<ラジエーションハウスⅡ~放射線科の診断レポート~>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第4話ストーリー&レビュー
第4話のストーリー
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唯織(窪田正孝)たちが働く、甘春総合病院のラジエーションハウスに、たまき(山口紗弥加)の母・るり子(中田喜子)が突然訪ねてくる。るり子は、いまだ独身のたまきを心配し、親同伴の見合いをセッティングしてくれるという結婚相談所のパンフレットを無理矢理たまきに手渡す。「誰とも結婚する気がない」と反発するたまきに、「いま結婚しないと、一生独身で孤独死まっしぐらだ!」と言い放つるり子。実は前夜、自宅マンションでぎっくり腰を起こし、他に頼る人がいなかったため、小野寺(遠藤憲一)に助けを求めたばかりのたまきだったが、唯織だけでなく、辻村(鈴木伸之)らにもたまきとの結婚を持ちかけるるり子にイライラを募らせる。
そんな中、堀田成美(臼田あさ美)が夫の誠司(忍成修吾)に付き添われて救急搬送されてくる。弁護士の夫を持ち、ふたりの子宝に恵まれた成美は、パティシエの仕事を辞め、いまは育児に専念しているという。絵に描いたような幸せを手にしている美男美女夫婦をうらやましがる軒下(浜野謙太)や田中(八嶋智人)たち。
腹痛を訴えていた成美のレントゲン写真を見た杏(本田翼)は、便秘だと判断。成美は人より腸が長いこともあり、便秘になりやすいのだという。それを聞いた唯織は、便秘の原因のひとつに大腸がんがあり、成美が40歳であることも考慮し、「一度きちんと大腸の検査をした方がいいのではないか」と杏に進言する。それを受け、杏は成美に検査を勧めるが……。
第4話のレビュー
今回第4話は、山口紗弥加演じる黒羽たまきのフィーチャー回!35年ローンを組んで独身の城(マンション)を築き上げた彼女。一人暮らしを謳歌しているたまきだが、室内で人生初のぎっくり腰をやってしまった。助けを求められる男性が小野寺技師長(遠藤憲一)しかいない現実に、絶望するたまき……。
40歳で独身の娘を心配した、たまきの母・るり子(中田喜子)がタイミング良く登場。親同伴でマッチング相手を探してくれる結婚相談所の案内とともにやってきた。
「40で独身なんて、この先、孤独死まっしぐらよ!」
「女の幸せは、結婚してあたたかい家庭を持つことです」
なんとか娘の結婚相手を見つけたい母・るり子。当のたまきは「独身上等!」とばかりに母の話を聞き入れない。
「結婚なんて、孤独に耐えられない人間の逃げ道でしょ?」と、たまき節が炸裂する(筆者も32歳で独身生活を謳歌している身のため、この切れ味の良いセリフにはなかなか感じるものがあった……)。
たまきとるり子を含めたラジエーションハウスチームの面々で、交流も兼ねて居酒屋で食事をすることに。その場でも母は「誰か、たまきと結婚してくれないかしら?」と娘の結婚相手探しに余念がなかった。
「親不孝なのはわかってるの、でもしょうがないでしょ、こんな生き方しかできないんだから」と、たまき自身も複雑な思いを抱えているようだ。場の空気が静まりかけた、その時……なんと、母・るり子が突然倒れてしまう。
少し前から肩から腕にかけて痛みや痺れを感じていたという、るり子。脳梗塞も考えられるため、甘春病院で念入りに検査を行ったが、大事には至らなかった。長年、家業であるミカン畑の作業を行ってきたことで、身体に負担がかかりすぎていたようだ。
るり子は、たまきに言う。「私は、たまきの花嫁姿を見たいわけでも、孫の顔を見たいわけでもない。最近、体が思うように動かなくなってきて、急に心配になったの。もし、たまきがこんなふうになったら、いったい誰があなたを支えるんだろう、って」。
たまきの父、るり子の夫は、3年前に亡くなっていた。
「独りで生きるって、暇よ」。るり子の言葉は、実感を伴って、たまきの胸に届く。
しかし、決して、たまきは”独り”ではないはず。ラジエーションハウスチームの面々がいて、彼女の力を必要とする場がある。小野寺技師長の言うように、「そういう場所がひとつでもあれば十分」ではないかと、筆者も思う。
たまきが結婚のことで悩み、揺れていたその時、腸の異変を検査するために堀田夫妻(臼田あさみ・忍成修吾)が来院した。
妻・堀田成美の腸の異変にも大事はなく、ただの便秘だと判明(病院でそれがわかるなんて、それはそれで恥ずかしい気もする……)。しかし、またもや五十嵐(窪田正孝)の進言により、大腸がんの可能性も考えられるため追加検査をすることになる。
大腸がんの検査は、患者の身体に多くの負担を強いるものだ。2リットルもの下剤を服用して腸内にある便をすべて出し切ること、検査に丸一日の時間を要すること、お尻から内視鏡を入れなければならないこと……。
成美は毎日、子どもふたりの育児に時間を割かなければならない。あるかどうかもわからない病気を見つけるための検査に、多くの時間はかけられないだろう。それに、医師にお尻を見られるのも抵抗がある……。彼女は、ギリギリまで検査を渋っていた。
しかし、たまきの説得により、検査を受けることを決める。
「私たちが検査で見るのは、堀田さんの腸です。それ以外の何物でもありません」
作中でも触れられていたが、やたらと検査や入院をすすめて治療費を稼ぐ病院の存在については、私たち視聴者も想像したことがあるだろう。堀田の夫もその可能性を恐れていたが、五十嵐たちラジエーションハウスチームは自信を持って主張する。
検査は、病気を見つけるためだけにあるものじゃない。検査をすることで病気がないとわかったら、自分も周りの人々も安心できる。「もしかしたら病気かもしれない」という根源的な不安を取り除くためにも、検査は存在するのだ、と。
視聴者である私たちにとっても他人事ではないだろう。負担がかかる検査だからといって、先延ばしにしていたら命に関わる事態になるかもしれない。
成美の場合は、身体への負担が少ない「CTコロノグラフィ」という検査(腸の3D画像を撮るもの)がされることになったが、負担の軽重は関係なく、なるべく検査は定期的に受けておきたいものだ。
検査の結果、大腸がんである可能性も一切なく、綺麗な腸であることがわかって安心した成美。たまきに対し「自分の好きな仕事をバリバリやっている、あなたみたいになりたかった」と吐露する彼女だったが、たまき自身も、結婚して家庭を築いている成美を羨ましく思っていたのだ。
「お互いに、ないものねだりなのかもしれませんね」
そう言って笑い合うふたり。作中で五十嵐も口にしていたが、結婚したからといって100%安心できるとは限らない。パートナーとの不和、生活習慣の違いから起こるすれ違いなど、結婚をしたらしたで心配事は尽きないはず。
結局、人生はないものねだり。40歳で独身でも、自分のやりたい仕事をして、仲間や患者にも必要とされている娘の姿を見て、母・るり子もようやく安心できたようだ。
結婚するか、しないか。これは、いわば「生き方の選択肢」でしかない。
選択次第で人の幸せ云々が左右されてしまうなんて、なんとも簡単な世界じゃないか。私たちが生きているのは、もう少し複雑で、だからこそ”面白い”世界のはず。
ラジエーションハウスチームが見せてくれる面白い世界を、次回も楽しみにしたい。
※この記事は「ラジエーションハウスⅡ~放射線科の診断レポート~」の各話を1つにまとめたものです。
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