「今ここにある危機とぼくの好感度について」全5話のあらすじ&ネタバレ感想:「なぜなら我々は…腐っているからです」三芳総長(松重豊)にしびれた!神崎(松坂桃李)が見つけた好感度より大事なものとは)
第3話あらすじ&感想
第3話あらすじ
帝都大百周年記念イベントのゲスト・浜田剛志(岡部たかし)の主張が思わぬことからネットで炎上。真(松坂桃李)ら広報課員は連日苦情電話の対応に追われる。爆破予告を機に須田理事(國村隼)たちはイベントの中止を、三芳総長(松重豊)に進言するが、浜田が外国特派員協会の記者会見で「言論の自由」を盾に大学への批判を表明したため、帝都大の立場を説明するべく、三芳も会見することになる。真は想定問答集の作成に燃える。第3話の感想:神崎(松坂桃李)の成長に感動&三芳総長(松重豊)の心を動かした言葉にハッとした
みのり(鈴木杏)との再会と別れをきっかけに、変わったはずの神崎真(松坂桃李)。だが「連続講座とは、つまり連続した講座ですね」と説明してしまう中身のなさは健在(?)で、本当に変わったんかーい! とつっこみたくなってしまう。
SNS炎上をきっかけに帝都大百周年記念イベントのゲスト・浜田剛志(岡部たかし)の出演を見合わせたことで、三芳総長(松重豊)が矢面に立ち会見することに。学生時代に彼の元で考古学を学び、恩義を感じている真は想定問答集の作成に燃える。前回「僕は自分だけがかわいいけど」と明言しちゃってたのに、人のために動ける人だった(もしくはなった)ことがわかってうれしい。感動すら覚える。
だができた問答は本当に当たり障りなく、何を聞かれても「学生の安全を第一に……」と言うだけのもの。中身がない、馬鹿だと思われる、などと突っ込まれてしまう。自分をよそに議論を始める石田課長(渡辺いっけい)や室田教授(高橋和也)、学生たちを見て真が考えた内容はこうだ。
なぜみんなこんなにはっきりと自分の意見を言えるんだろう。これまで、自分の意見など言えたためしはなかった。人に好かれたいばかりにいつもそれを放棄してきた。好感度を犠牲にしてまで言うべきことなど何もない気がしていた。しかしその神崎真は変わったはずであって。好感度を犠牲にしても、言うべきことを言える人間になりつつあるはずだった。
珍しく声を荒げた真は、総長の好感度維持のために中身のない原稿を用意したこと、たとえ馬鹿だと思われたとしても、中身がない=記事に大きく取り上げられる可能性が低いことを挙げる。会見の視聴者を誰であるかと想定することが大事で、大多数は日本人のはず。嫌われる原因はいつも意味です。意味を最小限に控えることこそ、日本における正しいリスクマネジメントである、と息巻く。
理事たちの前でも同じように話し、絶賛される真。好感度をかなぐり捨て好感度の重要性を訴えたら好感度が爆上がりした、と不思議に思う。ただ、三芳総長は何だか浮かない顔で、自分は何か間違えただろうか、役に立ててないだろうかと気にする真。ベストかどうかはわからないけど、自分の保身以外の目的のために動く真は新鮮だった。だがよく考えると、前回もみのりのために動いていた。自分で気づいていなかっただけで、もともと真にも人のために動く気持ちはあったのかもしれない。
真と水田理事との二人のやり取りも印象的。並んでいる理事たちひとりひとりの人となりが少しずつ見えてくるのも楽しみだ。
会見の日、真は「やっぱりおっしゃりたいことをおっしゃってください」と訴える。例え炎上したって先生のおっしゃる意味には意味があると思うと言うが、三芳は「そんなに簡単なことじゃないんだよ」「すまん」と言って会見へ向かう。
三芳の態度を変えたのは、ある外国人記者の一言だった。「ドクターミヨシが安全確保のことを考えていることは十分わかりました。それ以外のことを言うつもりがないことも。でも諦めずに質問してみようと思います。なぜならこうした努力を続けることが、世界を少しでも良くしてゆくために必要だと思うからです」「先生は考古学がご専門でいらっしゃいます。ということは、人類の歴史において権力による独裁がどのように行われてきたかもよくご存じのはずです……」キング牧師の言葉も引いて訴える。「問題に対して沈黙するようになったとき、我々の命は終わりに向かい始める。そして最大の悲劇は悪人の暴挙ではなく善人の沈黙である」
「安全確保はとても重要です。ただ、私が残念に思うのは、先生のその沈黙です」
ここで三芳の心に火が付いた。英語で「目が覚めました」と答え、やるべきことは安全確保しつつ、イベントを当初の予定通りに行うこと。理事たちにも有無を言わさず断言する。前回まではただの事なかれ主義のおじさんだと思っていたけど、彼の中にも熱いものがあるとわかって、腐った人たちばかりじゃなかったとわかってうれしかった。
その後の理事たちが数人で話しているシーン、エヴァンゲリオンのゼーレの会議みたいだった。そして大口を叩いてしまったとシンジくんのように縮こまる三芳だったが、イベントは満員で大成功に終わる。
三芳の心を動かした外国人記者は、真と同じく三芳の教え子だった。二人の教え子が一生懸命になるということは、三芳は総長としてどうかはともかく、素晴らしい教授だったのだろう。
他人事なのでこんな風に書いてしまったが、自分も人に嫌われたくなくて意見を引っ込めたり、当たり障りなさそうな方を選んでしまった経験がなくはない。
「問題に対して沈黙するようになったとき、我々の命は終わりに向かい始める」
肝に銘じたい。
全体を冷静に見ていて肝が据わっている安藤秘書、いろいろ見えていて問題提起を投げかけてくる真の後輩・三谷准教授(岩井勇気)など、脇を固める印象的な人物が多いのもこの作品の特徴だ。彼らの今後の動きにも注目したい。
次回はあのお騒がせな澤田教授(池田成志)が返ってくるようで、またひと悶着ありそうだ。
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