映画コラム

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2020年12月22日

『映画 えんとつ町のプペル』レビュー:壮大な物語の真の姿とは?

『映画 えんとつ町のプペル』レビュー:壮大な物語の真の姿とは?



人気漫才コンビ・キングコングの西野亮廣が手掛けたベストセラー絵本『えんとつ町のプペル』。

5000部で大ヒット呼ばれる絵本の中で総売り上げで50万部を突破するベストセラーに。しかし、絵本『えんとつ町のプペル』は西野による壮大な物語のほんの入り口でしかありませんでした。

舞台や展示会など様々な展開を見せてきた“プペル”が、今回の『映画 えんとつ町のプペル』の完成によってに真の姿を明らかにします。

西野亮廣の原作・脚本を基に映像化に挑んだのは『海獣の子』『鉄コン筋クリート』のSUTDIO4℃。長編作品としては初めて3DCGアニメーションに挑みました。

ボイスキャストには芦田愛菜、窪田正孝、立川志の輔、小池栄子、藤森慎吾、野間口徹、伊藤沙莉、宮根誠司、飯尾和樹、國村準など豪華な面々が集結。オープニング主題歌は今回、映画に合わせたアレンジを加えたHYDEの『HALLOWEEN PARTY―プペルVer―』、エンディング主題歌はロザリーナによる西野亮廣作詞作曲の『えんとつ町のプペル』です。

 あらすじ



黒い煙に覆われ、空を見上げることを禁止された町の人々は、空の向こうがにどんな世界が広がっているなんてことは想像しません。

仕立て屋のブルーノはこの町を“えんとつ町”と呼んでいました。空が煙で閉ざされた町で、星があると唯一信じているブルーノは星の話、黒い煙のその先にある光輝く世界の話を紙芝居にして伝えていました。けれども周りの人たちからは「星などあるものか」と嘘つき呼ばわりされています。そしてある夜ブルーノのは妻のローラと息子のルビッチを残して姿を消してしまいます。それから1年、ルビッチはえんとつ掃除の仕事をしていました。

一方、町はずれのゴミ山に光の塊が墜ちてきました。光の塊に周りのゴミが集まり、全身にゴミを纏ったゴミ人間が誕生します。その夜、町はハロウィンで大盛り上がり、みんな思い思いの仮装でお祭りを楽しんでいます。

そこにやって来たゴミ人間は、ゴミ人間の仮装をしていると勘違いされて、注目の的になります。しかし、いざみんなが仮装を取って回った時にゴミ人間がゴミ人間の仮装しているのではなく、正真正銘のゴミ人間だと言うことが明らかになると、とたんに周りの人間たちは“バケモノ”扱いを始めます。

ルビッチはハロウィンの夜もかつての友達たちと過ごさずにえんとつ掃除の仕事をしています。その帰り道、ゴミ収集車で運ばれるゴミ人間を発見。まさかゴミ人間だとは思わず、ルビッチは彼を助けます。そして彼がゴミ人間であることを知って驚きますが、害を与えそうにもないことで、友達のふりをしてもらうことを頼みます。ルビッチは紙芝居の主人公の名前を取ってゴミ人間をプペルと名付けます。父親の話を未だに密かに信じ続け、星を見たいと願っている少年のルビッチとゴミ人間のプペルはこうして友達となりました。

絵本は入り口でしかなかった!?



ベストセラー絵本の映画化と聞いた時には絵本のページの隙間と隙間を埋めながら一本の長編映画にしていくのだろうと思いました。

同じ“画の映像化”で言えばベストセラーコミックの映画化企画が多いのでなんとなくイメージができるような気持ちでいましたが、動きや行間も埋めてくるコミックに対して絵本は一枚の絵に込められる情報(動きや感情)が多くて、そこから多くのものを感じ取る作りになっています。この隙間に感じてきたものがどうやって長編映画になるのだろうか?『映画えんとつ町のプペル』の話を聞いた時にはそう思ったものです。

しかし!なんと映画は、というか『えんとつ町のプペル』という物語はもともと全10章からなる壮大な物語で、絵本はその中盤を取捨選択して構成されたものだというので驚きです。公開の順番で言えば真ん中の3部作を真っ先に公開した『スター・ウォーズ』が重なります。

そのため、絵本ではページを割いていた部分が映画では一気に語られたりします。その分、これまでは語られていなかった部分が多く盛り込まれ、約100分の上映時間の中に壮大な物語が描かれます。
 

見逃し厳禁、圧倒的な画



映像化を手掛けたのは2019年の『海獣の子供』で凄まじい情報量をさばいたSTUDIO4℃。今回が長編映画としては初めての3DCG作品となりましたが、相変わらずの凄まじい情報量を持った画が続き、見事なまでの手腕を発揮しています。これまでに培ったテクニックを惜しみなく注いだ背景は、最も多いところではレイヤー数が800を超えてくると言うことで明らかに一回見ただけでは把握させない作りになります。一回目はキャラクターと物語を追い、2回目以降で世界の隅々を見て回るというのが正しい見方なのかもしれません。

映画の見せ方としては不親切な気もしますが、絵本的な楽しみ方ができる作品とも言えます。

絵本にもなる物語なので、もちろん柔らかでファンタジックなキャラクターが登場しますが、その背景はハリウッドのSF映画もびっくりなスチームパンク風なものが拡がっています。一度に全部見て回るということはかなり難しいと思いますが、それでも見逃し厳禁です。ちなみにエンドロールまでしっかりと詰まった画が続きますので、最後まで席を立たずにいてください。

絵本が動くとき



絵本から映画になることで最大の効果は、動きと音声を手に入れたことでしょう。

二つの主題歌に加えて複数の楽曲が劇中で披露され、キャラクターの躍動感や心情描写を深める一手になっています。オープニングのハロウィンのシーンはまるでしっかりと振付が付いたミュージカルのようなものになっていて、あの『ナイトメー・ビフォア・クリスマス』を彷彿とさせるシーンでになっていて一気に映画の中に引き込まれます。

『映画えんとつ町のプペル』では各キャラクターの声も大きな要素ですが、音楽、楽曲の部分でもとても目を引く映画になっています。
また、原作に加えて映画全体の製作総指揮と脚本を担当する西野亮廣の世界観の映像化のために、これまでも声優として活躍している人気俳優たちがボイスキャストとして参加しています。

なかでも、マイペースなキャラクターのプペルを飄々と演じる窪田正孝とクライマックスで名口上を披露する立川志の輔は流石のものだと唸らされます。立川志の輔はテレビから抜けて新たな道を模索していた時に出会い、西野亮廣が感銘を受けた存在と語っている存在で、満を持してのコラボレーションと言えるでしょう。

まとめ  

西野亮廣という人物が関わっていることで何かと斜め上的な、攻めの姿勢と見られがちです。

実際に『映画 えんとつ町のプペル』はかなり実験的な作りの映画でもありますが、それでいて内包するテーマは家族のきずなや信じる気持ちの大切さといった、とても普遍的なものになっています。不安定で先行きの見えない今に対して”信じ抜け”というテーマはとても胸に刺さるものがあります。

“王道エンターテイメントを目指す”という共通認識を西野亮廣、監督の廣田祐介、そして各パートを手掛けたスタッフたち最後までぶれずに持ち続けたことがとてもよく伝わる作品となっています。

(文:村松健太郎)

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(C)西野亮廣/「映画えんとつ町のプペル」製作委員会

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