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2021年06月01日

「きれいのくに」第8話までの感想:稲垣吾郎が演じたのは「世界」そのものだった。理不尽な世界で貫き通した思いとは?

「きれいのくに」第8話までの感想:稲垣吾郎が演じたのは「世界」そのものだった。理不尽な世界で貫き通した思いとは?


第3話あらすじ&感想

第3話のあらすじ

20代の姿に若返った妻・恵理(小野花梨)。

それは夫の宏之(平原テツ)にとって、自分と出会う前の見知らぬ女の姿だった…!そして物語は本章へ―若者以外の大人のほとんどが同じ男(稲垣吾郎)と女(加藤ローサ)の顔をしている世界。

隣同士の家に住む誠也(青木柚)と凜(見上愛)はお互いに恋心を抱いているが、コンプレックスを抱え、気持ちを言い出せずにいる。

あるとき、凛は映画館で小野田(吉田羊)という女に出会い…。
 

第3話の感想

これまでのお話は全部、高校生が見ていたVR啓発映画だった!

稲垣吾郎、吉田羊主演のドラマ『きれいのくに』。第3話では、謎めいたストーリーの全貌が徐々に明らかになってきた。主演なのに、これまでほとんど現れなかった稲垣吾郎もガンガン出てくるぞ。あらためて振り返ってみよう。

恵理(吉田羊)と宏之(平原テツ)は結婚10年目を迎えていたが、恵理の誕生日を境に宏之には恵理の容姿がどんどん若く見えるようになり、ついに23歳の恵理(小野花梨)になってしまったところで関係は破綻する。

2人にインタビューする映画監督の山内(稲垣吾郎)に対して、恵理は「若さ」や「可愛さ」を夫が無意識に望んでいたのではないかと答え、宏之も口ごもりながら同意すると、監督からのメッセージが流れて“映画”は終わる。そう、これまでの夫婦の話は、すべて高校の授業で見ていた啓発映画だったのだ。

この国では、20代から50代までの男女およそ6100万人のうち、およそ4900万人が「トレンドの顔」に美容整形を施して、男は稲垣吾郎の顔、女は加藤ローサの顔になってしまっていた。直接手術だけでなく、遺伝子の編集まで行われた結果、健康被害が続出し、同じ顔による犯罪も頻発、10年前から美容整形は禁止されることになった。

そして子どもたちは、トレンドや外見を意識しすぎないようにしよう、美容整形(脱法行為の裏整形)をやめよう、という啓発映画を毎年のように見せられることになった(そのわりには夫婦のセックスをしっかり見せすぎなんじゃないかと思うが)。

こうして「きれいのくに」は本章へと入っていく。高校の同級生、誠也(青木柚)、凛(見上愛)、れいら(岡本夏美)、貴志(山脇辰哉)、中山(秋元龍太朗/顔は稲垣吾郎)は幼馴染み。仲は良いのだが、それぞれ容姿や異性を気にして、少しぎこちなく毎日を過ごしていた。

彼らが過ごす世界の大人たちは、作中のデータが示すとおり、教師、映画監督、タレント、モデル、警察官、犯罪者、道行く人々、両親、パパ活の相手の中年男性まで、すべて稲垣吾郎と加藤ローサの顔になっており、子どもたちもそれを当たり前のこととして受け入れていた。なお、オーガニックな稲垣吾郎と加藤ローサが演じている役は10数役で、あとはAIを駆使したVFXによる合成で作られている。高校生の中山を演じる秋元龍太朗にも稲垣吾郎の顔が合成されていた。

しかし、容姿が均一な大人世代と、それぞれの容姿にコンプレックスを抱く子ども世代とでは価値観がまるで違うようだ。それを映画監督の山内は「分断されてしまったこの国の現状」と表現している。

凛とれいらがカラオケで歌っていた曲は、ベッツィ&クリスの「白い色は恋人の色」。1969年のヒット曲だが、大人たちと子どもたちの分断と断絶を描いた映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲』(00年)の挿入歌としても知られている。予告編で中年男の稲垣吾郎がカラオケで歌っていたのは井上陽水の「傘がない」だが、この曲が収められたアルバムのタイトルは『断絶』である(72年)。

今後は高校生たちの恋愛とコンプレックスが描かれていくようだ。大人たちと子どもたちの分断と断絶もさらにクローズアップされていくのだろう。そして、大人たちの中にひとりだけいた、違った顔の女(吉田羊)の果たす役割にも注目だ。

それにしても、みなさん、稲垣吾郎の顔になりたいですか? 恋人に稲垣吾郎の顔になってもらいたいですか?


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