることが多い。
しかし「おしゃれの答えがわからない」(2021/日本テレビ系列)において、ドラマ初出演にして主演を担ってからというもの、出演作が連続している。
とりわけ“ラブコメの質を何段階も上げる演技”が定評を呼び、ついに「くるり〜誰が私と恋をした?〜」(2024/TBS系)でGP帯ドラマ主演を果たした。
女優・生見愛瑠の演技を堪能できる名作を5選紹介する。
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1:「くるり〜誰が私と恋をした?〜」
■これまでの実績が評価されGP帯ドラマ主演抜擢©️TBS
「くるり〜誰が私と恋をした?〜」の公式サイトに書かれたあらすじを見てみたい。
私の世界は“くるり”と変わった。記憶を失ったヒロイン・まことの手元に残された1つの男性用の指輪…指輪がピッタリとはまる3人の男たちの登場で恋の四角関係が幕を開ける!
これだけで、記憶喪失もののドタバタ系ラブコメだと思ってしまっても不思議ではない。
しかし、生見愛瑠が演じるまことのおかげで、このドラマにはいわゆる“定番ラブコメ感”がない。
©️TBS
記憶を失ったまことにとって、自分のことを知る手がかりの一つは、鞄のなかに入っていた男性用の指輪だ。指輪を足がかりにしながら、まこと自身が「緒方まこと」の人となりを探っていく。
つまり、ラブストーリーでありながら、恋愛模様だけに重きを置いていないのだ。まこと自身が、自分という人間を知る足がかりとして「記憶喪失」「指輪」などのシンボルが掲げられている。まことは、これまで働いていた職場を辞め、アクセサリーショップへ職人志望として就職している。そんな展開からも、いかにこのドラマで「指輪」が大事な象徴とされているかがわかる。
©️TBS
まことの記憶をめぐるキーパーソンとして、自称元カレの西公太郎(瀬戸康史)、自称唯一の男友達の朝日結生(神尾楓珠)、そして自称運命の相手に立候補した板垣律(宮世琉弥)が登場。それぞれのやり方で、まことが過去を思い出す手助けをするが、おそらく彼らは全員が少しずつ“嘘”をついている。
果たして、誰がまことの“本当の恋人”なのか?それとも、指輪を贈りたいと思うほど恋をしていた相手は、別にいるのだろうか?ちょっとしたミステリー要素を挟みつつ、まことがいくつかの手がかりをもとに人生を振り返り、自分を知っていく過程が描かれていく。そのバランスが秀逸だ。
©️TBS
ただのラブコメで終わらない作品の主演として、コツコツと演技の実績を積んできた生見愛瑠が抜擢されたのは、もはや必然だったのかもしれない。
▶︎「くるり〜誰が私と恋をした?〜」を観る
2:『モエカレはオレンジ色』
■泣きの演技に感じ入る泣きの演技があまりにも自然だと、否応なしに「上手いな」と思う。
名作ドラマや映画がどんどん生まれ続けるなか、鑑賞者の目線もそれなりに肥えてくるものだが、映画『モエカレはオレンジ色』(2022)でヒロイン・佐々木萌衣を演じた生見愛瑠は、自然だった。泣きの演技も含めて、どの感情表現も違和感なく、引っかかりなしに心に入ってくるのだ。
本作はタイトルやキービジュアル、キャッチコピーからして、いわゆる「キラキラ青春恋愛映画」に近いものがある。しかし、本格的に演技の仕事を初めて一年ほどの生見愛瑠が、すでに、肥えた視聴者の目を十分に満足させる水準に達していた。
そのため、キラキラ映画から一歩抜きん出たポジションに躍り出たのだ。生見愛瑠が本作をきっかけに第46回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞していることからも、演技の質の盤石さがわかる。
特筆したいのは、生見愛瑠演じる萌衣が、恋の相手・蛯原恭介(岩本照)のことを想って「BBQのあと、楽しかったな……」と泣くシーンだ。発した言葉どおり楽しかった、と思う気持ちと、決してそうは思えない自身の胸の内を攪拌させながら、必死で泣くのをこらえている様に思わず感じ入る。
前述した「くるり〜誰が私と恋をした?〜」と同様、生見愛瑠の演技によってラブコメの質が何段階も上がり、普段は同ジャンルの作品に触れない層にもリーチするきっかけになっているはずだ。
関連記事:映画『モエカレはオレンジ色』の見どころ
▶︎『モエカレはオレンジ色』を観る
3:「恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜」
■ヒロインのライバル役で存在感を残す生見愛瑠の引き出しの多さをさらに感じられるのが「恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜」(2021/日本テレビ系)で演じた橙野ハチ子だ。
本作は、弱視の主人公・赤座ユキコ(杉咲花)と、彼女に恋をするヤンキー・黒川森生(杉野遥亮)の恋愛模様を描いたドラマ。「目が不自由」と一口に言っても、生まれつき目が見えない全盲や、色・光などはぼんやりとわかる弱視など、見え方はさまざまであることを違和感なく伝えてくれる作品でもある。
生見愛瑠演じるハチ子は、森生と同い年で、中学生のころからの幼馴染だ。彼に恋心を覚えてはいるが、あえて想いを伝えずにいたところに、ユキコがあらわれた。森生のユキコに対する心酔ぶりは、まさに人が変わったよう。
