(C)新見伏製鐵保存会
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映画コラム

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2023年09月22日

『アリスとテレスのまぼろし工場』の「6つ」の考察 いたくてやさしい、岡田麿里監督からのメッセージとは

『アリスとテレスのまぼろし工場』の「6つ」の考察 いたくてやさしい、岡田麿里監督からのメッセージとは

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2023年9月15日よりアニメ映画『アリスとテレスのまぼろし工場』が公開中。まず、本作は『すずめの戸締まり』の新海誠監督がX(旧Twitter)に投稿した言葉が、的確に作品の魅力を語りきっているように思う。

前置き:「確かに知っていた」閉塞感を描く

「情景も言葉も人物も常にぎりぎりに張り詰めていて、世界にはよそよそしい謎ばかりがある。あの冬の町の閉塞感を、自分も確かに知っていたような気がするのです」

この言葉通り、本作のもっとも重要なキーワードは「閉塞感」と断言して差し支えない。キャラクターそれぞれの危うい心や関係性がいつか「壊れる」のではないかというハラハラが展開する恋愛劇でもあるし、「時間が止まった町」のさまざまな謎が明かされていき冷酷なまでの真実へとつながっていくミステリーでもある。

加えて、テレビアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』などの脚本家としても知られる岡田麿里監督らしい、思春期の少年少女の「痛々しさ」「生々しさ」がはっきり打ち出されている。さらに「気持ち悪い」「居心地が悪い」といったネガティブにも思えるワードも頭に浮かぶが、それも意図的なもので褒め言葉にもなるし、後述するメッセージを持つ作品には確かに必要だったのだと思えた。

300館以上の公開規模のアニメ映画としてはあまりにも「攻めた」「賛否両論を呼ぶのもいとわないような」特徴があるとも言えるのだが、新海誠監督が「自分も確かに知っているような気がする」と答えている通り、描かれている感情や心理そのものは普遍的なものだ。特に「思春期をこじらせていた経験」「どこにもいけない閉塞感」に思い当たる人であれば、存分に「ささる」内容になっていると思う。

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「ささった」筆者個人にとっては2023年の映画のベスト候補。もしもささらなくても、『チェンソーマン』や『呪術廻戦』などの制作会社MAPPAによる美麗な風景と躍動感のあるアニメ表現は間違いなく観る価値がある。しかも、榎木淳弥や上田麗奈や久野美咲などの声優の演技も圧巻で、映画『ちはやふる』の横山克による流麗な音楽との相乗効果も抜群。しっかりとしたエンターテインメント性もあるので、実は「観る人を選ぶ」と同時に「広く開かれている」映画でもあると思う。何より、作品の濃密な魅力を真に体感できる映画館でこそ、見届けてほしいと願うばかりだ。

ここからは、ネタバレありで作品の謎や、そもそも「何を描こうとしていたのか」について解説していこう。観る人によって多様な解釈ができる、考察の幅が広いことも、本作の大きな魅力であることは間違いない。

※以下、『アリスとテレスのまぼろし工場』のラストを含むネタバレを記しています。観賞後にお読みいただくことをオススメします。また小説版、劇場パンフレット、岡田麿里監督の自伝本『学校へ行けなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまで』の内容の一部にも触れています。

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