続・朝ドライフ

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2024年09月09日

<虎に翼 最終章編 >23週~最終週の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

<虎に翼 最終章編 >23週~最終週の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】


第128回のレビュー

4年もかかった尊属殺の裁判にいよいよ判決が下る日がやってきました。

よね(土居志央梨)轟(戸塚純貴)が出かける前に寅子(伊藤沙莉)が事務所に応援にやってきます。

ふたりは出かけていき、事務所に残った寅子に、美位子(石橋菜津美)が問いかけます。
寅子も一緒に外に出るのがふつうだと思いますが、尊属殺に寅子が関わっていないけれど主人公として活躍させる必要があるので(なにせ最終週ですから)、なぜか事務所で美位子と語り合うことにしたのでしょう。

もし判決が破棄されたら、美位子は釈放される。そのことを、美位子は「私、人を殺したんですよ」とすこし罪悪感を覚えています。このときの美位子の目が印象的。

前回に続き、ここでもまた、人を殺すとはどういうことなのかの問いがあります。ここで寅子はなかなかすごいことを言います。

何かしらの罪を償いたいと思うことは、「あなたの尊厳を全て奪って何度もあなたの心を殺してきた相手を肯定してしまいかねない。あなたができることは、生きて、出来る限りの幸せを感じ続けることよ」

わかるような、わからないような、大変哲学的な話であります。

作者は、ドストエフスキーのようななかなか読解できないしかも長いものを書きたかったのでしょうか。哲学的難問をかみくだいて、大衆に向けて描いてきた朝ドラにしては、なかなか異例であります。

そして、大法廷。桂場(松山ケンイチ)が尊属殺を違憲としました。23年の時を経て穂高(小林薫)が残した課題がついに解決したのです。このときのよねの嬉しそうな表情も印象的でした。

土居志央梨さんのリアクションの演技はいつも絶品であります。心がすごく動いているのが伝わってきます。

裁判のあと、桂場がチョコを食べるのは、寅子が花岡(岩田剛典)と分け合ったチョコを思い出させます。法律の純粋さを信じている人達の心の象徴のような、あのチョコレートです。第49回で、法律に従って闇の食料を買わず痩せていく花岡に、子どもにわけてと寅子は外国人からもらったチョコを半分割って手渡しました。花岡の妻が花岡の死後、チョコの絵を描き、それが家裁にずっと飾ってあります。桂場は家裁の人ではないですが、法律を尊ぶ者としての気持ちは共通でありましょう。チョコといえば松山さんの代表作Lと、「デスノート」説もありますが。

こうして桂場は、翌月、定年退職します。

さて、尊属殺が違憲となり、歴史がひとつ塗り替わりました。法律事務所で祝杯をあげながら、次は、轟と遠藤(和田正人)のような同姓愛者の婚姻が法的に認められるようになることを願います。その実現はもっと先の話になります。

よねたちも頑張った。寅子も頑張る。少年法改正についての審議会で寅子が言葉を尽くします。「味方」「寄り添う」という言葉を曖昧な言葉と失笑されても、前向きにさらに抽象的な「愛」について話し合いを続けます。

その結果、改正が見送られます。実際のところ、こんな抽象的な話で少年法の改正が議論されたのかはなはだ疑問でありますが。
こんな感じだったら、ゆくゆく改正されても仕方ない気がしてしまいますね(暴論でごめんなさい)。たぶん、実際は全然違うんじゃないかと思いますが。


美位子は、新潟の涼子(桜井ユキ)のところで働くことになりました。

寅子は、美位子と優未(川床明日香)が人生に失敗したと考えるのを強く否定し、

「自分を責めて辛くなるくらいなら、周りのせいにして楽になって!」と主張します。

わかる気もするし、ちょっとおそろしい考え方でもあります。はた迷惑なことになる危険性を秘めております。

ここでは優未がツッコミ役として「とんでもないほうに話を持っていくの」と言ってくれてホッとしました。「あさイチ」でも寅子の発言に疑問を呈していました。

おそらく、失敗したと卑下する美位子を励ましただけであり、寅子も自分は母としては失敗していると、落ち込んでいるのです。

つまり、寅子はつい大きく出てしまうけれど、あとで反省している気の弱い、決して、無双なわけじゃないということかもしれません。そういう人、いますよね。

「あさイチ」ではこれまで朝ドラに前のめりで肯定的だった博多華丸さんが、「虎に翼」に関しては見逃していることがちょいちょいあり、今回は、桂場はなぜ板チョコを食べるのかとクビをかしげ、大吉さんが花岡のことを覚えていました。やっぱり朝、一回見るだけではちょっとわかりにくい作りなのだと思います。華丸さんが楽しめる朝ドラに戻ってほしい。


※この記事は「虎に翼」の各話を1つにまとめたものです。

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(C)NHK

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