「虎に翼」優三の想いが報われて、寅子、妊娠<第37回>
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2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。
日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となる“とらこ”こと猪爪寅子を伊藤沙莉が演じる。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第37回を紐解いていく。
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じつは肉食?
弁護した人物がかなりしたたかだったことにショックを受ける寅子(伊藤沙莉)。仕事を休んでいると、はる(石田ゆり子)に直言(岡部たかし)の会社へお使いを頼まれます。
帰りがけ、直言の会社で働いている優三(仲野太賀)に呼び止められ、河原でひと休み。
優三は農家でもらった唐揚げを2個、寅子と分かち合います。そして、気に病む寅子に、人間にはいい面と悪い面があって、守りたいものがそれぞれ違う。そのために法律はあると思うと説きます。
「やなことがあったらまたこうしてふたりで隠れてちょっと何かおいしいものを食べましょ」(優三)
寅子が試験に受からなかったら、試験を受け続けたと明かす優三。彼こそ法の道に進むべきで、そのほうが世の中がよくなりそうな気がするのですが、なんで彼が法の世界にいないのでしょうか。この時点で、世の中、おかしいと思います。
ここで注目は、仲野太賀さんのセリフの発し方が、急にやわらか二枚目声になっていることです。先日までは、三枚目キャラ的な発し方でした。
正しいばかりだと疲れちゃうから肩の荷をおろすといいと言われ、寅子はたちまち恋に落ちてしまいます。
その夜? 寅子はついに優三の布団に転がりこみます。肉食べて元気になったのかも。いや、心が疲れていたとき、やさしさに触れて、すっかり優三に心が傾いたのでしょう。
優三が誠実で、ずっと寅子を見つめていて、欲望に負けず、手を出さずに忍耐していたからこそ、報われたのでしょう。よかった。よかった。
男性から女性を求めるのではなく女性から。女性の自主性を重んじた描写です。
第36回レビューでも書いたように、「ひよっこ」の米子役の印象もあって、恋に貪欲で、やや肉食系の役の印象もある伊藤沙莉さんなので、寅子から優三に迫る(といっても控えめに)図は合っています。というか、寅子は欲望の淡い人では決してなく肉食系に見えるのですが……。
おそらく、寅子と「虎に翼」は、仕事も恋も教養も手に入れたいエネルギー旺盛な人たちの希望が詰まっています。寅子が、筆者の身近にいる頑張ってるご婦人方と驚くほど重なります。あの人とかあの人とかあの人とか……。
1943年5月、寅子は妊娠し、みなに祝われます。展開早い。
一方、結婚、妊娠の先駆者・久保田(小林涼子)は弁護士を辞めることになりました。
先輩にボーイッシュな言葉遣いを改めるように言われ、「順調なの?」としとやかな口調になった久保田は翼をもがれたように見えます。
婦人弁護士なんて物珍しいだけで誰も望んでいなかったのだと絶望した久保田。仕事も家事にも満点を求められ、挫折してしまったようです。
「もう私しかいないんだ」と孤独に打ち勝とうとする寅子。
結婚して子育てしながら、仕事もしてきた世の女性のなかには久保田のようになってしまう人もいるでしょう。寅子になりたかった(なりたい)女性がたくさんいて、ドラマを応援しているのだと思います。
寅子と久保田が話をした竹もとは戦争の影響でもうすぐ閉店。こっそり桂場(松山ケンイチ)がいてふたりの話に聞き耳を立てていました。ふつう気づくだろと思いますがそれはさておき。大好きな団子はどんな味がしたでしょうか。
(文:木俣冬)
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