「きれいのくに」第8話までの感想:稲垣吾郎が演じたのは「世界」そのものだった。理不尽な世界で貫き通した思いとは?
第5話あらすじ&感想
第5話あらすじ
誠也(青木柚)は思い切って凜(見上愛)をデートに誘い、約束を取りつける。一方、中山(秋元龍太朗)はれいら(岡本夏美)に避けられていることを悩んでいた。れいらは中山の顔を見るとパパ活の客(稲垣吾郎)に襲われたことを思い出してしまうのだが、それを知るよしもない中山は、凜に相談する。
その頃、誠也は心身が傷ついたれいらが気がかりで、凜とのデートを断って一緒に過ごすことに。しかし、凜は誠也の嘘に気づいて…。
第5話の感想
独特の世界を突っ走る「きれいのくに」。思春期の高校生たちなら誰もが抱えるコンプレックスを大胆な設定と繊細な脚本で描き出す。第5話では、高校生たちの日常にほんの少し変化が起こった。といっても、まったく変化のない日常を送っている高校生なんていないのだから、これが当たり前とも言える。
冒頭はバリカンで頭を刈る誠也(青木柚)のショットから始まる。彼がいつも坊主頭でいるのは、母親(加藤ローサ)の「色気づいている」という言葉を気にしたから。第3話では裏整形について、「そんな感じの見た目気にしているとか思われたくないみたいなの、あんじゃん?」と語っていた。見た目を気にしていると思われたくない。だから裏整形にも興味がない。それがナイーブな彼のスタンス。
高校生たちはお互いを気遣い合いながら生活している。それが大人たちと大きく異なるところだ。
誠也はパパ活で暴行を受けたれいら(岡本夏美)を気遣って、凛(見上愛)とのデートの約束を反故にしてまでも、れいらに付き合う。凛は約束を反故にされても、それほど怒ったりしない。貴志(山脇辰哉)は一貫してれいらを気遣っている。中山(秋元龍太朗)はれいらが自分を避けているのに気づき、凛に相談を持ちかける。
れいらと誠也は部屋でセックスをする。恋人のいるれいらだが、「初めては安心できる人と済ませときたい、みたいな」と言うのだ。
短い時間ながら、ここまで生々しい若者たちのセックス表現はドラマでは珍しい。NHK、攻めてるなぁ。結局、童貞と処女のセックスはうまくいかなかった。浮かない顔をしながら、誠也はれいらの言葉を思い出していた。
「そんなたいしたもんじゃないってことを今、証明したわ。自分に」
セックスがうまくいかなかったこと、好きな相手とのセックスではなかったこと、自分はれいらにとって「たいしたもんじゃない」ということ……複雑な気持ちが頭をもたげる。
そんな誠也が声を荒げたのは、デリカシーのない言葉を並べる母親に対してだった。
「てか、自分らは顔、整形してんじゃん。何のためにやったんだよ。なんで俺がダメなんだよ」
整形は法律で禁じられている。大人の世代が、みんな整形していたのは「色気づいていた」からだ。色気づいて、セックスして、酒を飲んで、あまつさえ「パパ活」という名で女子高生に手を出そうとしている。でも、自分たち高校生はすべて禁止されているのが現状だ。なんで大人たちばっかり好き勝手やってるんだよ!
誠也の不満は思春期の若者が抱える鬱屈そのものだろう。同時に、社会では整形者と非整形者の分断が問題になっていた。何でも自由にやってきた(やっている)大人たち世代と、そのツケを支払わされている子どもたち世代の分断も大きい。次回以降、それが徐々に形になって見えてきそうだ。
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