<日本沈没ー希望のひとー >最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第9話ストーリー&レビュー
第9話のストーリー
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東山総理(仲村トオル)を狙ったテロのニュースは、全世界に大きな衝撃を与えた。
国内の情勢が不安定と判断されて移民計画に影響することを恐れた日本政府は、早急に里城副総理(石橋蓮司)を総理代行にして世界へアピール。
しかし、移民計画が進行していた矢先に、さらに予期していなかった悲劇が起こってしまう…。
天海(小栗旬)、常盤(松山ケンイチ)ら未来推進会議が中心となって事態の打開に挑むが、状況は改善しない。そして、遂に全世界で日本人移民の受け入れ停止が発表される。
そんな中、追いうちをかけるように田所博士(香川照之)から、「日本沈没までもう時間がない」と警告される。それでも最後の一人を救うまで、天海は関東に残って立ち向かう決意をする。
そして、ついに恐れていた日本沈没が─
天海や常盤は、無事なのか…
日本人にとって希望のひととなれたのか!?
第9話のレビュー
まさか最終回で、新型コロナウイルスが蔓延した現実世界とリンクする状況が描かれるとは思いもしなかった。
「日本沈没ー希望のひとー」第9話。最終回は実に2時間3分という放送の中で、怒涛の展開を見せていった。
まずは、東山総理(仲村トオル)を狙ったテロの発生で世良教授(國村隼)が犠牲に。研究職に復帰し、田所博士(香川照之)との最強タッグが実現するかと思われた矢先の出来事は私たちに大きな衝撃を与えた。しかし、世良の死には、キャスト・スタッフがこの物語を通じて伝えたかったある“願い”が込められていたように思う。
事件前、経済活動を後押しするために都合良く学問を使ったことへの後悔を東山に語った世良は、「自分のように間違えないでほしい」と日本の未来を天海(小栗旬)と常盤(松山ケンイチ)に託してこの世を去ったのだ。
一時はテロ発生のニュースが「日本の情勢が不安定」との印象を世界に与えたが、大怪我をした東山の職務を引き継いだ里城副総理(石橋蓮司)から世界へのメッセージにより移民計画には大きな影響を及ぼさなかった。
生島会長(風間杜夫)が移民担当特命大臣に就任し、国内では1億2千万人の移民先を決定する抽選が始まる。どこの国に、誰と移住するか。一人ひとりの国民が少しでも早く、希望の国に行けるよう心の底から願っていた。
もちろん、中には見知らぬ土地に赴くことへの不安から、たとえ沈没しても日本を離れたくないと願う人たちも。天海の母・佳恵(風吹ジュン)や地元の人たちもそうだった。どうすれば、彼らにも希望を持ってもらえるのか。天海をはじめとした日本未来推進会議は「地域単位での移民申請」を可能にし、ついに移民申請者が1億人を突破。移民枠も続々と獲得し、計画は順調に進んでいると思われた。
しかし、ここにきてルビー感染症の変異株が国内で蔓延。変異株にはこれまでルビー感染症に有効だった常盤医療の薬は効かず、患者が死亡する例が相次いだ。天海の元妻・香織(比嘉愛未)の新たな恋人も犠牲になってしまう。さらに、既に日本人が移民した国でも続々とルビー感染症が発生し、パンデミックを恐れた各国が日本人移民受け入れを停止する事態に。
なんとか閉ざされた世界の門をこじ開けたい……。絶体絶命のピンチでも前を向く天海が田所から聞かされたのは、温暖化によりグリーンランドの永久凍土から溶け出した病原菌がルビー感染症の元になっているかもしれないという見解だった。
そんな中、常盤医療とハタ製薬の薬を複合投与した感染者の容態が劇的に回復。東山は世界環境会議で二社の製造特許放棄を宣言した上で、日本沈没や人を死に至らしめるウイルス蔓延を引き起こした地球温暖化は、世界中が取り組むべき問題であることをアピールした。
「この決断に私たちが至ることができたのは、日本沈没という危機の中で命こそが本当に大切で、本当に尊いものであることに改めて気づかされたからです」
熱がこもった東山の訴えは、私たちがこの2年間で実感したことでもある。日本が誇る大企業や美術品、特許技術を譲渡しても守りたかったもの。それは誰かにとって宝物のような存在である人々の命だ。
本作は全話を通して「守るべきは経済か?人命か?」というテーマを貫いてきたが、それは日本沈没に限ったことではなく、私たちの経済活動が起因となってもたらされた環境問題にも向けられている。
結果として、関東を起点に始まった日本沈没は九州と青森でストップ。それは国土を失う日本人にとって唯一の希望とも思えたが、逆に我々が生きる地球はそんなギリギリの状況にあることを示唆していたのかもしれない。このまま悲鳴を上げる地球の声を無視し続けていたら、いつか「日本の一部が残っただけマシ」と思えてしまう状況が訪れる。田所はどんなに周囲から疎まれようとも日本の危機を訴え続け、その声に天海は真剣に耳を傾けた。それが何よりの希望だ。
「止められるのは今しかないぞ。それができなければ、間違いなく地球は終わる」(田所)
「その未来は僕ら一人ひとりの未来にかかっている」(天海)
二人から地球の未来は私たちに託された。これまで何度も映像化されてきた小松左京の同名小説を大胆にアレンジした令和版「日本沈没」。そのラストには、“ただのエンターテインメントとして消費させるものか”というキャスト・スタッフの覚悟が滲んでいた。
(文:シネマズ編集部)
※この記事は「日本沈没ー希望のひとー 」の各話を1つにまとめたものです。
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