<吉祥寺ルーザーズ>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第12話ストーリー&レビュー
第12話のストーリー
>>>「吉祥寺ルーザーズ」の画像をすべて見るひょんなことから、謎に満ちていた「アボカド」の部屋が開けられ、オーナー万平一平の正体と、負け組が集められた真の理由が明らかに!
ルーザーズに衝撃が走る中、さらなるショッキングな出来事が…。なんとオーナー側の事情で、全員がシェアハウスを出て行かなくてはいけなくなったのだ。
猶予は次回の更新日である約2週間後…突然の退去命令に動揺が広がるが、最後の2週間、これまでの生活を振り返りながら、安彦聡(増田貴久)は元教え子の間宮リコ(岩本蓮加)と、大庭桜(田中みな実)は離婚調停中の夫・町田弘(坂本昌行)と…それぞれが、今まで先送りにしてきた問題に向き合おうと動き出す――。
刻一刻と迫る旅立ちの時……。強制的に4カ月で解散することになった“吉祥寺ルーザーズ”は、本当にこのままバラバラになってしまうのか?
負け組6人の奇妙なシェアハウス生活、ついに最終回!
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第12話のレビュー
ⓒ「吉祥寺ルーザーズ」製作委員会池上(國村隼)こそが、シェアハウスのオーナーとされている万平一平であることが発覚した前回。フィリピンから帰ってきた池上は、桜(田中みな実)をはじめとする面々に詰められる。
彼は、自身の6度の結婚生活を回想していく。どの女性も、きちんと愛していたらしい。心の底から。どうやら、結婚すると相手に愛想を尽かされ、その傷を癒やしてくれるまた別の誰かと恋に落ち、また愛想を尽かされ……ということを繰り返してきたようだ。
池上、思っていた以上にダメダメである。翠(濱田マリ)の言う「ダメな男ほどモテる」は的を射ている。放っておけないと思ったとき、この人は好きになっちゃいけないと思ったとき、それはもうすでに手遅れの場合が多い。
そして、かねてから気になっていた部屋の名前がフルーツ縛りだった理由も明らかになった。池上が、かつて愛した女性たちから言われた言葉や思い出を表したものだったらしい。あるときは「用なし」と言われ、またあるときはりんごを投げつけられ……。
ますますダメダメな池上。もはや愛おしくなってきた(これだ、これがダメ男がモテる所以……!)。
ⓒ「吉祥寺ルーザーズ」製作委員会
ちなみに、この家は池上の持ち物ではなかった。オーナーは池上の1人目の妻との間にできた娘・琴音のもの。幼いころに池上から育児放棄されたことを、琴音はまだ許せていない。だが、琴音の旦那(皆川猿時)が間を取り持ち、かろうじて池上との関係は続いていた。その流れの中で、使わなくなった吉祥寺の家に住んでもいい、と言われたという。
しかし、提示された家賃は15万円。とても池上1人では支払えないということで、ルーザーズが集められた。困っている人を集めたのは、池上が自分に自信を持つためだった。
聡(増田貴久)だけがここに住み続けたいと主張するが、すでにこの家に琴音たちが戻って来ることが決まっているという。まさか、自分たちで選ぶ余地もないままに、こんな風に解散が決まるとは思っていなかった。
それぞれが、シェアハウスから旅立つために必要な用意を進める。
聡は久しぶりに「ハロー、ママ」と連絡し(久しぶりでかわいい爆弾を避けられなかった)、しばらくの間実家に帰ることを伝えた。
ⓒ「吉祥寺ルーザーズ」製作委員会
そして、リコ(岩本蓮加)を呼び出し、怪我をさせてしまったときの話をする。あのとき、聡がリコを階段から突き飛ばしたと誤解されたまま、聡は否定しなかった。「先生が沈黙しているのは私のためですか」と問われ、それが「君を傷つけない方法だと思っていた」と聡。
リコの言うように、聡は優しすぎた。同時に、自分ともリコとも、向き合うことから逃げていた。人を傷つけたくないし、自分も傷つきたくなかったのだろう。優しさが、聡を臆病にしていた。でも、今の聡は違う。優しさの上に強さを纏いリコと握手を交わすその姿は、ぐっとたくましく見えた。
ⓒ「吉祥寺ルーザーズ」製作委員会
桜は夫の町田(坂本昌行)と会い、離婚届を渡す。「ずっと怒っている君を見ているのが辛かった」「あなたのそういうところが嫌だった」と、この期に及んで、いや、これが最後とわかっているからこそ、本音をぶつけ合えているのが切ない。なんだかまだ、根底に互いを好きな気持ちが残っているように感じたから。シェアハウスでの生活を経た桜なら、あるいはもう少し上手にやれるんじゃないか……でも、それはきっと違うのだろう。完璧主義の中に、ダメな自分と他人を認める思いやりを手に入れた桜の、新しい人生を応援したい。
ⓒ「吉祥寺ルーザーズ」製作委員会
いよいよ退去を明日に控えた日。桜は池上に、「まだ自分を許せていないのはあなただけなのでは?」と声を掛ける。たしかに、池上だけ事態の進展がみられない。だが、その後の彼のセリフは胸に刺さるものだった。
「ダメな人って人のダメなところも許せる優しい人」「皆さん本当に優しい」
「皆さんが負け続けてきたルーザーだから、人間は強くないって知ってる」
「ダメでも全然いい」「これだけは信じてください。私は皆さんと出会えて幸せでした」
最初は自分に自信をつけることを目的に、ルーザーズを集めたかもしれない。だけど、最終的にはその優しさに池上もまた癒やされたのだった。
かくしてルーザーズのリーダーになった池上を筆頭に、最後の晩餐として鍋パーティーが開かれる。舞はキャバ嬢に復帰し、池上は琴音たちと暮らすことに。驚いたことに、いつの間にやら翠と幡多(片桐仁)は付き合い始めており同棲をするらしい。桜はライターとしての活動を続け、聡は教師に復帰することが決まった。それぞれの門出。たったの4か月で、とんでもない進歩だ。
鍋に追加したフィリピンの謎の缶詰で全員がいい気分に。朝起きて、リビングで酔いつぶれている面々を目にした聡が、どうしてこんなことになったんだ……と呟き、「立ち上がれ~♪」と、オープニング曲「LOSER」を歌いながら物語は幕を閉じた。なんときれいな回収だろう。楽曲とドラマの世界観が合っているからこその演出。歌詞の内容がすんなり染みわたって、勇気が湧いてきた。
その「LOSER」の背景では、聡が撮影したらしい昨夜の楽しそうなルーザーたちの動画が流れる。思い出を覗かせてもらっているような気分だった。1話のときを思い返すと、あんなに楽しそうな様子が見られるとは思っていなかった。
負け続けているダメな人ほど人に優しくなれるというのが、今作から一貫して伝わってくるメッセージだった。だが、その陰にはダメな自分を認める強さや、ダメなことを開き直らずに向き合い乗り越えていく誠実さがたしかにあった。負けても、ダメでも、ネガティブになる必要はない。大事なのはその先でどんな行動をするか。へこむときや折れるときがあってもいい、また今度がんばればそれでいい、そんなことを肩を組みながら教えてくれるような、優しいドラマだった。
(文:シネマズ編集部)
※この記事は「吉祥寺ルーザーズ」の各話を1つにまとめたものです。
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ⓒ「吉祥寺ルーザーズ」製作委員会