<虎に翼 最終章編 >23週~最終週の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第121回のレビュー
第25週「女の知恵は後へまわる?」(演出:橋本万葉)では1970年になりました。深刻な問題がいろいろ。
よね(土居志央梨)と轟(戸塚純貴)が担当している尊属殺の問題は、第二審で実刑が言い渡されました。
桂場(松山ケンイチ)は、司法の独立を目指していますが、寒河江幹事長(外山誠二)が最近の司法は公正を欠いているのではないかと圧力がかかります。桂場より背が低い幹事長、でもまったく負けてない迫力があります。さすが文学座のベテラン俳優。あえて、身長差を出して撮っていることに、人間力を信じているのを感じます。
桂場も上から目線で対抗します。
前からむすっとしていた桂場ですが、最近はまったく愛嬌が失せています。上に立つ者のプレッシャーは相当もののようです。
対して、調査を担当している航一(岡田将生)は白髪はすこしあるものの、驚くほど若い。桂場の若い秘書みたいに見えますが、設定の年齢はそんなに変わらないのではないかと……。例えば、郷ひろみさんがやたらと若く見えるように、世の中には若見えする人もいるとはいえ、桂場と航一の空間は時空が歪んで見えました。
寅子(伊藤沙莉)は少年法改正に反対していますが、議論の前に改正ありきで話が進んでいます。
少年法の改正は少年の犯罪が凶悪化しているので厳罰化をしようとしているのですが、多岐川(滝藤賢一)の遺言で、愛をもって少年犯罪に当たるためにも少年法改正に反対したい寅子たちです。
でも、上は圧をかけてきて、上の考えと違うことをしている若者を左遷させたり……。これからの司法について勉強会を開いていた朋一(井上祐貴)が家裁に異動になりました。最高裁から家裁と聞いて、え、となる寅子と航一。寅子に気遣う朋一の様子から、家裁が法曹の世界でやや軽視されているのかなと感じさせます。でも、多岐川がやってきたように家裁の仕事は重要なのです。
ドラマがはじまったときはジェンダーの問題が注目されていた「虎に翼」ですが、残り2週間となったいま、急に男性たちの物語が立ち上がってきます。国会や内閣などの権力から司法の独立を守る戦いはNHKスペシャルのようです。そこになかなか寅子が中心になっていかないのがなんとももどかしい。
いま再放送中の「オードリー」でヒロインよりも大竹しのぶが主人公のように見えていた感じに近いような気がします。
重苦しい話のなかで、少しの救いは、香淑(ハ・ヨンス)が弁護士になって、原爆の被害に遭って法的支援を受けていない朝鮮人や中国、台湾の人たちのために働こうと考え、汐見(平埜生成)も判事を辞めて弁護士になり、娘の薫(池田朱那)も弁護士になり、家族で弁護士事務所を開くことにしたこと。
判事だと公正を考えないといけないけれど、弁護士であれば、とことん正しいと信じたことを弁護することができる。それはそれで大変ではあるとは思いますが、弁護士は困っている人を助ける仕事というイメージが世の中にはありますので、精神衛生上、いいような気がします。繰り返しますが、実際はそんなに簡単なことではないとは思いますが。
「最後はいいほうに流れていくわね」と梅子(平岩紙)が微笑みます。
こういうとき、ニコニコ聞いている寅子は、判事の仕事についてどう思っているのか、彼女の自分の仕事に対する思いが見えてこないのが少し物足りなく思えます。それもこれも多岐川や桂場が妙に強烈に描かれているからなのですが。ここにジェンダーの問題が見え隠れしているようにもふと思うのです。うがった見方かもしれませんが。
※この記事は「虎に翼」の各話を1つにまとめたものです。
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