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2021年05月31日

「今ここにある危機とぼくの好感度について」全5話のあらすじ&ネタバレ感想:「なぜなら我々は…腐っているからです」三芳総長(松重豊)にしびれた!神崎(松坂桃李)が見つけた好感度より大事なものとは)

「今ここにある危機とぼくの好感度について」全5話のあらすじ&ネタバレ感想:「なぜなら我々は…腐っているからです」三芳総長(松重豊)にしびれた!神崎(松坂桃李)が見つけた好感度より大事なものとは)


第5話あらすじ&感想

第5話あらすじ

謎の虫刺されが命にも関わると知らされた真(松坂桃李)の元に、みのり(鈴木杏)が励ましの電話をかけてくる。勇気を得た真は、被害の原因が帝都大の施設から流出した蚊だということを三芳総長(松重豊)に報告し、理事たちによる隠ぺいの事実を暴こうとする。だが須田理事(國村隼)を始めとする次世代博覧会の関係者たちは、予定地周辺で謎の蚊による健康被害が起きている事実を認めようとしない。そこで真はある奇策に出る。

第5話の感想

山あり谷あり、最後に希望を感じさせてくれた素晴らしい最終回だった。


みのり(鈴木杏)からの電話に力を得て、虫刺され被害の原因が帝都大からの流出だと公表するための策を講じる神崎(松坂桃李)。彼の熱意に感心するものの「好感度なんてねぇ、そんなものどうでもいいんです」と言う神崎に「一体あいつは何を知ったというのだ?」と驚く三芳総長(松重豊)と安藤秘書(安藤玉恵)。

建物を開け放ち明るい外に出る神崎のシルエットと「LOVE。それは愛であった」というナレーションが重なるところ、ちょっとしたクライマックスである。

神崎と三芳総長の機転でサハライエカ流出を公表する流れに持っていった。
「それは、はじめて真実が明るみに出ようとした、素晴らしい瞬間だった」
「だが、そこまでだった」
須田理事(國村準)は市長と繋がっていて手を回され、堀田教授は問題の課を処分してしまったという。

すっかり諦め、元に戻ってしまった神崎。これでよかったと思い込もうとする。よくないですよとコウスケ(望月耕介)に図星をつかれ、逆切れした上に「愛なんて何の役にも立ちやしないんだから」と相手には意味不明のことを言う。みのりからの連絡も無視、連絡先も消し、愛については忘れることにした。うーんすぐ折れちゃう駄目感、残念だがやはり神崎という感じ。

だが、まだ諦めていない人物がいた。澤田教授(池田成志)である。
人のいないところに連れて行こうとする神崎に言った「まだどら焼き食べてるでしょうが!」は北の国からの「子供がまだ食べてるでしょうが!」のパロディだろうか。

変異種治療の方法があるかもしれないと突き止めた澤田教授と足立准教授(嶋田久作)。おそらく堀田教授の研究室には、実はまだサハライエカがあるだろうと研究者の観点から言う足立准教授。学生新聞メンバーの協力を得て、堀田教授の研究室に忍び込む。

手前にあったかごがそうかもという足立に「こんな目立つところに危険なもの置かないんじゃ?」と言う神崎に「それは無生物の発想だ。生物は違う。やばいものこそ一番管理しやすいところに置くんだ」という足立。研究者ならではのプロの視点がかっこいい。澤田も足立も変わってるけど、運営理事のメンバーなんかよりよっぽど教授がやるべきことをしているな、かっこいいな(澤田はやるべきでないこともやってる感は否めないけど)。

集めた証拠を三芳総長に託し、マスコミとの会合で発表されることに。事前に理事たちに共有した総長に、須田理事は「現実を見てください、どうか」と猛然と反対するが、それを上回る勢いで拒否する総長。

「私は現実を見ています。帝都大学は過ちをおかした。ゆえに、しかるべき責任を取らなければならない。これが本当の現実です」

「確かに競争は熾烈です。しかしだからこそ、このまま我々が生き残っていけるとは私にはどうしても思えないのです」

「なぜなら我々は…腐っているからです」

「お互いに経緯も信頼も枯れ果てたような組織に、熾烈な争いを生き残っていく力などありません」

「もし本当にそれを望むなら、我々は生まれ変わるしかない。どんなに深い傷を負うとしても、真の現実に立ち向かう力。そしてをれを乗り越える力。それを一から培っていかなければならない、たった今から。おそらく、長く厳しい戦いになる。これはその第一歩です」

もう名言のオンパレードすぎて厳選できないが、「なぜなら我々は…腐っているからです」に特にしびれた。神崎に孔子の言葉「必ずや名を正す」の解釈、いつか聞かせてもらったみのりの録音が一番しっくりきたという話を出して語った「問題には正しい名をつけなければそれを克服することができない。蚊の流出が真実なら、どんなにつらくてもそれを証拠不十分と言い換えてはならないんだよ」ということ。その言葉通り、まずはっきりと現状の問題を言葉にしたことが素晴らしい。

三芳総長は、この作品の裏主人公と言っていいかもしれない。作中で一番変わったのは彼かもしれない。ただ180度変わったというよりは、本来自分がすべきこと・大事にしたかったことに気づき、自分を取り戻したと言えるかもしれない。目が覚めてからの彼は本当に素晴らしかった。特に考古学や今回の孔子など、自分の原点とも言える学びに立ち返って考えているところが本人ならではでいい。自分も損得ではなく、大事にしたいものを大事にして生きたいとあらためて思った。

主人公である神崎もまた、大きく変わった。今回のようにちょっとうまくいかないとすぐに諦めて逃げてしまうが、それでも事なかれ主義で自分だけが可愛かった以前とは確実に変わった。
自分以外のこと、全体のことを考えて怒り、喜び、行動できるようになった。あれだけ大事にしてた好感度を捨て、もっと大事なもの(愛?)があるとわかるようになった。かなり大きな一歩だなぁ。黄色だったタイトルが最終話だけピンクになっていたところもいい。

神崎がダメダメすぎて上から目線で見てしまいがちだが、神崎のように見ないふりをしちゃったり、本当はこのままじゃ良くないと思いつつスルーしてしまうことって誰しもあると思う。小さな一歩でもこのドラマをきっかけに、それぞれ何か行動につなげられたらいい。

今のこの国や社会へのメッセージもあるのだろうなと想像できる作品だった。観る前は小難しい感じのお話かなと思っていたけど、すごく観やすい社会や自分の問題について考えさせられる物語だったように思う。素晴らしい作品に出会えたことに感謝したい。

そうそう、最後の最後にナレーションを担当した伊武雅刀さんが出てきたのもよかった!


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(C)NHK

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