「コントが始まる」第10話までネタバレ感想:「人生は、コントだ!」


第10話の感想&あらすじ

第10話のあらすじ



里穂子「ワタシにとって『マクベス』とは一体なんだったんだろう……」
春斗「オレにとって『マクベス』とは……一体なんだったのか」
コント『引っ越し』。ステージに現れたのは夫役の春斗(菅田将暉)と妻役の瞬太(神木隆之介)。そこに、引っ越し業者を演じる潤平(仲野太賀)が到着するが、引っ越しを拒む妻が邪魔するせいで、夫婦の荷造りは全く進んでおらず……。マクベスによるとりとめのないコントの『前フリ』が始まる―――。

いよいよ、コントトリオ「マクベス」の解散ライブ当日。里穂子(有村架純)をはじめとして、潤平の彼女である奈津美(芳根京子)や、マネージャーとしてライブを見守る楠木(中村倫也)とつむぎ(古川琴音)、恩師の真壁(鈴木浩介)と息子の太一など、これまでマクベスの人生と交差してきた様々な人物たちが顔を連ねる。そしてついに、出囃子が鳴り、舞台は暗転から明転へ。彼らの「最後」が始まった……。そのライブを見ながら、マクベスと出会ってからの日々を心の中で巡らせる里穂子。里穂子にとっての「マクベス」とは、一体なんだったのか―――。

そして、ステージ上で顔なじみの人々を見ながら春斗はまた全く別の意味で思う。「オレにとって『マクベス』とは……一体なんだったのか」。……その答えはライブを終えたその時にも出ぬまま、時計の針は進んでいく。

解散ライブのその瞬間。そして終えた後のマクベスと中浜姉妹の日常。そんな彼らの人生と寄り添ってきた人々のこれから。これまで、様々な数奇な運命が絡み合ってきたこの群像劇の最後の最後は、このドラマ「ならでは」の終幕を迎えることに。20代後半。失敗を経験しながらも、もがき、悩み、そして笑いながら生きてきた彼らの生き様。春斗が出す自問自答の答えとは。このドラマの最後はもちろん…………。

第10話の感想

終わった、終わってしまった……。

「とわ子ロス」に引き続き、「コントが始まるロス」にも陥っている。里穂子にとって人生の節目を支えてくれた存在がマクベスだったとしたら、私にとってのマクベスは確かにこのドラマだった。

人にはそれぞれ、好きなものや熱中するもの、これがなければ生きられないと思えるほどの「生きがい」があるものだろう。時間と労力をどれだけ投入しても惜しくない対象。人生でそんな対象に出会えるのは、幸せなことだ。

「それはまるで、何気なく使い始めたタオルケットが、いつの間にか手放せなくなるように」

だからこそ、失った後の喪失感は大きい。ファンである里穂子にとっての喪失感もさることながら、マクベスの3人にとっても”マクベスではなくなる自分たち”に対する喪失感は、決して小さくないのではないだろうか。

「もし続けてきたことが間違ってなかったとしたら、この10年にはどんな意味があったんだろうか」

過去は変えられない、とよく聞く。変えられるのは、今か未来かしかないと。それでも、過去の捉え方を変えることはできるんじゃないだろうか。春斗にとっての10年間、潤平にとっての10年間、瞬太にとっての10年間……。各々にとっての10年間が過ぎていったはずだけれど、決して彼らは「挫折」や「失敗」を軸に語ることをしない。

「後で振り返ったときに正解だったと思えるよう、生きていくしかないだろう!」

そう、すべては、自分にとっての”正解”だったんだと思えるように、これからの未来を生きていくしかないのだから。

最終回の泣かされポイントはたくさんあるけれど、ひとつ挙げるならやっぱり”最後の3人じゃんけん”だろう。引越しに伴い、冷蔵庫を賭けたじゃんけんの戦いが繰り広げられた。最後のじゃんけんだ。もう今後、マクベスとしてじゃんけんをすることは、おそらくない。

「このまま、あいこが永遠に続いてくれたら、この時間を終わらせずに済むような気がした」

マクベスの3人で福岡まで向かいラーメンを食べたシーンや(第1話)、瞬太の車を売ってしまう前に3人で洗車しながら思い出を振り返ったシーンなど(第7話)を見た時も思った。3人でわいわいと笑い合いながら、泣きの演技に入る自然さがすごすぎる……。

菅田将暉も、仲野太賀も、神木隆之介も、それぞれの役と同じ28歳という年齢を生きている。この作品に全力で向き合った経験は、これから歳を重ねていっても褪せることはないだろう。それはマクベスの3人にとっても同じだ。”役柄”と”役者”がリンクする不思議な感覚を、視聴者も共有していたからこそ熱中したのだ。

最後の、里穂子と春斗がいつものベンチで語り合うシーンも良かった。ふたりの出会いもこのベンチから始まり、春斗と里穂子の間でしか交わされない類の会話が繰り広げられてきた。最後もこのベンチで終わるのか……と思うと、何度だって泣けてくる。

マクベスは解散し、3人はアパートを引っ越していってしまう。里穂子もファミレス「メイクシラーズ」を退職し新しい仕事を始めるということは、会う機会が極端になくなってしまうのだ。最後にマクベスへの思いを伝えたい、と願う里穂子のファン心理は痛いほどわかる。

「私はマクベスが解散しても、ファンじゃなくなることはありません。これからもずっとファンで居続けることを、ここにお約束します」

マクベスに出会ったおかげで、里穂子は救われた。それと同じように、マクベスにとっても里穂子というファンに出会えたことが幸運だった。エンターテイナーとして、またその受け手として、互いに支え合っていたことを確認する時間。

「ひとりの人がちゃんと見てくれているとわかっただけで、俺たちみたいな人間は頑張れるんですよ」
「やってきた努力が無駄じゃなかったなって、思えるんですよ」

春斗はきっと、”意味”が欲しかったのだ。マクベスの解散が視野に入ってきた段階から、10年という時間と労力を注ぎ込んできたことに対する”意味”を。

売れなかった。思ったほどファンもつかなかったし、大勢の客の前でライブもできなかった。それでも、たったひとりのファンにここまで愛された。やってきたことは無駄ではないし、その事実に春斗自身も今後ずっと支えられていく。

個人的には、春斗と里穂子が決して恋愛的に良い感じにならず、そんな空気感も出さずに爽やかに終わってくれたのが、心から好感が持てた。里穂子はあくまでマクベスのファンであり、「マクベスはファンとは付き合わない」というルールを率先して守っていたのだ。どれだけ3人と仲良くなったとしても、その一線を越えようとはしなかった。ファンである立場を崩さずに応援者を貫く彼女の姿勢を見習いたい。

安っぽい言葉だけれど、本当に、良いドラマだった。最後の展開まで目が離せず、「上手いなあ〜!」と声に出てしまった。毎週の楽しみをありがとう。確実に、生きる糧でした!

この感想レポートも今回で終わりだ。春斗の言葉で締めたいと思う。

「人生はコントだ、なんて、安っぽいことを言うつもりはない」
「でも、後から振り返った人生がくだらないコントのように見えたとしたら」
「それはそんなに悪くない人生だったと、思えるんじゃないか?」


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(C)日本テレビ

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