「きれいのくに」第8話までの感想:稲垣吾郎が演じたのは「世界」そのものだった。理不尽な世界で貫き通した思いとは?
第6話あらすじ&感想
第6話のあらすじ
凜(見上愛)は、誠也(青木柚)がれいら(岡本夏美)と二人で会っているところを目撃し、傷ついていた。さらに顔のコンプレックスの悩みが増大し、法律で禁止されている美容手術に興味を募らせていく。そして“パパ活”を始めて…。その頃、映画監督(稲垣吾郎)が新作の撮影のために高校を訪れる。凜はそこにいた女優・安藤(小野花梨)、パパ活の客・千葉(山中崇)との出会いで、禁断の闇世界に足を踏み入れることになり…?!
第6話感想
「変わりたいな、っていうのがあって、かな」トレンドの整形による大きな分断が起こってしまった社会で暮らす、思春期の高校生たちの悩みとコンプレックスを描くドラマ「きれいのくに」もいよいよ終盤。
6話では、凛(見上愛)に焦点があたる。容姿にコンプレックスを持っていた凛は、れいら(岡本夏美)にパパ活アプリを教えてもらっていた。理由は「変わりたい」から。
小学生の頃、クラスメイトに「ブス」と言われ続けて傷ついていた凛。一方、中山(秋元龍太朗)は遺伝子編集のせいで周囲からいじられていた。17歳になった二人の会話は、自己肯定感がとことん低くて、聞いているとせつなくなってくる。
「ほら、私、ブスだから」「ブスだよ、結婚とかもできる気しない」
「遺伝子いじってる俺とのハーフキツいし、俺のほうができない気がする」
「ブスとのハーフのほうがキツいよ。なんだかんださぁ、自分の子どもがブスって言われてるの見たくないじゃん」
このシーンには「きれいのくに」のすごさが詰まっていると感じた。なにせ、中山役の秋元龍太朗の顔はすべてVFXで稲垣吾郎と入れ替えられているのだ。ここまでドラマを見てきた人は慣れてきたかもしれないが、初見の視聴者は間違いなくギョッとする。
合成には現場で煩雑な作業が必要だったという。それなのに秋元龍太朗はナチュラルな芝居で、物語のテーマにかかわる会話をやってのけているのだからすごい。もちろん、技術力もすごいのだが、なによりこうしたシーンを着想できる脚本の加藤拓也とGOを出したNHKがすごい(制作統括は『あまちゃん』『いだてん~東京オリムピック噺~』の訓覇圭)。
6話には凛の両親(稲垣吾郎、加藤ローサ)が登場しているが、ヘアメイクを担当した豊田健治のブログによると、この二人は大学を出て、ほどよく成功している設定なんだそう。一方、誠也の両親(稲垣吾郎、加藤ローサ)は若い頃にパンクバンドをやっていて、今は落ち着いているという設定らしい。あのお父さんの頭のタオルはバンドの名残だったんだ!
凛が初めてのパパ活で出会った相手はプレーン(整形していない人間)の千葉(山中崇)。実は警察の人間で、法律で禁じられている「裏整形」に興味を持った凛を自分が作ったプレーンが集う店「きれいのくに」に連れていく。店には啓発ビデオに出演していたプレーンの俳優の安藤(小野花梨)や小宮(平原テツ)も訪れていた。
「きれいのくに」の会員証には、それぞれ違う形をした横顔がプリントされていた。プレーンには多様性がある。しかし、多数派のネジ(整形をした人)から差別されているという現実もある。
同じ顔をした人間たちが、違う顔の人間を差別・抑圧するのは、「同調圧力」の象徴だろう。日本では、多様性がもてはやされる一方で、ほかと違う性質を持っている人は強い抑圧を受けるという、大きな矛盾を抱えた現実がある。
現実といえば、もう一つ。どんなに多様性が素晴らしくても、若者が抱える容姿のコンプレックスが解消されるわけではない。揺れ動く凛に、安藤は自分も「裏整形」を施したと囁く。彼女がしていたのは同じ顔にする整形ではなく、気になる部分を直す部分整形だった。
「自分のコンプレックスぐらい、直してもいいかなー、みたいな。やなところ直したらさ、ポジティブになるじゃん?」
安藤が語るのは、トレンドにあわせて同じ顔にする不自由さでもなければ、整形すべてが禁止された不自由さでもない。自分の気になる部分を好きなように整形できる自由さだ。次回以降、凛がどのような判断をするのかが気になる。啓発映画に出演していた女優の小野田(吉田羊)も鍵を握っていそうだ。
前回、セックスをしたれいらと誠也(青木柚)にも微妙な距離ができていた。自分の部屋で、れいらの血のついた使用済コンドームを頭に乗せて物思いにふける誠也。これもすごい絵だ。
誠也が、初めてセックスしたれいらのことが気になるのは当たり前のこと。でも、れいらにとって誠也は「練習」でしかなく、「1カウント」にも数えられていない。引き裂かれていく二人を象徴するかのように、おじさんの自転車が走っていく。5人の関係がどうなっていくのかも興味深い。
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