そんな様子を見て焦ったハチ子は、一緒に映画を観に出かけたユキコと森生の後をつける。たまたまユキコと二人っきりになったタイミングで、彼女に対して意地悪なことを言ってしまう。そのせいで、森生との関係に暗雲が差し込んでしまう。
こういったラブコメには、メインキャストの恋路を阻む、いわゆる“お邪魔虫”的なキャラが不可欠だ。
ハチ子は、中学生のころはいじめられていたという暗い過去を漂わせつつ、現在は叔母・茜(ファーストサマーウイカ)の店に居候しながら手伝いをしている。決して暗く陰気な性格ではないが、前述した「くるり〜誰が私と恋をした?〜」のまことや『モエカレはオレンジ色』の萌衣と比較すると、わかりやすく元気で明るい!といったキャラクターではない。
若者特有の厭世観があり、達観した物言いをするハチ子だが、森生に対する気持ちは純粋なもので、そう簡単に手放せない。彼女が抱えるその想いは、いわば「生まれたての雛が親鳥に向けるもの」と相違ないものだったろう。恋のライバルに思わず意地悪をしてしまう一面は、彼女が自分でも扱いに困るピュアさを持っていることを表している。
そんな、一辺倒ではない心の内を、微細な目線の動きや所作で表現してみせた生見愛瑠。「元気で明るく可愛い女の子」だけではない、彼女の新たな演技を引き出したキャラクターとして、ハチ子は外せない存在になっている。
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4:「石子と羽男―そんなコトで訴えます?―」
■1話のみのゲスト出演ながら記憶に残る生見愛瑠のパブリックイメージからは、到底想像できないキャラクターとして挙げたいのが「石子と羽男―そんなコトで訴えます?―」(2022/TBS系)の4話にゲスト出演した際の堂前一奈だ。
中村倫也演じる弁護士・羽根岡佳男(通称・羽男)と、有村架純演じるパラリーガル・石田硝子(通称・石子)が、たびたび衝突し合いながら難しい事件を解決していくドラマ。4話のテーマは「救護義務違反」で、堂前一奈は電動キックボードで人を轢き逃げした容疑をかけられてしまう。
ほかの作品で演じたどのキャラクターよりも荒く、やさぐれており、目に光のない演技は「生見愛瑠はこんな表現もできるのか」と一目置くのに値する。そこから一転、羽男や石子、そして一奈の姉・絵実(趣里)の働きかけにより、自分の潔白を証明してもらえたときの泣きの演技に、有無をいわさず惹きつけられる。
持ち前のルックスゆえに、もちろん主演やメインキャストとしても映える生見愛瑠の演技だが、華々しい容姿を武器にせずとも彼女は十分に戦える。それが証明された作品でもある。
一奈が背負う生い立ちや非行歴を含め、いったんは羽男からも「本当に轢き逃げをしたのかもしれない」と疑われてしまう理由については、ぜひ本編を観てほしい。
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5:「日曜の夜ぐらいは...」
■陰と陽の切り替えが見事「恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜」や「石子と羽男―そんなコトで訴えます?―」での演技の幅が評価につながったのか、「日曜の夜ぐらいは...」(2023/ABCテレビ・テレビ朝日系)では、ちくわぶ工場で働きながら祖母と借家暮らしをしている若い女性・樋口若葉を演じている生見愛瑠。
本作は『世界から猫が消えたなら』(2016)や『余命10年』(2022)などを手がけた脚本家・岡田惠和によるオリジナルドラマ。
ヤングケアラーの主人公・岸田サチ(清野菜名)と、タクシードライバーの野田翔子(岸井ゆきの)、そして若葉の3人の女性が、とあるラジオ番組主催のバスツアーで出会う。記念として購入した宝くじが高額当選したことをきっかけに、それぞれの淀んだ人生を変えるため、ともにカフェを経営する目標に向かって力を合わせる。
「日曜の夜ぐらいは...」(C)ABCテレビ
若葉は、祖母と話しているときも、ちくわぶ工場で働いているときも笑顔が少なく、唯一楽しそうなのはラジオ番組を聴いているときだけ。どちらが本当の彼女なのか、と考えながら見てしまうが、性や恋に奔放な彼女の母親・まどか(矢田亜希子)が登場すると、若葉の笑顔が減っていった理由も、人を信用できなくなった過程も、容易に想像できるようになる。
「日曜の夜ぐらいは...」(C)ABCテレビ
工場で働いているとき、母と対峙しているときの若葉と、ラジオ番組を聴いているとき、サチや翔子と話しているときの若葉。陰と陽を切り替える様が見事で、これまでの演技が着実に評価されてきたことが、しっかりと伝わってくる。
キャリアも長く、すでに女優として一定以上の評価を得ている清野菜名、岸井ゆきのと名を連ねるメインキャストとして起用されていることからも、彼女が「モデル」「タレント」かつ「女優」としても認知されていることがわかる。
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▶︎「日曜の夜ぐらいは...」を観る
GP帯ドラマの初主演を果たした彼女が、女優として次のステージを目指すなら、もう1〜2作ほど映画の代表作が欲しいところだ。それも、そう遠くはないはず。
(文:北村有)
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