<スナック キズツキ>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
第3話ストーリー&レビュー
第3話のストーリー
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今回スナック キズツキを訪れる傷ついた客はサラリーマンの佐藤悟志(塚地武雅)。会社では後輩(小関裕太)の態度が気になるが口に出せず、自宅では母親(丘みつ子)との地味な二人暮らし…。スナック店主のトウコ(原田知世)が佐藤に勧めるのは、なんとエアギター!『人生の成功ってなんだ!?』今までためこんでいた不満をシャウトする。
第3話のレビュー
いつもなら見逃してしまうのに、何だかまっすぐ家に帰りたくない時にふらっと立ち寄りたくなるのが、お酒のないスナック キズツキ。
今夜のお客様は、前話登場の安達さん(平岩紙)が乗ったバスの隣席で大股を開いて座っていた佐藤悟志。通称、サトちゃん(塚地武雅)だ。
たまに電車やバスなど、公共交通機関に乗っていると思う。佐藤さんのように大股開きで席を独占していたり、電車のドア脇を何が何でも死守していたり、満員電車に平気でリュックサックを背負ったまま乗り込んだり……。マナーを守らない人たちは普段どんな顔をしているんだろう?と。
きっと家でも会社でも、我が物顔で威張っているに違いない。いや、意外と普段はペコペコしていて、一人の時は気を張らずリラックスムードに浸っているのかもと妄想が広がる。
サトちゃんはどちらかといえば、後者だ。広告代理店で営業を務めるサトちゃんさん。後輩はどんどん昇進して、自分の上司になっていく。会社の花形である企画部の社員には、モヤっとするような態度を取られる。
お酒が呑めないから飲み会にも誘われず、母と二人暮らしの家に帰るだけ。仕事で溜めたストレスを発散しようにもできない。塚地武雅が演じているだけで哀愁が漂っているのに、ひっそりと息を潜めるように日々を送るサトちゃんの姿はとにかく切ない。
もしかしたら、電車でちょっとイラっとするあの人たちもサトちゃんと同じような痛みを抱えているのかなと思ったら、今後見る目が変わりそうだ。
でも、サトちゃんは決してつまらない人間なんかじゃない。甥っ子が大学を合格したお祝いに文句も言わず5万をパッと払ったり、母親に代わってわざわざコンビニまでご祝儀袋を買いに出かけたり、何気ない言動一つひとつに優しさが溢れている。
出かけたついでに立ち寄ったスナック キズツキでは、実は“乗り鉄”という会社の人も家族でさえも知らないであろう一面が浮かび上がる。とっても味わい深いキャラクターなのに、誰もその魅力に気づいてないなんて勿体無い。
トウコ(原田知世)はそんなサトちゃんと、丁寧に豆から挽いたコーヒーを飲みながらフィンランドへ“エア旅行”に出かける。ストリートビューを使って、首都ヘルシンキの中央駅からスタートし、カフェや港へ。コロナウイルスの影響でまだまだ海外旅行は難しい状況だが、たまにはこういうシミュレーションゲームのような旅行も悪くない。
オルゴールのBGMに合わせて、砂時計が落ちるようにゆったりと流れるトウコとサトちゃんだけの時間。だけど、そんな雰囲気を良い意味で(?)ぶち壊すかのように毎度お馴染みの演奏タイムが始まる。
今回の楽器はなんと、世界大会が開かれるほどフィンランドで有名な“エアギター”。スナック キズツキに似つかわしくない激しいミュージックが流れ、「言いたいことがある〜」と、まるでどぶろっくのネタみたいな歌をうたい始めるトウコ。サトちゃんも戸惑いながら意を決して参加し、愚痴をぶちまけていく。
シュールだけど、サトちゃんが歌に乗せた「人生の成功ってなんだ?そのキーワード。それじゃ人生がまるで商売みてえじゃねえか!」という魂の響きが胸に刺さる。
他人の人生を評価する権利なんて、誰にもない。会社での肩書とか、既婚者だとか独身だとか、子どもがいるとかいないとか。サトちゃんをはじめ、私たち人間はつい他人の人生と比べてしまうけど、一体誰に見栄を貼ろうとしているのだろう。
少なくとも、トウコはそんなこと一つも気にしていない。こぐま屋さん(浜野謙太)がバイトリーダーという肩書を失っても、その人自身の魅力は変わらないように。そう、私たちはみんな毎日をさすらいゆく“一匹狼”なのだ。エアギターという楽しみを見つけたサトちゃんに幸あれ。
※この記事は「スナック キズツキ」の各話を1つにまとめたものです。
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