「虎に翼」あの日の毒饅頭が役に立った<第82回>
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2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。
日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となる“とらこ”こと猪爪寅子を伊藤沙莉が演じる。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第82回を紐解いていく。
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玉の悩み
ある日、寅子(伊藤沙莉)は杉田弁護士兄弟(高橋克実、田口浩正)の主催する麻雀大会に参加しようと考えます。杉田兄弟は、女性は麻雀なんかしないほうがいいという態度ですが、寅子はこういうときこそ「はて?」と対抗します。そんなとき、偶然、航一(岡田将生)が麻雀好きであることがわかります。
麻雀をやることで親睦を深めるというやり方が大人の世界にはあります。麻雀自体はおもしろい頭脳ゲームだと思いますが、麻雀社交とそこに入らない人との差は気になるところです。
寅子も寅子で、麻雀でもやって、新潟の職場に馴染もうとしているようです。
友達がいなくても平気とうそぶいていた優未(竹澤咲子)も寅子に助言され、学校帰り、お友達といっしょに帰ってみます。でも、一緒に帰ろうと誘われ「うん」とふたりの学友の間に入ったのはいいものの、無言でうつむいて歩き出す三人の
妙な気まずさ。ここは意図した演出なのでしょうか。
寅子の場合、旧友・涼子様(桜井ユキ)と再会したので、心強いことでしょう。
寅子が本庁で担当している初の刑事事件についても涼子様の前で話します(守秘義務ないのでしたっけ?)
それは、19歳の少年・元木(山時聡真)にかばんをひったくられ、20歳の青年・水上(林裕太)が暴行を起こした事件で、水上は、この年齢差は何か、と問いかけます。未成年と成年で罪の重さが変わってしまう。19歳の少年は、若いけれどふてぶてしいのです。
法律は法律で大事ですが、法ではカバーしきれないこともあるわけで。法律大好き寅子でしたが、人それぞれに寄り添おうと思うと悩ましいこともあるようです。
寅子の悩みを聞いた涼子様は、英語教室に来ている少年少女は裕福で育ちがいいけれど、ときどき、昔の自分のような孤独やいらだち、誰も自分を理解しないという顔をにじませることがあると言います。
貧困が理由ではない犯罪も増えてきた、という涼子。いまもちゃんと社会をよく見て、自分なりに考えているようです。
でもなぜ、法律の世界で働かないのか。いろいろ事情があるようで……。
日曜日に特別メニューがあると聞いて、寅子はまたライトハウスを訪ねます。優未を連れていこうとしますが、稲(田中真弓)と一緒がいいとつれない。親子の溝はちょっと埋まったようでなかなか埋まりません。
ライトハウスに行くと、おまんじゅうが振る舞われました。
あの日、毒饅頭をみんなで作ったことがきっかけらしいです。三つ子の魂百までとでも言うのでしょうか。
毒饅頭事件が思い出された流れで、森口美佐江(片岡凜)の質問に寅子が答えるとき、あの頃(学生時代)の回想がされます。
法について考えるとき、最初は事件を家族に置き換えて「自分ごと」にして考えたが、父が事件に巻き込まれたときにそれをやめたと寅子は言います。
最初、楽しい、家族劇場で法を説明していたけれど、すぐそのコーナーはなくなってしまったのはそういう理由だったのですね。
ところで、玉(羽瀬川なぎ)が空襲で足を怪我して車椅子生活をしていて、いまだに調子が良くないようです。玉とふたりきりになった寅子は、玉の苦しい胸の内を聞きます。
あの青春時代、みんな同じと思ったはずだったのに……。
世の中には、たくさんの溝があるようです。
(文:木俣冬)
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