映画コラム
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』もっと面白くなる「5つ」のポイント解説(※後半ネタバレ全開!)
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『シン・エヴァンゲリオン劇場版』もっと面白くなる「5つ」のポイント解説(※後半ネタバレ全開!)
3:(ネタバレ)コミュニケーションを農作業で描いた衝撃と感動
※以下からは『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の本編の結末を含むネタバレをしています。まだ鑑賞していない方はネタバレのない1ページ目をご覧ください。※この記事における解釈は、筆者個人の主観を元に構成しております。参考としつつ、観た方がそれぞれの解釈を見つけていただけたら幸いです。
『エヴァンゲリオン』は一貫して、シンジという思春期の少年のコミュニケーションの物語でした。そして、今回はコミュニケーションを農作業で描いたというのが衝撃的で、かつ感動的だったのです。
何より、トウジとケンスケが生きていた…!しかもトウジは委員長と結婚して子どももできていた…!というのも嬉しかったんですが、あまりにトウジとケンスケが優しくてそれだけでも泣きそうになったんですよ…!
トウジはテレビアニメ版だと、エヴァの攻撃に巻き込まれた妹(今は大人になっていた鈴原サクラ)がケガをしたことを怒って殴っていたりして、シンジとはたびたび衝突していたんですよね。でも今回は「医者のマネ事」と言いつつもコミュニティの人々を気遣い助けていて、もうシンジといがみあうこともありませんでした。
ケンスケは相変わらず「付かず離れず」な距離感ながら本当に良いやつで、テレビアニメ版で描かれていたサバイバルオタクの知識も生かして立派にやっていた……。
この2人が、精神的な意味でも大人になっていたということに、感無量でした。
そして、クローンであるアヤナミレイ(仮称)が農作業を手伝い、「おやすみ」「さようなら」などコミュニケーションの手段を1つずつ知っていきます。
そんなアヤナミレイが、罪の意識が強すぎるため廃人のようになっていたシンジに、委員長から教えてもらった「仲良くなるおまじない」こと握手をするって……それはもう泣きますよ!
テレビアニメ版の最終回は、シンジが「僕はここにいていいんだ」と確信し、そしてみんなから「おめでとう」と言われるというもの。
このシンジの心情だけが説明された最終回はポカーンとなった人がほとんですが、今回はそれに至るまでのシンジの変化を別の形で描いたとも言えるんですよね。
さらに、この天変地異が起こった世界でもなんとか生きている人々の姿は、現実のコロナ禍でこそ響きます。
ケンスケは世界が滅びかけたニア・サードインパクトを「ニアサー」と略し、「ニアサーも悪いことばかりじゃない」と言っていました。これも、現実で新型コロナウイルスをコロナと略していること、そしてコロナに人類が大いに苦しめられるも、そこからたくさんの学びを得て成長をしてきたことを彷彿とさせます。
しかも、テレビアニメ版および新劇場版『破』で加持リョウジがスイカを作っていたのは、この農作業の伏線でもあったのでしょう。
前述した安野モヨコ作画のマンガ『大きなカブ」も農作業=アニメ製作現場を描いているので、これも伏線ですね。
とにかく、今までの『エヴァンゲリオン』では到底あり得なかった、想像もし得なかった狭いコミュニティでの農作業ということが、実は『エヴァンゲリオン』という作品の根幹を成す、コミュニケーションというテーマに見事に合致していたということです。
農作業は、食べ物を得る根源的な手段、言い換えれば「生きるため」に必要なこと。
そして、他者と助け合う、コミュケーションそのものの行為でもあるのですから。
その農作業を、シンジとアスカは結局は手伝っていないというのも、実はそれで良いんだと思います。彼らはそれ以外にも「(エヴァに乗って世界を救うという)やれることがある」のですから。
特に、シンジは父であるゲンドウはもちろん、レイとアスカとカヲルとミサトとのコミュニケーションの決着を完全につけなければいけないのですから。
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